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熱に、茹だる。
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ふと気がつけば、あれだけ響いていた蝉の鳴き声がピタリと止んでいた。
麦茶を満たしたグラスの中で、溶けながら形を変えた氷が均衡を失いカランと涼やかな音を立てる。グラスの水滴が室内の暑さを強調していた。
締め切ったカーテンの隙間から西日が差し込んでいる。高めに温度設定をしたクーラーがゴンゴンと唸っていた。その中で荒い息を吐きながら折り重なって腰を揺すっていた芳乃と楓は、楓が細い囀りと共に上り詰めたことで動きを止めた。ひくひくと喉を喘がせて必死に酸素を求める年上の男を見下ろして、芳乃はゆっくりと腰をひいた。
「あ……、待って」
自身の胎から抜け出そうとする滾りに気づいて、楓が短く引き留める。身体の力は抜けきっているのに、胎の中だけが必死に芳乃に縋りついた。
「僕だけよかった。芳乃君も最後まで……」
「俺もすっげえいいよ。でも、これ以上したら、熱中症でヤバいことになるでしょ。俺は楓さんのこんな色っぽいカッコ、救急隊員に見せたくないよ」
年下の大学生に至極真っ当に諭されて、楓はプイと顔を背けた。
「唇尖らせて、可愛い」
「……バカ」
「その言い方も、すっげえ可愛い」
「もう、本当に芳乃君はバカだ」
そうしてゆっくり身体を離す。
「涼しくなったら、いっぱいしようね」
「……そういうこと、言わないの」
蝉も鳴けない、暑すぎる夏の一日。
〈おしまい〉
麦茶を満たしたグラスの中で、溶けながら形を変えた氷が均衡を失いカランと涼やかな音を立てる。グラスの水滴が室内の暑さを強調していた。
締め切ったカーテンの隙間から西日が差し込んでいる。高めに温度設定をしたクーラーがゴンゴンと唸っていた。その中で荒い息を吐きながら折り重なって腰を揺すっていた芳乃と楓は、楓が細い囀りと共に上り詰めたことで動きを止めた。ひくひくと喉を喘がせて必死に酸素を求める年上の男を見下ろして、芳乃はゆっくりと腰をひいた。
「あ……、待って」
自身の胎から抜け出そうとする滾りに気づいて、楓が短く引き留める。身体の力は抜けきっているのに、胎の中だけが必死に芳乃に縋りついた。
「僕だけよかった。芳乃君も最後まで……」
「俺もすっげえいいよ。でも、これ以上したら、熱中症でヤバいことになるでしょ。俺は楓さんのこんな色っぽいカッコ、救急隊員に見せたくないよ」
年下の大学生に至極真っ当に諭されて、楓はプイと顔を背けた。
「唇尖らせて、可愛い」
「……バカ」
「その言い方も、すっげえ可愛い」
「もう、本当に芳乃君はバカだ」
そうしてゆっくり身体を離す。
「涼しくなったら、いっぱいしようね」
「……そういうこと、言わないの」
蝉も鳴けない、暑すぎる夏の一日。
〈おしまい〉
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エロい。涼しくなったらたんとしとくれ。
この前の感想書く前に次のきた…。
めっちゃショートですが、楽しんでいただけたら嬉しいです。