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隼人のヤキモチ
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健史と隼人、互いに告白し会ったもののしばらくは清い交際のままだった。
折角思い合えたのだ、健史にもつながりたいという欲求が生まれていたが、その際、『入れる』のか『入れさせる』のかで悩んでいた。隼人の意向を聞いて決めればいいのだろうが、隼人はキスはするもののそれ以上求めてはこない。自分と一緒にいる、それだけで充分幸せそうに笑う隼人。その笑顔を見ていると、変に押し倒せばそれを壊してしまいそうな気もするのだ。ちらっと告白の時の激しいキスが頭を掠めるが、ああしたことはあれっきりで隼人は相変わらず天真爛漫なお子ちゃまだ。(それだけ俺を得るのに必死だったってことか)健史はそう考えると嬉しくもあった。
その内就活が始まり、健史はYUUKIを受け、見事内定を取り付けた。
だが、そのことを報告したとき、隼人は内定を喜ぶどころかあからさまに嫌悪を示した。
「ねぇ、そこって先輩の初恋の人の会社なんでしょ」
隼人はふくれっ面でそう言った。あれ? こいつに龍太郎のこと話したっけなと思いつつ、健史は肯く。
「僕、行ってほしくないな」
そう続けた隼人に、(なんだ、ヤキモチ焼いてるのか)とホッと胸をなで下ろし、そのかわいい反応に、健史の顔が思わずにやける。
「なんだ隼人、俺を龍太郎に取られるとでも思ってんのか?
あいつはノンケだし、そうじゃなくてもちゃんといるから。それにさ、あいつとその彼女の橋渡ししたの、この俺だぜ。あいつ、倉本のことになると、余裕も自信もなんもなくなる」
ま、そこをイジるのがまた面白いんだけどなと、健史は笑いながらそう付け加えた。だが、それを聞いても隼人の表情は硬い。
「分かりませんよ、夫婦だって別れることもあるでしょ」
口を尖らせ、そう訴える隼人に、
「そりゃそうだけどさ、あいつらはないよ。高校時代からクラスメートにも夫婦扱いされてたぐらいだからな。だから余計な心配はするな。
それにな、俺が就職するのは龍太郎の会社じゃない。たまたま社長があいつの親父だってだけだ。龍太郎ももちろん入社してくるが、デカい会社だ、あいつとは顔も会わさないだろうよ」
健史はそう言って頭を撫でながら隼人を宥めた。
しかし、入社そうそう健史は秘書課に配属された。健史は龍太郎の知己というのはもちろん、試験の結果はその年のエントリー中の最高点。それを上層部が見逃すわけがなく、彼らは人見知りの激しい次期社長のブレーンとして教育することを満場一致で決めたのだ。だから、入社当初の研修期間を終えると、健史は日を追うごとに龍太郎と行動することが多くなっていった。
入社後しばらくするとすると隼人は、
「最近先輩は、結城さんの話ばかりする」
と文句を言うようになった。自分ではそう話しているつもりはないのだが、合間合間のちょっとした雑談など、ついつい口にだしてしまっているようだ。
(そんなこと言ってもなぁ、こっちは仕事だしな)
と健史は軽く考えていた。
「もう、僕の前では結城さんの話しないで!」
そんなある日、久しぶりに隼人のマンションに行った健史はそう言って彼にキレられた。
「この頃全然会えてないんだよ。それなのに、先輩ってば、他の男の人の話ばっか……」
隼人は耳を塞ぎながらそう言って首を振る。
秘書という仕事柄、ごく普通のサラリーマンのように定時に帰れるということはまずない。しかも、主のイベント参加など、休日出勤など日常茶飯事だ。ただ、その分一年目とは言えないような破格の給与をもらっていて、健史は今、母と暮らした安アパートを出て、会社にほど近い場所にマンションを借りることができているのだ。
「そりゃ、仕事だからしょうがないだろ」
健史がそう窘めても、
「仕事、仕事って言えば、何でも許されると思ってるでしょ」
と、譲らない隼人。まるで、新婚の嫁みたいだ。まぁ、そういうとこがかわいいんだがなと思う健史の瞼がだんだん重くなる。隼人が用意してくれた水割りのグラスがぼやける。顔を2~3ど振った健史は、
「いけね、最近飲まなくなったからやけに回りが早いわ……」
と言うと、机に突っ伏して眠ってしまった。
「そうですよ、仕事のしすぎなんです。恋人より仕事なんてあり得ない。お仕置き……そう、あなたにはお仕置きが必要です」
