10 / 14
10
しおりを挟む
富も名声も持っているウィン王子。
満たされているその瞳は全てを受け入れ、全てを見透かしてそうだった。
「私が負けていたら、どうされたんですか?」
私が尋ねると、ウィン王子は少しだけ考えて、
「それは言いたくないかな。ただ、もうボクはキミのモノだ。言えと言うなら言おう」
と意地悪な言い方をしてきた。
「やめてください。私は人をモノ扱いしたくはありません」
私がそれ以上聞けなくなるのを見越していたとすれば、ウィン王子がなぜ言いたくないのか、かなり気になるけれど、ポーカーが上手であろうウィン王子であれば、言わないのも嘘を付いた時のカモフラージュで、本当は大した理由ではないのかもしれない。
私はどうしたらいいのかわからず、ウィン王子は自分から何かをしようと思っていない様子でしばらく沈黙が再び訪れる。こんな時に喋って間を埋めて欲しいカイジンは私から自分のカード配りに酔いしれていた。
(カイジンはウィン王子に何のカードを配ったのだろう?)
私はカイジンが私の味方のふりをして、本当はウィン王子の味方なのでは、と疑った。なぜなら、ポーカーは手札の強さに応じて、支払いが発生するのではなく、どんなに相手が強くても、自分が勝負に乗らなければ、被害は最低限で済む。だから、カイジンからの作戦だって、私がオールインしても、ウィン王子が乗ってこなければほとんど価値がないし、一発勝負ではなく、カイジンが複数回私に強い手札を渡したとしても、私が何度も勝てばウィン王子も怪しむだろう。だから、もしがっつりいかさまをするのであれば、いつ負けて、いつ勝つかのサインでも決めておかなければならない。
だからウィン王子がオールインしたくなったカードというのがいかほどのものなのか気になる。
だって、さらに言えば、カイジンがかなりいい手でオールインして負けており、その人をディーラーに採用して、そのディーラーと次にプレイヤーになる私がこそこそ話をするのを許すなんて正気の沙汰じゃない。
「開けてもいいですか」
私はウィン王子のカードを指さして、彼の顔色を見る。
「それは、マナー違反だ。次の勝負の伏線にもなるしね」
ダウト。
次の勝負、そんなもの命をお互いを賭けた後にあるわけがない。
「ウィン王子……本当は勝っていらしたのでは?」
私は少し強めの言葉でウィン王子に質問した。
「なに、馬鹿なことを言っているんだ」
カイジンが絶対ありえないと言う風に私を呆れた目で見てくる。ただ、この男はポーカーで負けた男。ポーカーのような心理戦で相手にわざと負けることがあってもおかしくはない。もちろん今回はウィン王子がオールインして勝っていたにも関わらず、負けを宣言するのは正気の沙汰ではないけれど、このわずかな時間の中で、ウィン王子であればありうるのではないかと、私は思った。
私はカードに手を伸ばすけれど、ウィン王子は顔色を変えないし、それを咎めも、止めようともしなかった。
こんな感じで違ったら、かなり恥ずかしい。
私は一枚ずつ、カードを開ける。
ダイヤの10。
ダイヤのジャック。
ダイヤのクイーン。
ダイヤのキング。
ダイヤの……エースだった。
満たされているその瞳は全てを受け入れ、全てを見透かしてそうだった。
「私が負けていたら、どうされたんですか?」
私が尋ねると、ウィン王子は少しだけ考えて、
「それは言いたくないかな。ただ、もうボクはキミのモノだ。言えと言うなら言おう」
と意地悪な言い方をしてきた。
「やめてください。私は人をモノ扱いしたくはありません」
私がそれ以上聞けなくなるのを見越していたとすれば、ウィン王子がなぜ言いたくないのか、かなり気になるけれど、ポーカーが上手であろうウィン王子であれば、言わないのも嘘を付いた時のカモフラージュで、本当は大した理由ではないのかもしれない。
私はどうしたらいいのかわからず、ウィン王子は自分から何かをしようと思っていない様子でしばらく沈黙が再び訪れる。こんな時に喋って間を埋めて欲しいカイジンは私から自分のカード配りに酔いしれていた。
(カイジンはウィン王子に何のカードを配ったのだろう?)
