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その理由(わけ)を
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意識を失うように、私は仮眠室で寝てしまったようだった。
また、夢の中に来ている。
暗闇の中から声がした。
「邪魔物は消えた」
暗闇から浮き出るように現れた男はとても愉快そうに語る。
私はその姿を見た瞬間、男に掴み掛かった。
「なんで!なんで殺した!」
力いっぱい叫ぶ。
「なんで…!なんで国塚くんが死なないといけないのっ!!」
泣きながら、男の身体を揺さぶった。
これは夢だ。
夢ならこの男を殺しても何も咎められることはない。
今すぐ、すぐに殺してしまいたい。
私よりも一回り以上背のある男の首を力限り絞めた。
「無駄だ。君にわたしは殺せない」
首を絞める確かな感触はあるのに、男はひとつも苦しそうな素振りを見せない。
「うるさいっ!!あんたが殺したんでしょ!あんたが昨日の夜国塚くんを…!!」
喉に手を食い込ませる。
「殺した。だからなんだというんだ」
男はさも当然だというように笑って言った。
生まれて初めての、明らかな殺意に身体が震えた。
まるで空気を取り込み激しく燃える炎のように、私の殺意はその勢いを増していく。
「なんでよ!私は彼の死なんて望んでないっ!!」
手の力はそのままに、男を睨み付ける。
今までされるがままだった男はにやりと目を弓形に歪めた後、私の腕をがっと掴んだ。
「うっ…!」
細い手のどこにそんな力があるのかと思う程、男は私の手を掴んで力を込めてくる。
手首が折れそうになるほどの激痛が走るが、男の首に掛けた手は決して離さない。
「わたしが望んだ」
男は低い声でそう言った。
「なっ…!」
「わたしがあの男の死を望んだから、殺した」
「なん…で…なんであんたが国塚くんの死を望んだの…」
告げられる真実に涙が溢れる。
涙のせいで男の顔は見えない。
笑っているのか、怒っているのかも分からない。
力が抜けて、抵抗も出来ない。
私の手首を掴んだまま、男は語る。
「あの男は君を好いていた」
ひゅっ、と自分の呼吸が止まる音がした。
「わたしから君を奪おうとした。だから、殺したんだ。悪いのはあの男だ」
低い声が震えている。
それは悲しみではなく明らかな怒りによってのものに感じた。
「うそだ…国塚くんはそんなこと一言も言ってない!」
男の勝手な解釈に怒りが再び沸き上がる。
声を上げて否定する。
「言ってただろう!話があると!!」
私以上の怒声を上げて、言葉を遮った。
「あの男は君にいずれ愛を告げるつもりだった…!わたしを差し置いて、君に求愛したんだ!」
男は突然、狂ったように声を上げて笑いはじめた。
「あぁ…!思い出すだけで忌々しい。君を案じて食べ物をおくり、君に渾なすあの女狐から君を守った!」
私の両頬を掴んで、男は無理やり視線を合わせてくる。
闇より深い色の怒りに満ちた目がこちらを射抜く。
「わたしは君が寝ていないと出来ないのに…!わたしに出来ないことを簡単にやってのけたあの男が憎い…!」
この男は私が寝ている時しか現世に強く干渉出来ない。
だから、私をあの時無理やり寝かせて…
あの時、頭をぶつけて意識を失った自分を殺してしまいたい。
あの時起きていれば、国塚くんは死ななくて済んだに違いない。
「そうだ、そうだよ。君が気を失っている間に、わたしがあの男を殺した」
私の思考を読んで男は語る。
「君を傷つけようとするもの、
わたしから君を奪おうとするもの、わたしの邪魔をするものはすべて、すべて、すべて!」
わたしがこの手で消す。
男は笑ってそう言った。
また、夢の中に来ている。
暗闇の中から声がした。
「邪魔物は消えた」
暗闇から浮き出るように現れた男はとても愉快そうに語る。
私はその姿を見た瞬間、男に掴み掛かった。
「なんで!なんで殺した!」
力いっぱい叫ぶ。
「なんで…!なんで国塚くんが死なないといけないのっ!!」
泣きながら、男の身体を揺さぶった。
これは夢だ。
夢ならこの男を殺しても何も咎められることはない。
今すぐ、すぐに殺してしまいたい。
私よりも一回り以上背のある男の首を力限り絞めた。
「無駄だ。君にわたしは殺せない」
首を絞める確かな感触はあるのに、男はひとつも苦しそうな素振りを見せない。
「うるさいっ!!あんたが殺したんでしょ!あんたが昨日の夜国塚くんを…!!」
喉に手を食い込ませる。
「殺した。だからなんだというんだ」
男はさも当然だというように笑って言った。
生まれて初めての、明らかな殺意に身体が震えた。
まるで空気を取り込み激しく燃える炎のように、私の殺意はその勢いを増していく。
「なんでよ!私は彼の死なんて望んでないっ!!」
手の力はそのままに、男を睨み付ける。
今までされるがままだった男はにやりと目を弓形に歪めた後、私の腕をがっと掴んだ。
「うっ…!」
細い手のどこにそんな力があるのかと思う程、男は私の手を掴んで力を込めてくる。
手首が折れそうになるほどの激痛が走るが、男の首に掛けた手は決して離さない。
「わたしが望んだ」
男は低い声でそう言った。
「なっ…!」
「わたしがあの男の死を望んだから、殺した」
「なん…で…なんであんたが国塚くんの死を望んだの…」
告げられる真実に涙が溢れる。
涙のせいで男の顔は見えない。
笑っているのか、怒っているのかも分からない。
力が抜けて、抵抗も出来ない。
私の手首を掴んだまま、男は語る。
「あの男は君を好いていた」
ひゅっ、と自分の呼吸が止まる音がした。
「わたしから君を奪おうとした。だから、殺したんだ。悪いのはあの男だ」
低い声が震えている。
それは悲しみではなく明らかな怒りによってのものに感じた。
「うそだ…国塚くんはそんなこと一言も言ってない!」
男の勝手な解釈に怒りが再び沸き上がる。
声を上げて否定する。
「言ってただろう!話があると!!」
私以上の怒声を上げて、言葉を遮った。
「あの男は君にいずれ愛を告げるつもりだった…!わたしを差し置いて、君に求愛したんだ!」
男は突然、狂ったように声を上げて笑いはじめた。
「あぁ…!思い出すだけで忌々しい。君を案じて食べ物をおくり、君に渾なすあの女狐から君を守った!」
私の両頬を掴んで、男は無理やり視線を合わせてくる。
闇より深い色の怒りに満ちた目がこちらを射抜く。
「わたしは君が寝ていないと出来ないのに…!わたしに出来ないことを簡単にやってのけたあの男が憎い…!」
この男は私が寝ている時しか現世に強く干渉出来ない。
だから、私をあの時無理やり寝かせて…
あの時、頭をぶつけて意識を失った自分を殺してしまいたい。
あの時起きていれば、国塚くんは死ななくて済んだに違いない。
「そうだ、そうだよ。君が気を失っている間に、わたしがあの男を殺した」
私の思考を読んで男は語る。
「君を傷つけようとするもの、
わたしから君を奪おうとするもの、わたしの邪魔をするものはすべて、すべて、すべて!」
わたしがこの手で消す。
男は笑ってそう言った。
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