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第9話 それはイタズラなんかじゃなく
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どれぐらい経ったんだろう。
俺の後ろから大きな溜息が聞こえ、スルリと身体から腕が引かれていく。こんなんじゃ遊び相手にもならないって、このまま追い出されてしまうんだろう。
そう思うとまた新しい涙がボタボタと溢れてきた。
「ここはマジックミラーで他から見えない作りだから。大丈夫だから」
そんな俺を抱えて、泰弘がソファーに座り込む。
「ほらもう泣くな、俊」
今までの怒った空気が無くなって、いつもの雰囲気で少し困ったように泰弘が俺の名前を読んでいた。
(…えっ? 何で、いつから気がついてた?)
泰弘のその声に俺は目を何度も瞬かせた。
「だけど、お前の警戒心の無さも悪いんだからな。何の疑いもなく、あんな催淫剤もどきが入った酒なんか飲んで、俺があと少し遅かったらどうなってたと思うんだ」
でも肝心の泰弘はそんな俺の驚きに気が付いていないのだろう。唖然としたまま反応を返さない俺に「ちゃんと聞いているのか!?」なんて説教を続けていた。
(催淫剤……そんな物が入ってたなんて、何が紳士だあり得ない。身体が熱かったのも触られて変だったのも、全部アイツらのせいだったのか)
そう思えば、驚きもするし腹も立った。
それでも、泰弘に名前を呼ばれた事の方が気になり過ぎた俺の反応は、泰弘が思っていたよりも鈍かったのだろう。
「あのなぁ、お前どんだけヤバかったか分かってるのか。こんなんだから、俺はお仕置きだってしたくなるんだぞ」
泰弘の声がまた少し怒ったように低くなる。
「ヤバかったのはちゃんと分かってる、分かってるんだけど、でもなんで? お前こそなんで俺だって分かっていて触っていたんだ?」
その理由が俺には気になった。
「お仕置き……? 遊びじゃないのか?」
お前に触れたくて、触られたかった俺と違って、お仕置きだとしても、お前が俺に触れる意味なんて無いはずだ。
「はあ?」
「俺、これが泰弘の遊び方なんだって思って……でも俺、上手くできなかっただろ……だから、もう要らないんだろうなって思ってた……」
泰弘が俺に触れる理由なんて無いはずなのだ。だから赤の他人との一晩限りの遊びとして俺に触れているものだと思っていたのに。
「……ちゃんとした言葉がないまま始めたのは悪かったけど」
俺を掴む泰弘の手に力が篭もっていく。こんな目も声も今まで向けられた事なんかなかった。さっきの比に成らないぐらい向けられた感情は、怒りに満ちたものだった。
(俺はまた何か地雷を踏んだらしい……)
俺は泰弘のそんな状態に引き攣っていく。
俺の後ろから大きな溜息が聞こえ、スルリと身体から腕が引かれていく。こんなんじゃ遊び相手にもならないって、このまま追い出されてしまうんだろう。
そう思うとまた新しい涙がボタボタと溢れてきた。
「ここはマジックミラーで他から見えない作りだから。大丈夫だから」
そんな俺を抱えて、泰弘がソファーに座り込む。
「ほらもう泣くな、俊」
今までの怒った空気が無くなって、いつもの雰囲気で少し困ったように泰弘が俺の名前を読んでいた。
(…えっ? 何で、いつから気がついてた?)
泰弘のその声に俺は目を何度も瞬かせた。
「だけど、お前の警戒心の無さも悪いんだからな。何の疑いもなく、あんな催淫剤もどきが入った酒なんか飲んで、俺があと少し遅かったらどうなってたと思うんだ」
でも肝心の泰弘はそんな俺の驚きに気が付いていないのだろう。唖然としたまま反応を返さない俺に「ちゃんと聞いているのか!?」なんて説教を続けていた。
(催淫剤……そんな物が入ってたなんて、何が紳士だあり得ない。身体が熱かったのも触られて変だったのも、全部アイツらのせいだったのか)
そう思えば、驚きもするし腹も立った。
それでも、泰弘に名前を呼ばれた事の方が気になり過ぎた俺の反応は、泰弘が思っていたよりも鈍かったのだろう。
「あのなぁ、お前どんだけヤバかったか分かってるのか。こんなんだから、俺はお仕置きだってしたくなるんだぞ」
泰弘の声がまた少し怒ったように低くなる。
「ヤバかったのはちゃんと分かってる、分かってるんだけど、でもなんで? お前こそなんで俺だって分かっていて触っていたんだ?」
その理由が俺には気になった。
「お仕置き……? 遊びじゃないのか?」
お前に触れたくて、触られたかった俺と違って、お仕置きだとしても、お前が俺に触れる意味なんて無いはずだ。
「はあ?」
「俺、これが泰弘の遊び方なんだって思って……でも俺、上手くできなかっただろ……だから、もう要らないんだろうなって思ってた……」
泰弘が俺に触れる理由なんて無いはずなのだ。だから赤の他人との一晩限りの遊びとして俺に触れているものだと思っていたのに。
「……ちゃんとした言葉がないまま始めたのは悪かったけど」
俺を掴む泰弘の手に力が篭もっていく。こんな目も声も今まで向けられた事なんかなかった。さっきの比に成らないぐらい向けられた感情は、怒りに満ちたものだった。
(俺はまた何か地雷を踏んだらしい……)
俺は泰弘のそんな状態に引き攣っていく。
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