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ゲームスタート
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健史は自分の荷物や靴と共に風呂場に身を潜めた。ここは、弱冠25歳の独身男が住むには少々広ぎる3LDKだが、この部屋に龍太郎が住み始めたのは高校卒業時、およそ7年前になる。そして、その最初の時からほぼ毎週通い詰めていた恋人夏海にとっては、住んではいないが勝手知ったる空間なのである。最近の龍太郎の生活を心配して、今日の最初の舞台であるリビングダイニング以外にもひょっこりと顔を出さないという保証はどこにもない。大体、女というものは妙なところでカンが働く。いつもと違う動きをされてはかなわない。
やがて、インターフォンの呼び出しと共に、夏海と龍太郎の声が聞こえる。(ゲームスタートだ)健史は空の浴槽で息を殺す。折角ここまできたのだ。ここで頓挫する訳には絶対にいかない。彼女の性格を考えれば、『合意』の上での『二度目』はないだろう。
しばらくすると、夏海の叫び声と、椅子が床を擦る音が聞こえた。その声や音が納まった後、健史は徐に浴室を出ると、寝室に向かった。龍太郎は首尾良く眠らせた夏海の服を脱がせるのに奔走中だ。女性とはいえ、眠った大の大人の服を一人で脱がせるのは大変だ。だが、
「手伝うよ」
と言った健史に、龍太郎は
「いいよ、僕一人で大丈夫」
とぶっきらぼうに言いつつ、夏海の既に幾分露わになった身体を自身で覆い隠す。
「どうせ、ヤる時にはバッチリ見るし触るんだぜ」
触るどころではない、今日はそれ以上のことをしに来ているのだ。
「でも……」
健史がそう言ってもなお、龍太郎の表情は硬い。夏海は龍太郎にとって、悪魔に魂を売ってでもつなぎ止めたい相手なのだ。試しに、
「じゃぁ、手を退こうか?」
と健史が言うと、
「そ、それは……」
案の定、龍太郎はなんとも困ったような表情をして見せた。(これが最上の策だと、思いこませたからな。ま、こいつは倉本の事になると昔から全然余裕がなかったけどな)
「倉本はお前のもんだ。間違っても盗ったりしねぇよ」
健史がそれに笑ってそう返すと、龍太郎はようやく一歩下がって協力を要請した。その様子を見ながら健史は(間違っても俺はお前の大事な花になんか手を出しゃしねぇよ。そう、俺が本当に欲しいのは……)と心の中で独りごちる。
健史は全裸になった夏海を諸手をあげた状態でベッドに寝かせ、その左右に別々の手錠を填め、もう一方をこの計画のために龍太郎に用意させた病院でも使用されているベッドの上部の柵に填めた。一度の事なのだからチープなパイプベッドでも良かったのだろうが、組み立て式は今一つ柵の強度が心配だし、巨大企業御曹司の龍太郎なら、このベッドを使い捨てるくらいの端金は屁でもない。
そして、健史は徐にベッドサイドからアイマスクを取って、夏海に目隠しを施した。愛する男が目の前で『自分を裏切る行為』をするのをまざまざと見せないための、せめてもの温情とでも言えばいいだろうか。目に焼き付いてしまえば、繰り返し思い出してしまうに違いない。ま、情報が遮断されることによって、さらに不安を煽り、交感神経を高ぶらせるのも目的の一つではある。
ふと、見ると全ての準備を終えた龍太郎は、夏海がいつ起きても良いように自身も服を脱ぎ始めている。彼の小柄だが引き締まった肉体を見て、健史は思わず目を背けた。
「じゃぁ、あっちで待機してるから、起きたところで合図をくれ。
それから、何か掛けてやれよ。温度管理はしてあるが、寝たままじゃ冷える」
健史はそう言うと、そわそわと寝室を後にした。
やがて、インターフォンの呼び出しと共に、夏海と龍太郎の声が聞こえる。(ゲームスタートだ)健史は空の浴槽で息を殺す。折角ここまできたのだ。ここで頓挫する訳には絶対にいかない。彼女の性格を考えれば、『合意』の上での『二度目』はないだろう。
しばらくすると、夏海の叫び声と、椅子が床を擦る音が聞こえた。その声や音が納まった後、健史は徐に浴室を出ると、寝室に向かった。龍太郎は首尾良く眠らせた夏海の服を脱がせるのに奔走中だ。女性とはいえ、眠った大の大人の服を一人で脱がせるのは大変だ。だが、
「手伝うよ」
と言った健史に、龍太郎は
「いいよ、僕一人で大丈夫」
とぶっきらぼうに言いつつ、夏海の既に幾分露わになった身体を自身で覆い隠す。
「どうせ、ヤる時にはバッチリ見るし触るんだぜ」
触るどころではない、今日はそれ以上のことをしに来ているのだ。
「でも……」
健史がそう言ってもなお、龍太郎の表情は硬い。夏海は龍太郎にとって、悪魔に魂を売ってでもつなぎ止めたい相手なのだ。試しに、
「じゃぁ、手を退こうか?」
と健史が言うと、
「そ、それは……」
案の定、龍太郎はなんとも困ったような表情をして見せた。(これが最上の策だと、思いこませたからな。ま、こいつは倉本の事になると昔から全然余裕がなかったけどな)
「倉本はお前のもんだ。間違っても盗ったりしねぇよ」
健史がそれに笑ってそう返すと、龍太郎はようやく一歩下がって協力を要請した。その様子を見ながら健史は(間違っても俺はお前の大事な花になんか手を出しゃしねぇよ。そう、俺が本当に欲しいのは……)と心の中で独りごちる。
健史は全裸になった夏海を諸手をあげた状態でベッドに寝かせ、その左右に別々の手錠を填め、もう一方をこの計画のために龍太郎に用意させた病院でも使用されているベッドの上部の柵に填めた。一度の事なのだからチープなパイプベッドでも良かったのだろうが、組み立て式は今一つ柵の強度が心配だし、巨大企業御曹司の龍太郎なら、このベッドを使い捨てるくらいの端金は屁でもない。
そして、健史は徐にベッドサイドからアイマスクを取って、夏海に目隠しを施した。愛する男が目の前で『自分を裏切る行為』をするのをまざまざと見せないための、せめてもの温情とでも言えばいいだろうか。目に焼き付いてしまえば、繰り返し思い出してしまうに違いない。ま、情報が遮断されることによって、さらに不安を煽り、交感神経を高ぶらせるのも目的の一つではある。
ふと、見ると全ての準備を終えた龍太郎は、夏海がいつ起きても良いように自身も服を脱ぎ始めている。彼の小柄だが引き締まった肉体を見て、健史は思わず目を背けた。
「じゃぁ、あっちで待機してるから、起きたところで合図をくれ。
それから、何か掛けてやれよ。温度管理はしてあるが、寝たままじゃ冷える」
健史はそう言うと、そわそわと寝室を後にした。
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