私はカイジンが私の味方のふりをして、本当はウィン王子の味方なのでは、と疑った。なぜなら、ポーカーは手札の強さに応じて、支払いが発生するのではなく、どんなに相手が強くても、自分が勝負に乗らなければ、被害は最低限で済む。だから、カイジンからの作戦だって、私がオールインしても、ウィン王子が乗ってこなければほとんど価値がないし、一発勝負ではなく、カイジンが複数回私に強い手札を渡したとしても、私が何度も勝てばウィン王子も怪しむだろう。だから、もしがっつりいかさまをするのであれば、いつ負けて、いつ勝つかのサインでも決めておかなければならない。
だからウィン王子がオールインしたくなったカードというのがいかほどのものなのか気になる。
だって、さらに言えば、カイジンがかなりいい手でオールインして負けており、その人をディーラーに採用して、そのディーラーと次にプレイヤーになる私がこそこそ話をするのを許すなんて正気の沙汰じゃない。
「開けてもいいですか」
私はウィン王子のカードを指さして、彼の顔色を見る。
「それは、マナー違反だ。次の勝負の伏線にもなるしね」
ダウト。
次の勝負、そんなもの命をお互いを賭けた後にあるわけがない。
「ウィン王子……本当は勝っていらしたのでは?」
私は少し強めの言葉でウィン王子に質問した。
「なに、馬鹿なことを言っているんだ」
カイジンが絶対ありえないと言う風に私を呆れた目で見てくる。ただ、この男はポーカーで負けた男。ポーカーのような心理戦で相手にわざと負けることがあってもおかしくはない。もちろん今回はウィン王子がオールインして勝っていたにも関わらず、負けを宣言するのは正気の沙汰ではないけれど、このわずかな時間の中で、ウィン王子であればありうるのではないかと、私は思った。
私はカードに手を伸ばすけれど、ウィン王子は顔色を変えないし、それを咎めも、止めようともしなかった。
こんな感じで違ったら、かなり恥ずかしい。
私は一枚ずつ、カードを開ける。
ダイヤの10。
ダイヤのジャック。
ダイヤのクイーン。
ダイヤのキング。
ダイヤの……エースだった。
1
あなたにおすすめの小説
婚約者は冷酷宰相様。地味令嬢の私が政略結婚で嫁いだら、なぜか激甘溺愛が待っていました
春夜夢
恋愛
私はずっと「誰にも注目されない地味令嬢」だった。
名門とはいえ没落しかけの伯爵家の次女。
姉は美貌と才覚に恵まれ、私はただの飾り物のような存在。
――そんな私に突然、王宮から「婚約命令」が下った。
相手は、王の右腕にして恐れられる冷酷宰相・ルシアス=ディエンツ公爵。
40を目前にしながら独身を貫き、感情を一切表に出さない男。
(……なぜ私が?)
けれど、その婚約は国を揺るがす「ある計画」の始まりだった。
身代わり令嬢、恋した公爵に真実を伝えて去ろうとしたら、絡めとられる(ごめんなさぁぁぁぁい!あなたの本当の婚約者は、私の姉です)
柳葉うら
恋愛
(ごめんなさぁぁぁぁい!)
