最優テイマーの手抜きライフ。悪役令嬢に転生しても、追放されても、私は辺境の地でこの魔物たちと仲良く暮らします。

西東友一

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 サクラはもう一度、ガイの家の玄関の扉を叩こうか悩んだ。
 
 先ほどノックをするときも緊張して少し躊躇ったが、今度は叩いては行けない気がした。そんなサクラを見て、アウちゃんは背中のあたりに頭を擦り付けてくる。

「一緒に来る?アウちゃん?」

 AUAU

 とても可愛らしい声を出した牝牛のモンスターアウちゃん。

「あっ、もうちょっと・・・っ」

 アウちゃんはサクラの頬を嬉しそうに、そして美味しそうに舐める。サクラは連れて行っていいのかどうか悩みながらも、アウちゃんの愛情表現を受け止めていた。

「アウは行くと決めたようですよ」

 理知的な男の子の声が聞こえたので、ふり返るサクラ。けれど、そこにはだれもいない。

「ここですよ、ミス・サクラ」

 サクラが下を見ると、三銃士のダルタニアンのような貴族騎士の格好をした小麦色のネズミが二本足で立っていた。かっこつけたネズミは羽付き帽子をくいっと人差し指で上げてポーズを決める。サクラはそのネズミの名前を思い出そうと目頭を抑えて考える。

「あっ、ラット・シー(ネズミの妖精)」

「・・・なぜ、種族で呼ぶのですか。ミス・サクラ。アーサーですよ」

 腰に手を当てて、あきれ顔をするアーサー。表情もただのネズミではなく豊かだった。サクラはその姿を見て再び記憶を遡ると、サクラ・ブレンダ・ウィリアムの記憶を遡ると、ネズミの妖精のアーサーのことも思い出した。人間よりも人間らしく、男性よりも紳士的だったことを懐かしみ、サクラはサクラとしてアーサーに声を掛ける。

「失礼いたしました。ミスター」

「いえいえ、お気になさらずに。ボクは気にしませんよ」

 アウちゃんとは対照的に手のひらサイズのアーサー。帽子を胸に抱えて、お辞儀をする姿も、かっこつけているのだけれど、それも小さな男の子が紳士的な振る舞いをしているようで、サクラにはかわいく見えて仕方ない。

「チューーーンッ」

 サクラがアーサーの喉のあたりを撫でてあげると、悶えるような声でアーサーが声をあげる。

「あはははっ」

 サクラはその声を聞いて変なスイッチが入る。もっとアーサーを触り倒して、いろんな声を奏でさせたいし、その着こなしている貴族騎士の服も脱がせてしまいたいと気持ちが湧いてきた。

(やばい・・・尊過ぎる・・・っ)

「ミス・サクラ?サクラさんっ!!えっ、あっちょっと・・・いつものサクラさんらしくないですよ?あははは・・・っ」

 サクラが近づくと、小さいアーサーは男としてビビって逃げ出すようなことはできないと思いつつも、身の危険を感じて苦笑いをしながら、数十歩後ずさりをする。

「えへへへへっ」

「チュ・・・チューーーーーンッ」

 サクラは、この後めちゃくちゃアーサーを可愛がった。
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