料理が下手だから婚約破棄ですか…。じゃあ、慰謝料で美味しい物でも食べに行こうと思ったら…そうなっちゃいますか(笑)

西東友一

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「うおーーーーーっ」

 婚約破棄されて初めての日曜日。
 あの日から曇り空ばかり続いて、久しぶりに「日」曜日に相応しいぐらい日輪は眩しく輝いていた。
 私はついに大台に乗った預金額を見て、興奮する。

 カケルには意地汚いまで言われたけれど、これと言った趣味もなくコツコツ働いてきた私。たまーに、カケルとであったようなラフランチェスカみたいな料理屋さんでご飯を食べるけれども、普段のランチも自分で作ったり節約してきたのだ。当然、預金額はうなぎ登りだ。

「うーん、出会ったのがカケルで良かったのかも…。これが、ガチのホストに出会ってたら私、超貢いでいたかも」

 カケルのことは好きだったし、ダメ男だったから貢ぎたい気持ちも母性本能なのか、出そうになることも多々あったけれど、カケルがいつか自分の店を持ちたいなんて話も聞いていたから、心を鬼にして、お財布の紐を閉めた。もちろん、私のお財布事情をカケルが知っていたら、もっと甘えてきたかもしれないが、そんなお金目当ての男なんてごめんだ。

「よしっ、久しぶりに、美味しい料理屋さんでも行きますか」

 私は美味しそうなお店をネットで調べる。
 もちろん、ラフランチェスカは除外だ。
 ラフランチェスカの料理はとても美味しいし、私好みの味で、幸せの時間を提供してくれるけれど、最悪の調味料があの店には置かれている。高いお金を払って嫌な気持ちになりに行くほど私はMじゃない。

「でも、フランス料理が食べたいな~」

 ラフランチェスカのことが頭にちらっとよぎったせいか、和食や焼き肉などにそそられなくなり、フランス料理が美味しそうに見えてきた。

「どこかないかな…」

 近くのフランス料理屋さんに絞って検索を開始する。それぞれの店が美味しそうな料理の一枚写真を掲載していて、どれも美味しそうで悩む。いつもなら値段や距離なども考慮して検索を絞るのだけれど、今日に限っては青天井。どれだけ美味しそうか、今の気分に相応しいかだ。

「あっ…」

『アムール・ド・リス』

 どれも甲乙つけがたい料理を並べている中でも、ひときわ目立つ料理。
 ラフランチェスカを中心にたまにフランス料理を食べに行くくらいの私でもわかるくらい、写真の料理の美しさは別格だった。

「でも…うーんどうだろう」

 気にはなったので、そのお店の詳細をチェックする。
 美味しそうだけれども、味が想像しずらい。
 見た目重視で、味がいまいちだったら、それはそれでがっかりだ。フランス料理を食べるにあたって、目から食すると言っても、お花や絵画を見に行くわけではない。食べに行くのだ。

「えっ、すごーい」

 自分の間の抜けた声にびっくりして、思わず笑ってしまう。
 間違いない。
 これは美味しいに違いない。

 写真を見るだけで、口の中がよだれでいっぱいになってしまう。
 どれも私が好きそうな料理ばかり並んでいる。

「おっと、これは決まりね…」

 私は決定打を見つけた。

 それは、そこの店長がラ・フランチェスカから独立したカケルの先輩、ミナトさんのお店だった。

「てか、ラフランチャスカじゃなくて、ラ・フランチェスカなんだ。はずっ」



 
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