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天網恢恢
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小平は、死んだ美奈子をそのままにして部屋を後にした。隠れ住んでいる女に尋ねてくる者などいないだろう。今は冬、腐敗すれば見つけられるかもしれないが、それが進むには相当時間がかかる。それに自分とこの女との接点なんか何もない。
この安アパートの前面道路は狭く、車の乗り入れなどできないし、大きなスーツケースを用意して運ぶこともできるがそれでは却って目立ってしまう。それならば放置する方が得策と踏んだのだ。
しかし、小平の予想に反して、美奈子は死亡からたった3日で発見される。志伸を手放した後、美奈子はDV夫から逃げている早希と知り合い、彼女の3歳になる真昼を時々預かっていて、ちょうどその日が約束の日だったのだ。
早希は全裸で変わり果てた姿になった美奈子を見た時、自分の目に映っているものを信じることができなかったが、ただ真昼に見せてはいけないという意識だけは働いて、慌てて真昼の頭を自分の身体に押しつけて、アパートのドアを閉めると、転がるように交番へ走って行った。
駆けつけた警察は現場の状況と箪笥の引き出しが数カ所開けられていたことから、暴行と金銭目的両面で捜査を開始した。
そして、事件後美奈子の持つ複数の口座から次々と現金が引き出されていることが分かった。その数、なんと17行。警察は複数の銀行で引き出されていた時刻に防犯カメラに映っていた男、小平保を任意同行し、家宅捜索の結果、小平の部屋で美奈子の通帳とキャッシュカードを見つけ、逮捕した。
その後、美奈子の部屋から発見された彼女の手記により、小平が中西康博殺害にも関与していた可能性が浮上し、急遽DNA検査の結果、それも追起訴されることとなった。
小平は刑務所で17年の年月を過ごした。そして、やっと刑期を終えて娑婆に出てきたとき、彼の依り代である組は暴対法の強化により解散に追い込まれ、影も形もなくなっていた。
冷え切った景気はこの世間から隔絶されていた男に優しいはずもなく、小平は日銭を稼いでそれを全てアルコールに換える日々を送るようになり、ついにはアルコール依存症を発症し、それによる肝硬変でその生涯を閉じた。
晩年彼は、自分の殺した者たちの幻覚に苛まれ怯えながら暮らしたという。それは、非道を尽くした彼にも、それなりの良心はあったという事なのだろうか。
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
「そんな訳で、志乃は成瀬さんの娘ではないんです」
わざわざご足労かけましてと言う喜美子に、
「いや、それは解ってたんですが……」
と、光一は歯切れ悪く答えた。
「知っとったって、ほたら何で……」
「年甲斐もなく、お嬢さんを戴きに……」
首を傾げる喜美子たちに、今日の本来の目的を口にしようとした光一の言葉尻を、
「わ、儂は許さんぞ!」
雅之は慌ててそう被せて遮った。
この安アパートの前面道路は狭く、車の乗り入れなどできないし、大きなスーツケースを用意して運ぶこともできるがそれでは却って目立ってしまう。それならば放置する方が得策と踏んだのだ。
しかし、小平の予想に反して、美奈子は死亡からたった3日で発見される。志伸を手放した後、美奈子はDV夫から逃げている早希と知り合い、彼女の3歳になる真昼を時々預かっていて、ちょうどその日が約束の日だったのだ。
早希は全裸で変わり果てた姿になった美奈子を見た時、自分の目に映っているものを信じることができなかったが、ただ真昼に見せてはいけないという意識だけは働いて、慌てて真昼の頭を自分の身体に押しつけて、アパートのドアを閉めると、転がるように交番へ走って行った。
駆けつけた警察は現場の状況と箪笥の引き出しが数カ所開けられていたことから、暴行と金銭目的両面で捜査を開始した。
そして、事件後美奈子の持つ複数の口座から次々と現金が引き出されていることが分かった。その数、なんと17行。警察は複数の銀行で引き出されていた時刻に防犯カメラに映っていた男、小平保を任意同行し、家宅捜索の結果、小平の部屋で美奈子の通帳とキャッシュカードを見つけ、逮捕した。
その後、美奈子の部屋から発見された彼女の手記により、小平が中西康博殺害にも関与していた可能性が浮上し、急遽DNA検査の結果、それも追起訴されることとなった。
小平は刑務所で17年の年月を過ごした。そして、やっと刑期を終えて娑婆に出てきたとき、彼の依り代である組は暴対法の強化により解散に追い込まれ、影も形もなくなっていた。
冷え切った景気はこの世間から隔絶されていた男に優しいはずもなく、小平は日銭を稼いでそれを全てアルコールに換える日々を送るようになり、ついにはアルコール依存症を発症し、それによる肝硬変でその生涯を閉じた。
晩年彼は、自分の殺した者たちの幻覚に苛まれ怯えながら暮らしたという。それは、非道を尽くした彼にも、それなりの良心はあったという事なのだろうか。
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「そんな訳で、志乃は成瀬さんの娘ではないんです」
わざわざご足労かけましてと言う喜美子に、
「いや、それは解ってたんですが……」
と、光一は歯切れ悪く答えた。
「知っとったって、ほたら何で……」
「年甲斐もなく、お嬢さんを戴きに……」
首を傾げる喜美子たちに、今日の本来の目的を口にしようとした光一の言葉尻を、
「わ、儂は許さんぞ!」
雅之は慌ててそう被せて遮った。
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