料理が下手だから婚約破棄ですか…。じゃあ、慰謝料で美味しい物でも食べに行こうと思ったら…そうなっちゃいますか(笑)

西東友一

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「はぁ…」

 私が睨みっぱなしでいると、カケルが再びため息をついた。

「あのな、そういう意地汚いところが嫌いなんだよ」

(はあああああっ!?)

「俺はラフランチェスカで働く料理人だぞ?そんな端金で…。それに失敗作はちゃんと捨てろって言ってるのに食べてよぉ、舌が馬鹿舌になるわ、太るわ、家畜になっちまうぞっ」

「きゃははははっ」

 大爆笑する女。
 この女はわかっていない。確かにこの男の働くラフランチェスカは一流フレンチ料理屋だ。けれど、カケルはまだまだ駆け出し中の見習い雑用係だ。夢は大きいのはまぁ、素敵なことだが、一流を気取って、家では全く料理も作らないし、言う割にはまだ全然大したことがないのだ。

 私も騙された時期があったけれど、それでも自分が家事をして、舵を切れば、きっとうまく行けると思ってここまできたけれど…。

(これだから、イケメンはっ)

 多分カケルはイケメンでそれなりにある程度のことができたから、人から物を言われることがなかったのだろう。先輩の料理人から八つ当たりされたとか私に話をしてくれた時に、アドバイスじゃない?と伝えても嫌な顔をするだけだった。

 そんなカケルがそれでもなんとかその場所に入れるのは、一人とても優秀で優しい先輩がいたからだ。名前は忘れてしまったけれど、カケルよりも大人っぽくて優しいオーラがある人だった。駄犬も優秀な人を嗅ぎつける嗅覚だけはあるようで、その人の言うことはよく聞いたらしく、その人が教えた部分はラフランチェスカでも後れを取っていないらしい。

 うん、その人もイケメンだった気がするし、私にもよくしてくれた。私はカケルと付き合ったばかりの時期だったから、この目の前のバカのように浮気心は全くなかったので、忘れてしまったけれど、その人がいる時にはカケルはデートでフランチェスカによく連れて行ってくれた。ただ、独立したらしく、その人が居なくなったら、連れて行ってくれることもなくなってしまったし、カケルはダメダメに磨きがかかっている様子なのだけれど…。

「その点、レイカの方がわかっているな…どうだ、俺と結婚してみるか?」

(はっ?)

「えー、ほんとー、するするっ!!」

 ぴょんぴょん跳ねるレイカ。

(いやいやいや、目の前に婚約者が居て、そして、プロポーズ…?おいおい、そんなの一夫多妻制の国でもびっくりよ)

「おっ、マジか。やったね。レイカは優しそうだし、嬉しいぜ」

「うん、優しいよーっ、料理も得意だよーーーっ」

「おっ、何が得意だ」

「目玉焼きぃーーっ」

「そうか、そうかすごいすごい」

 レイカの頭を撫でるカケル。
 先に婚約していたはずの私がなぜだか、蚊帳の外だった。










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