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契約成立
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「おいおい、肝心のお前がそんなじゃ、どうにもなんねぇぞ」
おまえが好きだと頬を撫でられて、怯えきっている龍太郎に、健史はそう言って彼との間合いをまた詰めた。
「僕、男だよ」
そう言ってあたふたする龍太郎に、
「そんなもん言われなくてもわかってるぜ。
ビビるなよ。それに大体俺は『受け』の方だからな。安心しろ、取って食ったりしないさ」
健史は、くすくすと笑ってそう言った。ノンケの彼には『受け』などと言っても意味がいまいちわからないかもしれないが、何となく雰囲気で伝わってはいるだろう。
それでもまだ硬い表情の龍太郎に、
「まだ、納得いかないって顔だな。何で俺が協力するかって? 復讐……って言えばいいか」
健史はいきなり復讐を口にする。
「復讐……」
だが、復讐と聞いて、さらに蒼くなる龍太郎に、
「誤解しないでくれよ。当然おまえらは復讐の相手じゃねぇ。親? ばーさんだっけか、に一泡吹かせたいだけだ」
健史は手をヒラヒラさせながらそう返した。
「健史、それどういうこと?」
龍太郎は、いきなり自分の祖母に復讐すると聞いて首を傾げる。たしか、二人に面識はなかったはずだと。首を傾げた龍太郎に健史はさらに間合いを詰めて、
「今まで俺は父親を知らないって言ってきたよな。実はあれはウソだ。なぜかってっと、それは俺の父親があの諏訪正治(すわまさはる)だからだ」
と言った。
「諏訪……正治って、まさか」
そして、聞き覚えのある名を聞いて、目を見開いた龍太郎に、
「そう、そのまさか。マスコミにもちょこちょこ顔を出す現与党、誠実党の衆議院議員だよ」
健史はこともなげにそう返す。
「その諏訪の父親-俺にとってはジジイだが-親父とお袋との仲を由としなかったんだ。
ジジイはお袋に端金を握らせて、おやじの前から姿を消えるように言いやがった」
「な、何でそんなこと」
そして、驚いてそう訪ねる龍太郎に、
「お袋が在日外国人だったからだよ。これも言ってなかったよな。俺はホントは梁原健史(やなはらたけし)じゃない、梁健史(ヤン・ケンジ)が本名だ。梁原健史は所謂通称名ってヤツだ。
まぁ、それだけじゃなく、ジジイには同じ派閥の議員の娘と縁づけるって思惑もあったらしいがな。
もちろんお袋は金など要らないと言ったよ。それでもしつこく押しつけるジジイの使いに、金をたたき返して自分から姿を消したんだ。
お袋自身、親父が政治家に向いてると思ったから、自分がその足枷になると思ったみだいだ。
そのあと、俺の妊娠に気づいた。お袋は迷わず生むことにした。
だけど、名も明かせぬ日本人の子を生むと言ったお袋は、梁の家からも勘当された。それでもお袋はたった一人で歯を食いしばって働いて働いて俺を育てた。だから、あんなに早くおっ死ぬ事になったんだ。
俺に言わせりゃ、お袋は両方の親たちに殺されたようなもんなんだよ」
健史は自らの出生を吐き捨てるように言う。
「健史……」
「だから家柄とか、格式とか、んなことを言われると虫酸が走る。
俺は諏訪健史として生きたいなんてこれっぽっちも思ったことはない。寧ろこっちからお断りだ。
でもな、権力や家柄なんてバカバカしいもんで人生を狂わされんのは、俺たち母子だけでたくさんなんだよ。愛し合ってるおまえらになんで別れなきゃならない理由がある。
だから、こっちからお願いする。俺に、お前たちの手伝いをさせてくれ」
そう言って手を差し出した健史に、龍太郎は戸惑いながらもその手を取った。契約成立である。