眠ってしまった健史には、そう言って薄く口角を上げる隼人の声は届かなかった。
折角思い合えたのだ、健史にもつながりたいという欲求が生まれていたが、その際、『入れる』のか『入れさせる』のかで悩んでいた。隼人の意向を聞いて決めればいいのだろうが、隼人はキスはするもののそれ以上求めてはこない。自分と一緒にいる、それだけで充分幸せそうに笑う隼人。その笑顔を見ていると、変に押し倒せばそれを壊してしまいそうな気もするのだ。ちらっと告白の時の激しいキスが頭を掠めるが、ああしたことはあれっきりで隼人は相変わらず天真爛漫なお子ちゃまだ。(それだけ俺を得るのに必死だったってことか)健史はそう考えると嬉しくもあった。
その内就活が始まり、健史はYUUKIを受け、見事内定を取り付けた。
だが、そのことを報告したとき、隼人は内定を喜ぶどころかあからさまに嫌悪を示した。
「ねぇ、そこって先輩の初恋の人の会社なんでしょ」
隼人はふくれっ面でそう言った。あれ? こいつに龍太郎のこと話したっけなと思いつつ、健史は肯く。
「僕、行ってほしくないな」
そう続けた隼人に、(なんだ、ヤキモチ焼いてるのか)とホッと胸をなで下ろし、そのかわいい反応に、健史の顔が思わずにやける。
「なんだ隼人、俺を龍太郎に取られるとでも思ってんのか?
あいつはノンケだし、そうじゃなくてもちゃんといるから。それにさ、あいつとその彼女の橋渡ししたの、この俺だぜ。あいつ、倉本のことになると、余裕も自信もなんもなくなる」
ま、そこをイジるのがまた面白いんだけどなと、健史は笑いながらそう付け加えた。だが、それを聞いても隼人の表情は硬い。
「分かりませんよ、夫婦だって別れることもあるでしょ」
口を尖らせ、そう訴える隼人に、
「そりゃそうだけどさ、あいつらはないよ。高校時代からクラスメートにも夫婦扱いされてたぐらいだからな。だから余計な心配はするな。
それにな、俺が就職するのは龍太郎の会社じゃない。たまたま社長があいつの親父だってだけだ。龍太郎ももちろん入社してくるが、デカい会社だ、あいつとは顔も会わさないだろうよ」
健史はそう言って頭を撫でながら隼人を宥めた。
しかし、入社そうそう健史は秘書課に配属された。健史は龍太郎の知己というのはもちろん、試験の結果はその年のエントリー中の最高点。それを上層部が見逃すわけがなく、彼らは人見知りの激しい次期社長のブレーンとして教育することを満場一致で決めたのだ。だから、入社当初の研修期間を終えると、健史は日を追うごとに龍太郎と行動することが多くなっていった。
入社後しばらくするとすると隼人は、
「最近先輩は、結城さんの話ばかりする」
と文句を言うようになった。自分ではそう話しているつもりはないのだが、合間合間のちょっとした雑談など、ついつい口にだしてしまっているようだ。
(そんなこと言ってもなぁ、こっちは仕事だしな)
と健史は軽く考えていた。
「もう、僕の前では結城さんの話しないで!」
そんなある日、久しぶりに隼人のマンションに行った健史はそう言って彼にキレられた。
「この頃全然会えてないんだよ。それなのに、先輩ってば、他の男の人の話ばっか……」
隼人は耳を塞ぎながらそう言って首を振る。
秘書という仕事柄、ごく普通のサラリーマンのように定時に帰れるということはまずない。しかも、主のイベント参加など、休日出勤など日常茶飯事だ。ただ、その分一年目とは言えないような破格の給与をもらっていて、健史は今、母と暮らした安アパートを出て、会社にほど近い場所にマンションを借りることができているのだ。
「そりゃ、仕事だからしょうがないだろ」
健史がそう窘めても、
「仕事、仕事って言えば、何でも許されると思ってるでしょ」
と、譲らない隼人。まるで、新婚の嫁みたいだ。まぁ、そういうとこがかわいいんだがなと思う健史の瞼がだんだん重くなる。隼人が用意してくれた水割りのグラスがぼやける。顔を2~3ど振った健史は、
「いけね、最近飲まなくなったからやけに回りが早いわ……」
と言うと、机に突っ伏して眠ってしまった。
「そうですよ、仕事のしすぎなんです。恋人より仕事なんてあり得ない。お仕置き……そう、あなたにはお仕置きが必要です」
眠ってしまった健史には、そう言って薄く口角を上げる隼人の声は届かなかった。
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