限りなく狂愛に近い恋 ヤンデレ短編

しみずりつ

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いただきます  あの子がくれる食べ物だけほしいヤンデレ×あの子

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「食べて」

きつめに、まるで子供に叱るように言われるその言葉すら、甘美な味がしそうで思わず生唾を飲み込んだ。
「わかった」と返事をすれば彼女は疑わしそうにこちらを見る。

「大丈夫、ちゃんと食べるから」

そう言ってスプーンに乗った玉子とケチャップライスを口に運ぶ。

最後に固形物を口に入れたのはいつだったか考える。
たしか三日ぶりくらいだったような気がする。

舌に乗る温かな旨味に唾液が一気に出る。
直接脳に快楽のようにも思える刺激が走った。

「おいしいよ」

にこりと笑って彼女を見ると、心底ほっとしたような顔をした後、すぐに眉毛が下がって今にも泣きそうな顔をする。

「もう、いくら仕事が忙しくたってごはんはちゃんと食べてよ。昨日からなにも食べてないって本当?どうりで顔色が悪いと思った…」

「うん、ごめんね。仕事に集中すると忘れちゃって」

嘘だよ、本当は一昨日から何も食べてないんだ。
そんなことを言えば、心配性な彼女は泣き崩れてしまうだろうから口にはしないけど。

彼女が作ってくれたスープとオムライスを食べながら、いつから自分は食べることに執着しなくなったのか考える。

最愛の女性である彼女が初めて料理を僕に振る舞ってくれたあの時からだろうか。
その後は外食をしても、自分で作っても買って食べても満たされなくなってしまった。
最初は一種の味覚障害だと思ったけど、彼女が作ってくれた料理や、買ってきてくれた食べ物、外食でも一緒に食べれば味もするし、美味しいと思うことを考えると、どうやら彼女が食事に少しでも関わっていないとなる障害のようだと察した。

それに気がついてからは彼女に料理をねだることも増えたし、彼女が忙しいときはお金を渡して買ってきてもらうようにした。
もともと彼女と会う前から食事に対して重きを置くこともなく、ただ「エネルギー補給」として食べ物を口に放り込んできたような人間だったから、食べないことにさして苦痛を感じることもない。

僕ね、君から与えられた食べ物しか受け付けない体になっちゃったみたい。
君がくれる食べ物しか美味しいとか食べたいって思わないんだよ。

彼女には口が裂けてもこんなこと言えないけれど。

不思議だよね、君がくれるものならたとえ焦げててもしょっぱくてもすごく美味しいって思う。

今食べているオムライスだって、不格好だし、スープの野菜も半生だけど本当に美味しくて涙が出そうになるんだ。

「ごめんね、慌てて作ったから美味しくないと思う…買ってくればよかったね」

すまなそうにこちらを見る彼女に「そんなことないよ、すごく美味しいよ。ありがとう」と返せば「今度はもっと美味しく作れるようにするね」と穏やかに笑った。

不器用ながら一生懸命に僕の部屋の狭いキッチンで料理をしてくれる彼女はとてもいとおしい。

料理を待つ僕は、まるで親から与えられる餌を待つ雛鳥のようだっただろうなと思うとおかしくて笑ってしまう。

「君がいないと僕、何も食べられなくて死んじゃうかも」

冗談のように言ってのけるが、あながち間違いではないのだろう。
彼女がいなければ、僕は食べることを放棄していずれゆるゆると弱って死んでいくんだ。

「冗談でも、そんなこと言うのはやめてよ。本当に心配してるんだからね。少しでもいいからちゃんと食べて」

今日のことがあまりにもショックだったのか、彼女はうっすら涙を浮かべて僕をたしなめた。

「ごめんごめん。ちゃんと食べるようにするから、泣かないで?」

彼女は僕の目を見る。芯の通った瞳が僕を「本当か?」と問いただしているような気がした。

「食べるから、ずっと僕と一緒にいてね」

頷きながら、彼女は涙を少し乱暴に拭った。

あぁ、もったいない。
その涙すらきっと美味しいのだろうなぁ、と思いながら、僕は今日何度目かの舌舐めずりをした。

 
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