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人と話をして、一番大事なのは相手の顔を見ること。
これは騙し合いのゲームだというのは分かっているけれど、私は自分の暮らし方の原点に返った。
国民として、王子を信じられなくなったら終わり、とかそんなロジックも働くけれど、もっとシンプルな感情を自分に尋ねる。一度はカイジンに騙されている私。だから、騙されうるということも意識しながら、尋ねる。
目の前にいる人は、信じていい人? いけない人?
(そっか。やっぱり、私は……正しかったんだ)
私は心の底から嬉しさが溢れてきて、それが顔に出てしまった。ポーカーとしてはお粗末に違いない。でも、その顔を見たウィン王子は驚いた顔をした。それは、私と同じようにポーカーを忘れた素のウィン王子らしい顔に違いない。カッコいい方だったけれど、かわいい顔もするようだ。
「オールインコールです」
「じゃっ、じゃあ、クレアっ、オープンっ!!」
一番ワクワクしているのがディーラーというのも不思議な話だが、カイジンが嬉しそうに進行を始めた。私はゆっくりと、ハートの5のストレートフラッシュを開く。
「こっ、これは珍しいですね。でも、こんなこともある。さっきと同じ、ハートの5のストレートフラッシュ」
そんな余計なことを言わなくてもいいのに、カイジンは私のカードの役を読み上げた。カイジンと私はウィン王子の顔を見る。この様子だと、さすがに一度は私を騙したカイジンだけど、今は私を騙していないように見えるが……果たして。
「………ボクの負けだ」
ウィン王子はそのままそっと5枚のカードを裏側のまま机の上に伏せた。ウィン王子は負けてもなお、まるで勝負が続いているかのように顔色を変えなかった。
(勝っ、勝ってしまった)
「勝者、クレアっ!!」
ポーカーのディラーが叫ぶ姿なんて見たことが無かったし、カイジンの喜びようはツッコミどころ満載だったけれど、私はそれどころじゃなかった。
「良かったぁ…」
体の芯から声が出た。今まで抱えこんで沈殿していった緊張感や怒りや悲しみなどが気体になって私の口から出ていった。
「おめでとう」
私の安堵の声に、目の前にいたウィン王子は祝福してくれた。私は脱力していたけれど、対戦相手であるウィン王子に敬意を払うため、背筋を伸ばして、その言葉をありがたく頂戴した。
「あっ、ありがとうございます」
私はとウィン王子は見つめ合う。
けれど、ウィン王子はそれ以上は何も言ってはくれない。その瞳に奪われていきそうな自分がいて、私は心を保つためにウィン王子に何か質問しようと思った。
「先ほどの言葉は……本気なのでしょうか?」
「どれのことだい?」
私が言いづらそうに尋ねるのだけれど、ウィン王子は私が発言する全てを受け入れるような微笑みだった。
「あの……ウィン王子が命を……」
「あぁ、もちろん」
ウィン王子はきっぱりと答えた。
これは騙し合いのゲームだというのは分かっているけれど、私は自分の暮らし方の原点に返った。
国民として、王子を信じられなくなったら終わり、とかそんなロジックも働くけれど、もっとシンプルな感情を自分に尋ねる。一度はカイジンに騙されている私。だから、騙されうるということも意識しながら、尋ねる。
目の前にいる人は、信じていい人? いけない人?
(そっか。やっぱり、私は……正しかったんだ)
私は心の底から嬉しさが溢れてきて、それが顔に出てしまった。ポーカーとしてはお粗末に違いない。でも、その顔を見たウィン王子は驚いた顔をした。それは、私と同じようにポーカーを忘れた素のウィン王子らしい顔に違いない。カッコいい方だったけれど、かわいい顔もするようだ。
「オールインコールです」
「じゃっ、じゃあ、クレアっ、オープンっ!!」
一番ワクワクしているのがディーラーというのも不思議な話だが、カイジンが嬉しそうに進行を始めた。私はゆっくりと、ハートの5のストレートフラッシュを開く。
「こっ、これは珍しいですね。でも、こんなこともある。さっきと同じ、ハートの5のストレートフラッシュ」
そんな余計なことを言わなくてもいいのに、カイジンは私のカードの役を読み上げた。カイジンと私はウィン王子の顔を見る。この様子だと、さすがに一度は私を騙したカイジンだけど、今は私を騙していないように見えるが……果たして。
「………ボクの負けだ」
ウィン王子はそのままそっと5枚のカードを裏側のまま机の上に伏せた。ウィン王子は負けてもなお、まるで勝負が続いているかのように顔色を変えなかった。
(勝っ、勝ってしまった)
「勝者、クレアっ!!」
ポーカーのディラーが叫ぶ姿なんて見たことが無かったし、カイジンの喜びようはツッコミどころ満載だったけれど、私はそれどころじゃなかった。
「良かったぁ…」
体の芯から声が出た。今まで抱えこんで沈殿していった緊張感や怒りや悲しみなどが気体になって私の口から出ていった。
「おめでとう」
私の安堵の声に、目の前にいたウィン王子は祝福してくれた。私は脱力していたけれど、対戦相手であるウィン王子に敬意を払うため、背筋を伸ばして、その言葉をありがたく頂戴した。
「あっ、ありがとうございます」
私はとウィン王子は見つめ合う。
けれど、ウィン王子はそれ以上は何も言ってはくれない。その瞳に奪われていきそうな自分がいて、私は心を保つためにウィン王子に何か質問しようと思った。
「先ほどの言葉は……本気なのでしょうか?」
「どれのことだい?」
私が言いづらそうに尋ねるのだけれど、ウィン王子は私が発言する全てを受け入れるような微笑みだった。
「あの……ウィン王子が命を……」
「あぁ、もちろん」
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