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第21話 答えを教えて
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「……分かん、ないよ…どうしたら、良い……どうしたら、喜んで、くれるの……」
和真を喜ばせたいという思いに反して、選ぶ答えが全て間違ってしまっているのなら。誰か正解を教えて欲しい。
力なく項垂れたまま和真のズボンを握り締める。
そんな亜樹の頭上から、また溜息が一つ聞こえてきた。
「自分のペットが他の男に媚を売った方法で奉仕されて、俺が喜ぶとでもお前は思うのか」
「俺そんなつもりじゃ──」
思わず顔を上げた勢いのまま、否定しようとした亜樹の言葉が和真の声に防がれた。
「それならお前は、やりながら何を考えていた」
「……ただ、和真に…気持ち良くなって、欲しくて……」
「それで」
だから何だ、と吐き捨てるような和真の言葉に、身体が竦む。
伝えた気持ちは嘘じゃない。だけど行為の最中に客の反応を思い浮かべ続けていたのも、また本当の事だった。
「……ごめん」
和真の鋭い目がそんな亜樹を見つめていた。情けなさが心を占めて、亜樹が唇を強く噛む。
「噛むな、傷が付く」
それでもまた、噛み締めた唇をほどく動きに荒々しさは少しもなかった。傷の有無を確認する指先のそっと触れる感触も、やっぱりどことなく優しくて。
ひとしきり確認した指の温もりが、離れていくのがどうしても切なかった。
和真の一つ一つの仕草や言葉に、簡単に心は揺れて傷付いてしまう。
これから支えになるはずだったスケッチブックの思い出さえ、自分のものではなかった以上、縋れるものは直に感じるこの体温だけだから。消えていった温かさを、どうしても心が追いかけてしまっていた。
「そもそも、ペットと楽しむ以前に」
不自然に切られた言葉に亜樹がコクリと唾を飲み込んだ。
「簡単に他にシッポを振って媚を売るペットには、躾が必要なのかもな」
それはどんな行為なんだろう。
「どう思う?」
選択肢など無いはずなのに、冷笑を口元に浮かべた和真が答えを求めてくる。
苦しい事も恥ずかしい事も、今までだっていっぱいあった。和真が言う躾となれば、それ以上の事をされるんだろうか。だけど。
「…わか、った……」
例えどんなに苦しくて、恥ずかしくて。もしかしたら痛みを伴うものだったとしても、和真がこの身体に触れてくれるならそれで良かった。
「分かった?」
短く繰り返された言葉に、それだけで意図が伝わってくる。途端に増してくる居たたまれなさに、思わず逸らそうとした顔を和真の指に捉えられた。
「亜樹、言葉は正確に使え」
和真がククッと喉で低く笑っていた。
「……して、くだ…さい……」
心がまた締め付けられるように痛んでいた。それが羞恥と不安によるものなのか。それとも嘲るような和真の笑みのせいなのか分からないまま息を詰める。
目の奥に痺れるような熱を感じて、亜樹が何度か瞬いた。だが、その眦が濡れる事はやっぱりなかった。
「とりあえず、寝室で服を脱いで待ってろ」
和真が立ち上がり浴室へと歩きだす。その後ろ姿を見送った亜樹もまた、のろのろと立ち上がり寝室へと足を進めた。
和真を喜ばせたいという思いに反して、選ぶ答えが全て間違ってしまっているのなら。誰か正解を教えて欲しい。
力なく項垂れたまま和真のズボンを握り締める。
そんな亜樹の頭上から、また溜息が一つ聞こえてきた。
「自分のペットが他の男に媚を売った方法で奉仕されて、俺が喜ぶとでもお前は思うのか」
「俺そんなつもりじゃ──」
思わず顔を上げた勢いのまま、否定しようとした亜樹の言葉が和真の声に防がれた。
「それならお前は、やりながら何を考えていた」
「……ただ、和真に…気持ち良くなって、欲しくて……」
「それで」
だから何だ、と吐き捨てるような和真の言葉に、身体が竦む。
伝えた気持ちは嘘じゃない。だけど行為の最中に客の反応を思い浮かべ続けていたのも、また本当の事だった。
「……ごめん」
和真の鋭い目がそんな亜樹を見つめていた。情けなさが心を占めて、亜樹が唇を強く噛む。
「噛むな、傷が付く」
それでもまた、噛み締めた唇をほどく動きに荒々しさは少しもなかった。傷の有無を確認する指先のそっと触れる感触も、やっぱりどことなく優しくて。
ひとしきり確認した指の温もりが、離れていくのがどうしても切なかった。
和真の一つ一つの仕草や言葉に、簡単に心は揺れて傷付いてしまう。
これから支えになるはずだったスケッチブックの思い出さえ、自分のものではなかった以上、縋れるものは直に感じるこの体温だけだから。消えていった温かさを、どうしても心が追いかけてしまっていた。
「そもそも、ペットと楽しむ以前に」
不自然に切られた言葉に亜樹がコクリと唾を飲み込んだ。
「簡単に他にシッポを振って媚を売るペットには、躾が必要なのかもな」
それはどんな行為なんだろう。
「どう思う?」
選択肢など無いはずなのに、冷笑を口元に浮かべた和真が答えを求めてくる。
苦しい事も恥ずかしい事も、今までだっていっぱいあった。和真が言う躾となれば、それ以上の事をされるんだろうか。だけど。
「…わか、った……」
例えどんなに苦しくて、恥ずかしくて。もしかしたら痛みを伴うものだったとしても、和真がこの身体に触れてくれるならそれで良かった。
「分かった?」
短く繰り返された言葉に、それだけで意図が伝わってくる。途端に増してくる居たたまれなさに、思わず逸らそうとした顔を和真の指に捉えられた。
「亜樹、言葉は正確に使え」
和真がククッと喉で低く笑っていた。
「……して、くだ…さい……」
心がまた締め付けられるように痛んでいた。それが羞恥と不安によるものなのか。それとも嘲るような和真の笑みのせいなのか分からないまま息を詰める。
目の奥に痺れるような熱を感じて、亜樹が何度か瞬いた。だが、その眦が濡れる事はやっぱりなかった。
「とりあえず、寝室で服を脱いで待ってろ」
和真が立ち上がり浴室へと歩きだす。その後ろ姿を見送った亜樹もまた、のろのろと立ち上がり寝室へと足を進めた。
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