ちょっと不運な私を助けてくれた騎士様が溺愛してきます

五珠 izumi

文字の大きさ
35 / 68

オスカーの『花』

しおりを挟む
 思い出に残るプロポーズが無事に終わり。
まぁ……いつものごとく甘々な夜を過ごした翌日の早朝の事。

 まだベッドの中で、可愛い寝息を立てているシャーロットをそのままに、エスターはレイナルド邸の外でジークと話をしていた。

「じゃあこれでシャーロットちゃんを攫った事は許してね、エスターくん」

魔獣術師ジークはエスターに軽くウインクをした。
エスターはそんな彼を訝しむような視線を送っている。

「……もう一つ聞きたい事がある」
「何かな? 俺、彼女には指一本触れてないよ⁈ 」
「なんで僕が聞こうとしている事が分かるんだよ」
「エスターくん、君は思っている事が意外と顔に出やすいよ?」

……嫌なヤツだ……

「じゃあ聞くがあの時、どうやって塔の上にシャーロットを運んだ?」

あの日、彼女は僕が送ったドレスを着ていた。アレは僕以外の男は触れる事は出来ないはず。

 ジークは人差し指を左右に振りながらニヤッと笑った。

「俺は魔獣術師なんだよ、魔獣にさ、こうシャーロットちゃんを乗せた布の端を持たせて、ふわふわと持ち上げて運んだんだよ。あ、布に彼女を乗せたのは侍女達だからね」

「……そんな事も出来るのか?」
「ま、いろんな魔獣がいるからね。また何か頼みたい事があったらいいなよ、俺シャーロットちゃんの事は気に入ってるから協力するよ⁈ 」

それを聞いたエスターはちょっとムッとした。

「もう、頼まない」
「またまたー、君ってけっこーなやきもち焼きだなぁ」

ふざけた様に笑っていたジークが、急に真剣な顔をした。

「ねぇ、オスカーにまだ『花』は現れてないの?」

「……ああ、まだみたいだ」

ふう、とジークは目を瞑る。

「早く現れてくれないと、いつまで経ってもリーが諦めないからさ」

「どういう事だ?」

「オスカーに『花』が現れたら、俺と結婚してもいいって言ってくれてるんだよね」

「リーって、エリーゼ王女?」
「そ、エリーゼだよ」

「お前、エリーゼ王女が好きなのか⁈ 」

 驚いたようにエスターが聞くと、ジークは少し照れたような顔をした。

「そうだよ、昔からずっと好きなんだ。第一王女だから結婚は無理かなぁと思ってたけどさ、継承権はミリアリア王女が持つことになってね、リーと俺は結婚出来ることになったんだよ」

「どうやって? お前は爵位もないんだろう? 相手は王族なのに……」

ははっ、と笑ってジークは首を横に振る

「ほら、俺って貴重な魔獣術師だからね、王様もいいよって言ってくれたんだ。それに顔だって悪くないでしょ?」

自分で言うのか……

「あー、早くオスカーの『花』現れないかなぁ」

ジークは空を見上げて呟いていた。

……オスカーの『花』か……



ーーーーーー*




 私とエスターは来月、結婚式を挙げることが決まった。

「どうしても今日じゃないとダメなの?」
「うん」

私はねだるようにエスターを見つめる。

「今日ね、ブーケを作ってくれる花屋さんが来ることになってるの」

エスターは私の頬に手を当て青い目を細めた。
ううっ……ダメだ……エスターの視線には負けちゃう。

「それはシャーロットじゃなくてもいいよね?」

そう言うと彼は額に口づけを落とす。

「だって、ドレスを見せないと……」
「オスカーに頼むよ、ドレスを見せるだけなんだろう?」
「……うん、そうだけど」

 今日、ブーケを頼んだ花屋さんがレイナルド邸へ来ることになっていた。
ソフィアから貰ったブーケが素敵だったとエスターに話すと、じゃあ同じ所で頼もうと言ってくれたのだ。
その花屋さんがブーケのデザインをするので是非ウエディングドレスを見せて欲しい、と言われていた。
……ウエディングドレスは昨日届いて……

「オスカー様に頼んだりしてもいいの?私達の事なのよ?」
「いいよ、オスカーは暇なんだから」




 エスターがチラリと横目で俺を見ながら、またシャーロット嬢にキスをしている。
朝から長いんだよ! そんな濃厚なヤツ見せるな!
……くそっ! まだ『花』に出会えていない俺への当て付けなのか⁈