そして、二人は龍太郎が覚えていた夏海の生理周期を基に計画の実行日を割り出し、この計画を実行したのだった。
おまえが好きだと頬を撫でられて、怯えきっている龍太郎に、健史はそう言って彼との間合いをまた詰めた。
「僕、男だよ」
そう言ってあたふたする龍太郎に、
「そんなもん言われなくてもわかってるぜ。
ビビるなよ。それに大体俺は『受け』の方だからな。安心しろ、取って食ったりしないさ」
健史は、くすくすと笑ってそう言った。ノンケの彼には『受け』などと言っても意味がいまいちわからないかもしれないが、何となく雰囲気で伝わってはいるだろう。
それでもまだ硬い表情の龍太郎に、
「まだ、納得いかないって顔だな。何で俺が協力するかって? 復讐……って言えばいいか」
健史はいきなり復讐を口にする。
「復讐……」
だが、復讐と聞いて、さらに蒼くなる龍太郎に、
「誤解しないでくれよ。当然おまえらは復讐の相手じゃねぇ。親? ばーさんだっけか、に一泡吹かせたいだけだ」
健史は手をヒラヒラさせながらそう返した。
「健史、それどういうこと?」
龍太郎は、いきなり自分の祖母に復讐すると聞いて首を傾げる。たしか、二人に面識はなかったはずだと。首を傾げた龍太郎に健史はさらに間合いを詰めて、
「今まで俺は父親を知らないって言ってきたよな。実はあれはウソだ。なぜかってっと、それは俺の父親があの諏訪正治(すわまさはる)だからだ」
と言った。
「諏訪……正治って、まさか」
そして、聞き覚えのある名を聞いて、目を見開いた龍太郎に、
「そう、そのまさか。マスコミにもちょこちょこ顔を出す現与党、誠実党の衆議院議員だよ」
健史はこともなげにそう返す。
「その諏訪の父親-俺にとってはジジイだが-親父とお袋との仲を由としなかったんだ。
ジジイはお袋に端金を握らせて、おやじの前から姿を消えるように言いやがった」
「な、何でそんなこと」
そして、驚いてそう訪ねる龍太郎に、
「お袋が在日外国人だったからだよ。これも言ってなかったよな。俺はホントは梁原健史(やなはらたけし)じゃない、梁健史(ヤン・ケンジ)が本名だ。梁原健史は所謂通称名ってヤツだ。
まぁ、それだけじゃなく、ジジイには同じ派閥の議員の娘と縁づけるって思惑もあったらしいがな。
もちろんお袋は金など要らないと言ったよ。それでもしつこく押しつけるジジイの使いに、金をたたき返して自分から姿を消したんだ。
お袋自身、親父が政治家に向いてると思ったから、自分がその足枷になると思ったみだいだ。
そのあと、俺の妊娠に気づいた。お袋は迷わず生むことにした。
だけど、名も明かせぬ日本人の子を生むと言ったお袋は、梁の家からも勘当された。それでもお袋はたった一人で歯を食いしばって働いて働いて俺を育てた。だから、あんなに早くおっ死ぬ事になったんだ。
俺に言わせりゃ、お袋は両方の親たちに殺されたようなもんなんだよ」
健史は自らの出生を吐き捨てるように言う。
「健史……」
「だから家柄とか、格式とか、んなことを言われると虫酸が走る。
俺は諏訪健史として生きたいなんてこれっぽっちも思ったことはない。寧ろこっちからお断りだ。
でもな、権力や家柄なんてバカバカしいもんで人生を狂わされんのは、俺たち母子だけでたくさんなんだよ。愛し合ってるおまえらになんで別れなきゃならない理由がある。
だから、こっちからお願いする。俺に、お前たちの手伝いをさせてくれ」
そう言って手を差し出した健史に、龍太郎は戸惑いながらもその手を取った。契約成立である。
そして、二人は龍太郎が覚えていた夏海の生理周期を基に計画の実行日を割り出し、この計画を実行したのだった。
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