辺境伯令嬢のウィルマは心の中で土下座した。
結婚が嫌で家出した姉の身代わりをして、誰もが羨むような素敵な公爵様の婚約者として会ったのだが、公爵あまりにも良い人すぎて、申し訳なくて仕方がないのだ。
正直者で面食いな身代わり令嬢と、そんな令嬢のことが実は昔から好きだった策士なヒーローがドタバタとするお話です。
さくっと読んでいただけるかと思います。
白い結婚のはずが、騎士様の独占欲が強すぎます! すれ違いから始まる溺愛逆転劇
鍛高譚
恋愛
婚約破棄された令嬢リオナは、家の体面を守るため、幼なじみであり王国騎士でもあるカイルと「白い結婚」をすることになった。
お互い干渉しない、心も体も自由な結婚生活――そのはずだった。
……少なくとも、リオナはそう信じていた。
ところが結婚後、カイルの様子がおかしい。
距離を取るどころか、妙に優しくて、時に甘くて、そしてなぜか他の男性が近づくと怒る。
「お前は俺の妻だ。離れようなんて、思うなよ」
どうしてそんな顔をするのか、どうしてそんなに真剣に見つめてくるのか。
“白い結婚”のはずなのに、リオナの胸は日に日にざわついていく。
すれ違い、誤解、嫉妬。
そして社交界で起きた陰謀事件をきっかけに、カイルはとうとう本心を隠せなくなる。
「……ずっと好きだった。諦めるつもりなんてない」
そんなはずじゃなかったのに。
曖昧にしていたのは、むしろリオナのほうだった。
白い結婚から始まる、幼なじみ騎士の不器用で激しい独占欲。
鈍感な令嬢リオナが少しずつ自分の気持ちに気づいていく、溺愛逆転ラブストーリー。
「ゆっくりでいい。お前の歩幅に合わせる」
「……はい。私も、カイルと歩きたいです」
二人は“白い結婚”の先に、本当の夫婦を選んでいく――。
-
黒騎士団の娼婦
イシュタル
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。
異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。
頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。
煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。
誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。
「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」
※本作はAIとの共同制作作品です。
※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。
好きすぎます!※殿下ではなく、殿下の騎獣が
和島逆
恋愛
「ずっと……お慕い申し上げておりました」
エヴェリーナは伯爵令嬢でありながら、飛空騎士団の騎獣世話係を目指す。たとえ思いが叶わずとも、大好きな相手の側にいるために。
けれど騎士団長であり王弟でもあるジェラルドは、自他ともに認める女嫌い。エヴェリーナの告白を冷たく切り捨てる。
「エヴェリーナ嬢。あいにくだが」
「心よりお慕いしております。大好きなのです。殿下の騎獣──……ライオネル様のことが!」
──エヴェリーナのお目当ては、ジェラルドではなく獅子の騎獣ライオネルだったのだ。
氷のメイドが辞職を伝えたらご主人様が何度も一緒にお出かけするようになりました
まさかの
恋愛
「結婚しようかと思います」
あまり表情に出ない氷のメイドとして噂されるサラサの一言が家族団欒としていた空気をぶち壊した。
ただそれは田舎に戻って結婚相手を探すというだけのことだった。
それに安心した伯爵の奥様が伯爵家の一人息子のオックスが成人するまでの一年間は残ってほしいという頼みを受け、いつものようにオックスのお世話をするサラサ。
するとどうしてかオックスは真面目に勉強を始め、社会勉強と評してサラサと一緒に何度もお出かけをするようになった。
好みの宝石を聞かれたり、ドレスを着せられたり、さらには何度も自分の好きな料理を食べさせてもらったりしながらも、あくまでも社会勉強と言い続けるオックス。
二人の甘酸っぱい日々と夫婦になるまでの物語。
【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。
猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で――
私の願いは一瞬にして踏みにじられました。
母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、
婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。
「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」
まさか――あの優しい彼が?
そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。
子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。
でも、私には、味方など誰もいませんでした。
ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。
白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。
「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」
やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。
それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、
冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。
没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。
これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。
※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ
※わんこが繋ぐ恋物語です
※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ
うっかり結婚を承諾したら……。
翠月るるな
恋愛
「結婚しようよ」
なんて軽い言葉で誘われて、承諾することに。
相手は女避けにちょうどいいみたいだし、私は煩わしいことからの解放される。
白い結婚になるなら、思う存分魔導の勉強ができると喜んだものの……。
実際は思った感じではなくて──?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる