異常姦見聞録

月魚

レポート『月魚』

タイトル:月魚
カテゴリ:妖怪

　古今東西、異類婚姻譚は数多く存在している。今回紹介した体験談もその一つと言えるだろう。

　伝承によれば月魚にくづきうおは不漁の中でも諦めず海に挑む漁師の前に現れるとされる。漁師はこの奇妙な魚と一夜限りの愛を育み孤独を癒すのだ。だが当然、伝承はそれだけでは無い。月魚にくづきうおと交わった男には海からの祝福、そう富が与えられるという。幸運を運ぶ魚という訳だ。
　
　この度の体験者は月魚にくづきうおに実際に遭遇し、伝承通り交わる事となった。
　その様子は性行為セックスというより性処理オナニーに近い。古来より漁師の間ではエイやイカといった魚介類を性の捌け口にしてきたそうだ。この月魚にくづきうおの伝承もそういった風習を元にしているのかもしれない。

　次に月魚にくづきうおについて考えてみよう。
　まずはその姿だが、私の元には体験者の口頭説明以外に資料が無い為、イメージが付き難いのだが、クリオネが近いのでは無いかと思われる。

　半透明の体、丸い頭部に細長い胴とヒレと並べて見ると類似点が見られる。
　月魚にくづきうおという呼び名もそれを連想させる。海の生物で月と名の付く生物には海月くらげが存在する。海中をゆらゆらと漂う姿を月に見立てた呼び名だ。この月魚にくづきうおの名も同じような由来なのかもしてない。

　体験談の中では月魚にくづきうおの大きさは抱きかかえられる程とあり、短時間とは言え船上でも問題なく活動できるとなれば普通の魚、単なるクリオネでは無いと考えるべきだろう正に怪魚だ。
　
　海の天使と呼ばれるクリオネだが、捕食の際には豹変し触手のような突起を伸ばし悪魔のような姿に変化する。
　この月魚にくづきうおも単に富を与えるだけではなく、恐ろしい側面を持っているのかもしれない。