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魔王討伐
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フローレンスの役割は回復師。
仲間の能力向上や回復、魔物の魔の力を弱めるのが回復師の仕事だ。ただその能力は、争いが嫌いな神エリスから授かる力であり、生き物を傷つけたり、殺めてしまうと、力が弱まり、失われてしまうなど、制約も多い。その上、魔法を含めた魔の力が瞬発力と言われるのに対して、魔の弱体化の白魔法は持続力と言われており、マリリーンのような閃きの天才は生まれづらく、日々の祈りなどを要し、回復以外の弱体化は効果が見えづらい。そして、魔法攻撃の一撃の火力を相殺できないので、敵から狙われてしまうと物理でも魔法でもイチコロなので、戦いの時はかなり後ろで待機するのだ。というか、ほとんどの回復師は戦闘の場になど出ず、教会や宿舎などで町の人や旅人の病気や怪我を治すのを生業とし、フローレンスのような冒険者のパーティーに入るのは異例中の異例なのだ。
「早く治せよ」
ギルガルドは冷たくフローレンスに命令をする。
「う、うん。ごめんなさい。ギルガルド」
喜んだ顔をしていたフローレンスはびっくりしながらもその命令に従って回復をギルガルドにかける。
「こっちもよ。早くしなさいよ」
「わかったわ。マリリーン。ちょっと待ってね」
「一番ダメージを受けたのは誰だと思ってるだか・・・」
「そうよね、ガードナー。でも、もう少し待ってね」
せっかく魔王を倒したのに、不穏な空気。けれど、魔物を倒した時の三人の態度はいつも通りで、フローレンスが期待しすぎただけだった。フローレンスは個々に回復をかけるのではなく、全体回復で三人を癒していく。
「なぜ、すぐ出てこないんだ」
ほとんど疲れが取れたギルガルドが聖剣エクスカリバーに刃こぼれがないかどうか確認しながら、必死に回復を試みているフローレンスに興味なさそうに尋ねる。
「まだ。魔王の魔力が消えきっていなかったから・・・・・・」
旅の途中で「道連れ」という呪いを使う魔物がいた。彼らは狂信的な魔王信者で、高い魔力を持ちながら、取得困難なために生涯にその技一つしか覚えられないと言われる「道連れ」を覚える。その効力は自分が死ぬ時誰かを道連れにあの世へ連れて行くと言うもので、発揮する場面が限定的だが、効力は絶大な技だった。多くの冒険者が命を落とした技を魔物の王である魔王であれば類似した技を使うかもしれないと思ったフローレンスは、その魔物たちと対峙した時のように道連れを使えなくなるまで魔王の魔力量を削り、魔王の最後の悪あがきに対してまで注意を払っていたのだ。
魔王が言った「お前さえいなければ」の「お前」とはフローレンスのことだった。
「ふっ、臆病者がっ」
ただ、そのことはフローレンスも知らないし、この段階では魔王しか知らず、そんな魔王も死んだので、この世では誰も知らなかった。そして、勇者ギルガルド、盾と弓の名手ガードナー、天才魔法使いマリリーンはフローレンスを評価していなかった。
「でも、ギルガルド。もしそうだとしたら俺たちやばかったんじゃ・・・」
手を顎に添えて考え込んでいたガードナーが思いついたことを口するので、フローレンスは必死な顔をしてガードナーを見る。
「ひっどーいっ、この女私たちを、見殺しにしようとしたんじゃない?」
マリリーンは腰に手を当てて前屈みになり、悪戯っぽい笑みで冗談っぽくそんな酷いことを言う。フローレンスは回復師。冗談でも人が死ぬなんてことを言うものじゃないと思って必死に首を振る。
「ちっちがう、私はもしもの時はみんなを助けようと待機して・・・・・・」
「私たちが死んだら、あなただけが、世界の救世主・・・・・・聖女なんて世界から持て囃されたでしょうね、フローレンス」
言葉には言霊が宿ると言う。
初めは冗談で言った言葉も、その言葉はあたかも真実であるかのように一人歩きし、言った本人や周りを説得する力を持つ。
三人のフローレンスを見る目は、軽蔑の目から敵意の目に変わっていった。
仲間の能力向上や回復、魔物の魔の力を弱めるのが回復師の仕事だ。ただその能力は、争いが嫌いな神エリスから授かる力であり、生き物を傷つけたり、殺めてしまうと、力が弱まり、失われてしまうなど、制約も多い。その上、魔法を含めた魔の力が瞬発力と言われるのに対して、魔の弱体化の白魔法は持続力と言われており、マリリーンのような閃きの天才は生まれづらく、日々の祈りなどを要し、回復以外の弱体化は効果が見えづらい。そして、魔法攻撃の一撃の火力を相殺できないので、敵から狙われてしまうと物理でも魔法でもイチコロなので、戦いの時はかなり後ろで待機するのだ。というか、ほとんどの回復師は戦闘の場になど出ず、教会や宿舎などで町の人や旅人の病気や怪我を治すのを生業とし、フローレンスのような冒険者のパーティーに入るのは異例中の異例なのだ。
「早く治せよ」
ギルガルドは冷たくフローレンスに命令をする。
「う、うん。ごめんなさい。ギルガルド」
喜んだ顔をしていたフローレンスはびっくりしながらもその命令に従って回復をギルガルドにかける。
「こっちもよ。早くしなさいよ」
「わかったわ。マリリーン。ちょっと待ってね」
「一番ダメージを受けたのは誰だと思ってるだか・・・」
「そうよね、ガードナー。でも、もう少し待ってね」
せっかく魔王を倒したのに、不穏な空気。けれど、魔物を倒した時の三人の態度はいつも通りで、フローレンスが期待しすぎただけだった。フローレンスは個々に回復をかけるのではなく、全体回復で三人を癒していく。
「なぜ、すぐ出てこないんだ」
ほとんど疲れが取れたギルガルドが聖剣エクスカリバーに刃こぼれがないかどうか確認しながら、必死に回復を試みているフローレンスに興味なさそうに尋ねる。
「まだ。魔王の魔力が消えきっていなかったから・・・・・・」
旅の途中で「道連れ」という呪いを使う魔物がいた。彼らは狂信的な魔王信者で、高い魔力を持ちながら、取得困難なために生涯にその技一つしか覚えられないと言われる「道連れ」を覚える。その効力は自分が死ぬ時誰かを道連れにあの世へ連れて行くと言うもので、発揮する場面が限定的だが、効力は絶大な技だった。多くの冒険者が命を落とした技を魔物の王である魔王であれば類似した技を使うかもしれないと思ったフローレンスは、その魔物たちと対峙した時のように道連れを使えなくなるまで魔王の魔力量を削り、魔王の最後の悪あがきに対してまで注意を払っていたのだ。
魔王が言った「お前さえいなければ」の「お前」とはフローレンスのことだった。
「ふっ、臆病者がっ」
ただ、そのことはフローレンスも知らないし、この段階では魔王しか知らず、そんな魔王も死んだので、この世では誰も知らなかった。そして、勇者ギルガルド、盾と弓の名手ガードナー、天才魔法使いマリリーンはフローレンスを評価していなかった。
「でも、ギルガルド。もしそうだとしたら俺たちやばかったんじゃ・・・」
手を顎に添えて考え込んでいたガードナーが思いついたことを口するので、フローレンスは必死な顔をしてガードナーを見る。
「ひっどーいっ、この女私たちを、見殺しにしようとしたんじゃない?」
マリリーンは腰に手を当てて前屈みになり、悪戯っぽい笑みで冗談っぽくそんな酷いことを言う。フローレンスは回復師。冗談でも人が死ぬなんてことを言うものじゃないと思って必死に首を振る。
「ちっちがう、私はもしもの時はみんなを助けようと待機して・・・・・・」
「私たちが死んだら、あなただけが、世界の救世主・・・・・・聖女なんて世界から持て囃されたでしょうね、フローレンス」
言葉には言霊が宿ると言う。
初めは冗談で言った言葉も、その言葉はあたかも真実であるかのように一人歩きし、言った本人や周りを説得する力を持つ。
三人のフローレンスを見る目は、軽蔑の目から敵意の目に変わっていった。
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