「……悪かったな、暇で」

悪態をついてみるがそれを気にも止めず玄関でイチャイチャとする弟達。

「行けよ、ドレスを見せるだけなんだろう? 大丈夫だ、どうせ今日暇なのは俺だけだしな、気にせず行ってこいよ」

「じゃあ頼むよ」
「すみません、よろしくお願いします」

 二人は新居を見に行った。今日、父が彼等に渡した屋敷の改修工事に入るらしく、その様子をどうしても今から見に行くとエスターが譲らなかった。

 父と母も出掛けて、バロンもカミラも、とにかく皆何故か今日に限って忙しい。
この邸には昼過ぎまで俺しかいないのだ。

 魔獣もここ最近は出ていない。
この前の様に大量に出た後暫くは、何故か出なくなるのだと父が言っていた。
この間に魔獣討伐に行っていた騎士達は、長期の休みを取ることが決まった。

ま、ゆっくり休ませてもらうか……

……暇だ……大体、竜獣人に休みなど無くても平気なんだ。

……する事がない。

 
 花屋の御夫人が来ると言っていた時間は、昼前だった。

 俺は、父が母の為に玄関前に作った庭にあるベンチに腰掛けた。
ガラスの天井から日が差し込む。

……はぁ、めちゃくちゃ天気がいい。

 玄関に庭があるなんて変な家だよな……と子供の頃は思っていたが、コレは母を外に出さない為らしい。……監禁じゃないよな? 確かガイア公爵邸の中にも噴水があった、それも妻の為だと言っていた……うーん……?

 そんなことを考えながら、俺は珍しくうたた寝をした。こんな事は子供の頃以来だ。

「……の……」

すごく可愛い女の子の声がする。

「……あの、……す」

ああ、めっちゃ好み……

「あのっ、レイナルドさんっ!起きて下さいっ」
「はっ⁉︎ 」

 思わず飛び起きるとそこには、ふわふわのハニーブロンドの髪の女の子が、クリッとした茶色の目で俺を覗き込んでいた。
起きた俺の顔を見て真っ赤になっている。
……かわいい……

「うわっ、ご、ごめんなさい。あの、玄関で声をかけたんですけど誰もいらっしゃらなくて……それで扉を叩こうとしたら何故か開いて……入ってしまいました」

 なんだろう、日の光のせいかなぁ? この子の髪色のせいかなぁ? 女の子の周りがキラキラしている。

「レイナルドさん?」

「ああ、すまないつい寝てしまっていたんだ……君は?」

「あ、私はマリベル花店から来ました。本日はブーケのご依頼で……ドレスを見せて頂く事になっていまして」

花店? この女の子が?

「弟達から聞いています。彼等は今出ていて、俺が代わりにドレスを見せることになって……あなたが店の主人?」

「いえ、違います! 私は娘です、母の代わりにお伺いしました」

はにかむように笑う小柄な女の子。
よかった、娘……そうだよな、どう見ても歳は同じくらいだ。

俺は手を差し出した。

「俺はオスカー・レイナルドです」

「あ、私はティナ・マリベルです。よろしくお願いします」

彼女が手を差し出した。
少し切り傷の跡がある白い小さな手。

その小さな手を取った瞬間


ーーこれかーー

ドクンッと体の奥に衝撃が走る。
繋がれた手からは熱が生まれているように熱くなる。
鼓動は速まり、身体中が熱を持つ。

「あの……オスカー様?」

俺はそのままティナの体を引き寄せた。

驚いて俺を見上げる彼女を、離さないように見つめる。

「俺の……瞳の色……変わった?」

ティナはジッと俺の目を見つめる。

「はい……すごくキレイな金色に……」

 そのままティナと俺は何も話さず見つめ合った。
どれぐらいの時間か分からないが、だんだんと顔を寄せていき、もう少しで二人の唇が重なるその時

「オスカー、お前やっと『花』に出会えた様だな」

ハッとして、声の方に振り向けば、ニヤニヤと笑う父と母が玄関に立っていた。

なんで今帰って来るんだよっ!

「……『花』?」

ティナが不思議そうに首を傾げて俺に聞いてくる。
その仕草すらなんて愛おしく思えるんだろう

俺はティナの頬に手を添える。

「ああ……君は俺の『花』だよ」


ーーやっと出会えたーー
俺のーー『ティナ
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?

浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。 「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」 ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。

乙女ゲームの悪役令嬢の兄の婚約者に転生しましたが傷物になったので退場を希望します!

