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本編 婚約破棄編(仮)
28 ウォーリー伯爵視点
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「もう来たか・・・・・・」
私の元に高級そうな封筒が届いた。従者が持っているのを遠くから見えた瞬間、それがレオナルド王子からのものだとすぐわかった。優柔不断そうだから1か月はかかるだろうとミシェルは言ったけれど、2週間もしないうちに手紙が届いた。中身を見ると、面倒を見るから早く準備をせよ、といった内容だった。
「バカにしおって、青二才が」
私は思わずその手紙を破り捨ててしまいたかったが、そうもいかない。このまま持っていても握り締めてしまいかねないから、私は無造作に机の上にその手紙を投げ捨てた。うちの大事な愛娘を嫁によこせと言うならば、正妻にするのはもちろん、礼を尽くしてこちらの領地に顔を出すべきだ。そして、ミシェルの人生の門出に相応しい宴をこちらの領地で行い、王都でもみなに認められるように格式ある形で、挙式を行ってほしい。それを、いつでも縁を切っていいような形で招き、面倒を見るなんて腹立たしい言い方。うちのミシェルなら必ずや王国の役に立つべき人材なのにレオナルド王子に尽くし、そいつの子を孕み、生み、育てるだけの人生など、ミシェル自身が望んだのであれば、話は別だが、ミシェルは嫌がっている。ミシェルが望まない人生でもあるならば、親の私は絶対にそんな人生にさせたくない。
ミシェルの身を案じているだけでも心が張り裂けそうなのに、レオナルド王子からの予想よりも早い催促。悩み事は増えるばかり。
「そうでもないか、この頃エガスト王国・・・」
「大変ですっ!!」
近況でいいことがなかったか頭の中で整理してくると、従者が血相を変えて私の部屋にやってきた。私は彼を怒ることなく、彼の元へと向かう。
「どうしたっ!?」
噂をすれば影がさすということだろうか、西のエガスト王国が進行してきたと思って気を引き締める。
「ミシェル様が・・・・・・っ」
血の気が引いた。
私はすぐさま神に祈った。私の命でもなんでも捧げるからミシェルが無事でいますように、と。
事実はすでに決まっているのに、もし私がそう願っているのを滑稽だと笑う人がいるならば、その人には自分の命よりも大事な人がいないのだろう。私にとっては、彼の言葉を聞くまでは事実は確定していないのだから、もしかしたら、神様が私を憐れんで、事実を変えてくれるかもしれないじゃないか。もちろん、その時、神が命を望むなら私は命を捧げよう。
私だってわかっている。いや、疑えば神様のご機嫌を損ねてしまう。私は、神様に謝罪し、許して欲しいと願う。そして、やはりミシェルを行かせるべきでなかった、そもそももっとミシェルを可愛がっておけば良かったし、情報規制して自慢の愛娘だけれど、レオナルド王子の耳に彼女の名前が入らないようにして置けばよかった。
そんな風に、まだ悪い事実だと決まっていないのに、私の心は沸騰してしばらくたったお湯のようにふつふつといろんな感情が湧いた。
「ミシェルがどうしたんだっ!!?」
私は彼の両肩を力強く握った。彼はとても、怯えた顔をしていたから、私の顔は鬼のような顔をしていたかもしれない。
「エガスト王国に攫われました・・・っ」
命は無事だと知り、ホッとするが、それも束の間。身体は無事なのか、奴隷のように牢に入れられていないか、辱めを受けていないかなど、新たに知った情報から推測される最悪のケースが頭の中に浮かんできて、私は立ちすくんだ。
私の元に高級そうな封筒が届いた。従者が持っているのを遠くから見えた瞬間、それがレオナルド王子からのものだとすぐわかった。優柔不断そうだから1か月はかかるだろうとミシェルは言ったけれど、2週間もしないうちに手紙が届いた。中身を見ると、面倒を見るから早く準備をせよ、といった内容だった。
「バカにしおって、青二才が」
私は思わずその手紙を破り捨ててしまいたかったが、そうもいかない。このまま持っていても握り締めてしまいかねないから、私は無造作に机の上にその手紙を投げ捨てた。うちの大事な愛娘を嫁によこせと言うならば、正妻にするのはもちろん、礼を尽くしてこちらの領地に顔を出すべきだ。そして、ミシェルの人生の門出に相応しい宴をこちらの領地で行い、王都でもみなに認められるように格式ある形で、挙式を行ってほしい。それを、いつでも縁を切っていいような形で招き、面倒を見るなんて腹立たしい言い方。うちのミシェルなら必ずや王国の役に立つべき人材なのにレオナルド王子に尽くし、そいつの子を孕み、生み、育てるだけの人生など、ミシェル自身が望んだのであれば、話は別だが、ミシェルは嫌がっている。ミシェルが望まない人生でもあるならば、親の私は絶対にそんな人生にさせたくない。
ミシェルの身を案じているだけでも心が張り裂けそうなのに、レオナルド王子からの予想よりも早い催促。悩み事は増えるばかり。
「そうでもないか、この頃エガスト王国・・・」
「大変ですっ!!」
近況でいいことがなかったか頭の中で整理してくると、従者が血相を変えて私の部屋にやってきた。私は彼を怒ることなく、彼の元へと向かう。
「どうしたっ!?」
噂をすれば影がさすということだろうか、西のエガスト王国が進行してきたと思って気を引き締める。
「ミシェル様が・・・・・・っ」
血の気が引いた。
私はすぐさま神に祈った。私の命でもなんでも捧げるからミシェルが無事でいますように、と。
事実はすでに決まっているのに、もし私がそう願っているのを滑稽だと笑う人がいるならば、その人には自分の命よりも大事な人がいないのだろう。私にとっては、彼の言葉を聞くまでは事実は確定していないのだから、もしかしたら、神様が私を憐れんで、事実を変えてくれるかもしれないじゃないか。もちろん、その時、神が命を望むなら私は命を捧げよう。
私だってわかっている。いや、疑えば神様のご機嫌を損ねてしまう。私は、神様に謝罪し、許して欲しいと願う。そして、やはりミシェルを行かせるべきでなかった、そもそももっとミシェルを可愛がっておけば良かったし、情報規制して自慢の愛娘だけれど、レオナルド王子の耳に彼女の名前が入らないようにして置けばよかった。
そんな風に、まだ悪い事実だと決まっていないのに、私の心は沸騰してしばらくたったお湯のようにふつふつといろんな感情が湧いた。
「ミシェルがどうしたんだっ!!?」
私は彼の両肩を力強く握った。彼はとても、怯えた顔をしていたから、私の顔は鬼のような顔をしていたかもしれない。
「エガスト王国に攫われました・・・っ」
命は無事だと知り、ホッとするが、それも束の間。身体は無事なのか、奴隷のように牢に入れられていないか、辱めを受けていないかなど、新たに知った情報から推測される最悪のケースが頭の中に浮かんできて、私は立ちすくんだ。
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