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本編 婚約破棄編(仮)
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プチンッ
血管が消れた音が私やアーサーに聞こえた。
「もう一度言ってくれるかな? アーサー」
優しい声を作ろうとしているお父様。けれど、声は怒りで震え、机に肘をついて指を組んだ腕も震えているし、こめかみの血管が浮き出て、顔も赤い。こんなに怖いお父様は初めてだ。
「うっ・・・」
「どうしたんだね、アーサー」
お父様は立ち上がり、後ろに手を組み、ゆっくり、ゆっくりと、大きな歩幅でアーサーに近づき、両肩を掴む。
ガタガタガタ
強気で、勇猛なアーサーがこんなに恐れているのを初めて見た。
「おっ、お父様」
「ん? なんだい? 愛しの、この世で一番美しく気高い女性のミシェルよ」
私の方に首が良く回らない人形のようにギギギィという感じで見るお父様。私が傷ついたと思っているからこそ、そんな言い方をするのだろう。「おうっ、はよ、言うてみよ」、「おおん? どうしたどうした?」みたいな感じで、アーサーを再び笑顔で圧をかけるお父様。アーサーが助けてくれと言った目で私をちらちら見てくる。お父様がこんな風に怒るのは、アーサー自身も腹が立っていて、お父様に煽る様な報告をしたせいもあるだろう。ここはどうやら、私が話さなければならないようだ。
「お父様、まず落ち着きましょう。紅茶を入れますから、アーサーの腕を放して、お座りください」
「んんっ?」
私の言うことは基本的なんでも聞いてくださるお父様が、今日は言うことを聞いてくれない。
「聞いてくださらないと、妾として出ていってしまいますよ?」
「めかけええええええええっ」
お父様は頭を抱え、描きむしり、しゃがみ込む。私もショックだが、お父様の方がショックが大きすぎるようだ。私はお父様の背中を擦り、「大丈夫、大丈夫」と言いながら、椅子へと案内する。私が紅茶を入れに入り口の方へと向かうと、アーサーは両腕の掴まれた場所を擦っていて、アーサーの横を通り過ぎようとすると、
「おっ、俺も行くぜ」
「え、別にいいわよ」
と答えると、アーサーが小声で、
「頼む、行かせてくれっ、じゃないと死んじまうっ!!」
と必死な顔で私に訴えてきた。
「コオオオオオオオオオオッ」
後ろをちらっと見ると、目を光らせて邪悪なオーラをまとったお父様が先ほどと同じ、机に肘を置き、指を組んだ状態でモンスターのようになっていた。
「じゃあ、お願い」
と言うと、アーサーは嬉しそうな顔をしながら、私を急かして歩かせた。
「ふいーーーーっ。怖かった」
扉を出ると、アーサーが安堵の声を漏らす。
「ふふっ」
私は思わず、笑ってしまった。
「なに、笑って・・・」
「えっ?」
文句を言おうとしていたアーサーが言葉に詰まったので、彼の顔を見ると、アーサーが申し訳なさそうな顔をしている。
「泣いてるぜ、姫さん」
そう言って、ハンカチを渡してきたアーサー。
私が頬を触って、触った手を見て見ると濡れていた。
私は不安だったのだ。
愛するお父様が、領主の娘として妾になれと謝りながらお願いして来たらどうしよう、と。
でも、不要な考えだった。
私はお父様の愛情を十分に感じて、そして・・・・・・お父様のために自分が取るべきことに覚悟を決めた。
血管が消れた音が私やアーサーに聞こえた。
「もう一度言ってくれるかな? アーサー」
優しい声を作ろうとしているお父様。けれど、声は怒りで震え、机に肘をついて指を組んだ腕も震えているし、こめかみの血管が浮き出て、顔も赤い。こんなに怖いお父様は初めてだ。
「うっ・・・」
「どうしたんだね、アーサー」
お父様は立ち上がり、後ろに手を組み、ゆっくり、ゆっくりと、大きな歩幅でアーサーに近づき、両肩を掴む。
ガタガタガタ
強気で、勇猛なアーサーがこんなに恐れているのを初めて見た。
「おっ、お父様」
「ん? なんだい? 愛しの、この世で一番美しく気高い女性のミシェルよ」
私の方に首が良く回らない人形のようにギギギィという感じで見るお父様。私が傷ついたと思っているからこそ、そんな言い方をするのだろう。「おうっ、はよ、言うてみよ」、「おおん? どうしたどうした?」みたいな感じで、アーサーを再び笑顔で圧をかけるお父様。アーサーが助けてくれと言った目で私をちらちら見てくる。お父様がこんな風に怒るのは、アーサー自身も腹が立っていて、お父様に煽る様な報告をしたせいもあるだろう。ここはどうやら、私が話さなければならないようだ。
「お父様、まず落ち着きましょう。紅茶を入れますから、アーサーの腕を放して、お座りください」
「んんっ?」
私の言うことは基本的なんでも聞いてくださるお父様が、今日は言うことを聞いてくれない。
「聞いてくださらないと、妾として出ていってしまいますよ?」
「めかけええええええええっ」
お父様は頭を抱え、描きむしり、しゃがみ込む。私もショックだが、お父様の方がショックが大きすぎるようだ。私はお父様の背中を擦り、「大丈夫、大丈夫」と言いながら、椅子へと案内する。私が紅茶を入れに入り口の方へと向かうと、アーサーは両腕の掴まれた場所を擦っていて、アーサーの横を通り過ぎようとすると、
「おっ、俺も行くぜ」
「え、別にいいわよ」
と答えると、アーサーが小声で、
「頼む、行かせてくれっ、じゃないと死んじまうっ!!」
と必死な顔で私に訴えてきた。
「コオオオオオオオオオオッ」
後ろをちらっと見ると、目を光らせて邪悪なオーラをまとったお父様が先ほどと同じ、机に肘を置き、指を組んだ状態でモンスターのようになっていた。
「じゃあ、お願い」
と言うと、アーサーは嬉しそうな顔をしながら、私を急かして歩かせた。
「ふいーーーーっ。怖かった」
扉を出ると、アーサーが安堵の声を漏らす。
「ふふっ」
私は思わず、笑ってしまった。
「なに、笑って・・・」
「えっ?」
文句を言おうとしていたアーサーが言葉に詰まったので、彼の顔を見ると、アーサーが申し訳なさそうな顔をしている。
「泣いてるぜ、姫さん」
そう言って、ハンカチを渡してきたアーサー。
私が頬を触って、触った手を見て見ると濡れていた。
私は不安だったのだ。
愛するお父様が、領主の娘として妾になれと謝りながらお願いして来たらどうしよう、と。
でも、不要な考えだった。
私はお父様の愛情を十分に感じて、そして・・・・・・お父様のために自分が取るべきことに覚悟を決めた。
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