ユウ
恋愛
平凡な伯爵令嬢のリネットは優しい婚約者と妹と穏やかで幸福な日々を送っていた。 相手は公爵家の嫡男であり第一王子殿下の側近で覚えもめでたく社交界の憧れの漆黒の騎士と呼ばれる貴族令息だった。 結婚式前夜、婚約者の妹に会いに学園に向かったが、そこで事件が起きる。 現在学園で騒動を起こしている第二王子とその友人達に勘違いから暴行を受け階段から落ちてしまう… その時に前世の記憶を取り戻すのだった… 「悪役令嬢の兄の婚約者って…」 なんとも微妙なポジション。 しかも結婚前夜で傷物になる失態を犯してしまったリネットは婚約解消を望むのだが、悪役令嬢の義妹が王子に婚約破棄を突きつける事件に発展してしまう。

前世の記憶しかない元侯爵令嬢は、訳あり大公殿下のお気に入り。(注:期間限定)

miy
恋愛
(※長編なため、少しネタバレを含みます) ある日目覚めたら、そこは見たことも聞いたこともない…異国でした。 ここは、どうやら転生後の人生。 私は大貴族の令嬢レティシア17歳…らしいのですが…全く記憶にございません。 有り難いことに言葉は理解できるし、読み書きも問題なし。 でも、見知らぬ世界で貴族生活?いやいや…私は平凡な日本人のようですよ?…無理です。 “前世の記憶”として目覚めた私は、現世の“レティシアの身体”で…静かな庶民生活を始める。 そんな私の前に、一人の貴族男性が現れた。 ちょっと?訳ありな彼が、私を…自分の『唯一の女性』であると誤解してしまったことから、庶民生活が一変してしまう。 高い身分の彼に関わってしまった私は、元いた国を飛び出して魔法の国で暮らすことになるのです。 大公殿下、大魔術師、聖女や神獣…等など…いろんな人との出会いを経て『レティシア』が自分らしく生きていく。 という、少々…長いお話です。 鈍感なレティシアが、大公殿下からの熱い眼差しに気付くのはいつなのでしょうか…? ※安定のご都合主義、独自の世界観です。お許し下さい。 ※ストーリーの進度は遅めかと思われます。 ※現在、不定期にて公開中です。よろしくお願い致します。 公開予定日を最新話に記載しておりますが、長期休載の場合はこちらでもお知らせをさせて頂きます。 ※ド素人の書いた3作目です。まだまだ優しい目で見て頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。 ※初公開から2年が過ぎました。少しでも良い作品に、読みやすく…と、時間があれば順次手直し(改稿)をしていく予定でおります。(現在、146話辺りまで手直し作業中) ※章の区切りを変更致しました。(9/22更新)

捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。

蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。 これで、貴方も私も自由です。 ……だから、もういいですよね? 私も、自由にして……。 5年後。 私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、 親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、 今日も幸せに子育てをしています。 だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。 私のことは忘れて……。 これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。 はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

【完】麗しの桃は攫われる〜狼獣人の番は甘い溺愛に翻弄される〜

こころ ゆい
恋愛
※完結しました!皆様のおかげです!ありがとうございました! ※既に完結しておりますが、番外編②加筆しました!(2025/10/17)  狼獣人、リードネストの番(つがい)として隣国から攫われてきたモモネリア。  突然知らない場所に連れてこられた彼女は、ある事情で生きる気力も失っていた。  だが、リードネストの献身的な愛が、傷付いたモモネリアを包み込み、徐々に二人は心を通わせていく。  そんなとき、二人で訪れた旅先で小さなドワーフ、ローネルに出会う。  共に行くことになったローネルだが、何か秘密があるようで?  自分に向けられる、獣人の深い愛情に翻弄される番を描いた、とろ甘溺愛ラブストーリー。

二度目の子育て~我が子を可愛がったら溺愛されました

三園 七詩
恋愛
私は一人娘の優里亜の母親だった。 優里亜は幼い頃から体が弱く病院でほとんどの時間を過ごしていた。 優里亜は本が好きでよく私にも本の話をしてくれた。 そんな優里亜の病状が悪化して幼くして亡くなってしまう。 絶望に打ちひしがれている時事件に巻き込まれ私も命を落とした。 そして気がつくと娘の優里亜が大好きだった本の世界に入り込んでいた。

【完結】2番目の番とどうぞお幸せに〜聖女は竜人に溺愛される〜

雨香
恋愛
美しく優しい狼獣人の彼に自分とは違うもう一人の番が現れる。 彼と同じ獣人である彼女は、自ら身を引くと言う。 自ら身を引くと言ってくれた2番目の番に心を砕く狼の彼。 「辛い選択をさせてしまった彼女の最後の願いを叶えてやりたい。彼女は、私との思い出が欲しいそうだ」 異世界に召喚されて狼獣人の番になった主人公の溺愛逆ハーレム風話です。 異世界激甘溺愛ばなしをお楽しみいただければ。

処理中です...