泡沫のゆりかご 二部 ~獣王の溺愛~

丹砂 (あかさ)

文字の大きさ
56 / 179
本編

第55 抱いた悋気 12

しおりを挟む
「……はい」

逃れるように離れた身体を近付ける。
キスをしやすいように、ギガイに抱え上げる高さを変えられ、レフラはそっと唇を寄せていく。

触れ合った所から柔らかな感触を感じて、恐る恐る開いた唇から舌先を差し出し、ギガイの唇の間に舌先を沿わせた。それなのに、開かれることのない唇は、一見すると迎え入れる気がないようだった。

(差し込めと言っていたのはギガイ様なのに、なんで……?)

戸惑いながらも、舌先で隙間をノックする。

それでも開かれない唇を、レフラがはむはむと唇で食みながら軽く吸った。

「ギガイさま、開けて……」

レフラのその強請る声が気に入ったのか、ククッと喉元で笑った様子の後、ようやくギガイの唇と歯列が開かれてレフラの舌を受け入れた。

その隙間からおずおずと舌を奥の方へと差し込んでいく。

深く差し込んだ状態で敏感な舌裏を舐め上げられれば、ゾクゾクッとしたした痺れが身体の中心へと走っていき、レフラは思わず舌を引き抜きかけた。

「ぅぁ……ぅぅっ、……っう」

だけどその動きは予想されていたのかもしれない。

舌を引き戻そうとした瞬間に、強く舌を吸い上げられ、そのまま歯が立てられる。

「ふ……ぁ、っぁぁ……」

やだやだ、と訴えようにも舌を噛まれた状態では首を振ることさえできないのだ。レフラは分かって欲しくて、カリカリとギガイの胸元を引っ掻いた。

ギガイが傷付けることはないと知りつつも、痛みを伝えてくるその愛咬に、ジワッと涙が浮かんでくる。

「ふぅ……っ、……ぅぅ、ふっ……」

そうなれば、漏れる声も自然と涙で湿っていた。
ギガイの指が眦の涙を拭い取り、歯を立てられていた舌もようやく解放を許される。その場所へ今度は労るように愛撫をギガイの舌先から与えられれば、痛みを得ていた所から感じる痺れは、始めに裏筋を舐められた時よりビリビリと強い刺激を伝えてきた。

「んっ、んぅっ…んんっ……!」

そんな痛みと柔らかな刺激と、言いようのない快感と。奪われる呼吸を繰り返して、気が付けば差し込んでいたはずの舌がいつの間にか受け入れる側に変わっていた。

首筋を掌で撫でられて、身体にゾワゾワとした感覚が走って行く。

「ふ…ぁ…っぁ……」

口蓋や愛咬が繰り返された舌は、とても敏感な状態なのだ。そんな場所を何度も撫でるように這わされていた舌が、ついでのように喉奥まで犯していくのだから。そのせいで、レフラはどんどん呼吸さえもままならなくなっていた。

解放を求める訴えも、嬌声さえもギガイの口腔内へ吸い込まれる。

「ぁっ…ふぁ…っぁぅ……っ」

苦しいのに気持ち良くて、時々呼吸のために解放されて。息継ぎと一緒に声が漏れ出るような、そんなキスをもうどれぐらい与えられたのか、分からなくなった頃だった。
ギガイの舌からようやく口腔内を解放されて、口角から零れた唾液をギガイによって拭われる。

「だいぶ気持ちが良さそうだな」

そのまま酸欠でぼんやりした頭でギガイの言葉を反芻しながら、レフラは素直にコクッと頷いた。

涙が溜まっていたのかもしれない。
頬に添えられた指先がレフラの眦を拭ってくれる。次にこの指がどこを触ってくれるのか、疼く身体はどうしても期待をしてしまっていた。

それなのに、スリスリと頬を撫でてくれる指先は、一向にそこから動く様子がなぜかない。確かにそれだけでも心地良い。でもさんざん煽られた身体では、それだけでは全然足りなかった。
しおりを挟む
感想 142

あなたにおすすめの小説

こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡

なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。 あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。 ♡♡♡ 恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

甘々彼氏

すずかけあおい
BL
15歳の年の差のせいか、敦朗さんは俺をやたら甘やかす。 攻めに甘やかされる受けの話です。 〔攻め〕敦朗(あつろう)34歳・社会人 〔受け〕多希(たき)19歳・大学一年

世界を救ったあと、勇者は盗賊に逃げられました

芦田オグリ
BL
「ずっと、ずっと好きだった」 魔王討伐の祝宴の夜。 英雄の一人である《盗賊》ヒューは、一人静かに酒を飲んでいた。そこに現れた《勇者》アレックスに秘めた想いを告げられ、抱き締められてしまう。 酔いと熱に流され、彼と一夜を共にしてしまうが、盗賊の自分は勇者に相応しくないと、ヒューはその腕からそっと抜け出し、逃亡を決意した。 その体は魔族の地で浴び続けた《魔瘴》により、静かに蝕まれていた。 一方アレックスは、世界を救った栄誉を捨て、たった一人の大切な人を追い始める。 これは十年の想いを秘めた勇者パーティーの《勇者》と、病を抱えた《盗賊》の、世界を救ったあとの話。

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

ふたなり治験棟

ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。 男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

処理中です...