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10年前
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夫修司の浮気相手の名前は戸森千夏。かつての会社の同僚だった。
かく言う加奈子も、結婚前はその会社に勤めていて、熱血教師のような社長の下、和気藹々と仕事をしていた。
そして、加奈子は修司と結婚。同時に会社を辞めて専業主婦となった。
千夏は加奈子が第二子|瞳(まなこ)を生んだ次の年に入社してきた。最初は修司と同じ部署の小久保直哉と付き合っていたらしい。
実はこの直哉は、彼ら夫婦の結婚の立役者でもあった。
修司は入社したての加奈子になかなか声をかけられずにいた。そこで、加奈子の部署にいた八木大和、現在は八木の妻となった山口樹里などが飲み会やカラオケなどをお膳立てして、彼らの結婚の後押しをしたのだ。
直哉には離婚歴があった。しかし、大学時代に一年あまりの結婚生活で、入社したときにはすでに独り身だったので、同僚の誰も彼がかつて妻帯者であったことを知るものはなかったし、彼自身も本気で千夏と再婚するつもりだったようだ。
だが、大和が樹里と結婚し、長女を儲けたときから少しずつ、その直哉の気持ちが揺らぎ始める。
実は、大和は通常よりはずっと精子の数が少なく、おそらく子供には恵まれないだろうと医者から言われていた。だが、彼らは養子をとるということは考えず、一生二人で過ごす覚悟だったという。
しかし、結婚から一年半、突然倒れた妻の許に駆けつけた大和は、彼女の妊娠の事実を知らされた。最初は信じることすらできなかった。そして、ちょうどその場にいた直哉のことを疑ったほどだ。
それを同室の女性に懇々と説教され、ようやく父親になれると実感した時、大和はまるで赤子のように泣きながら、我が子を身ごもってくれた樹里を抱きしめた。その姿に、簡単に結婚生活を崩壊させた直哉は胸を刺されたのである。
そして、それからの大和のいささか過保護すぎるほどの嫁への態度、親バカを全開する姿に、直哉は若かったとは言え、結婚生活での自分の配慮が足りなかったことを何度も思わされた。何より、直哉は簡単に息子を手放してしまったことを悔いた。それで、直哉はたびたびかつての妻に連絡するようになった。
結果、直哉はかつての妻とよりを戻した。そして修司は直哉と別れて今にも消え入りそうになっている千夏を最初は上司として慰めていたのだが、その内彼らは超えてはならない一線を越えてしまう。
正直なところ、その当時修司と加奈子に夜の営みはなかった。それは修司が肥大してしまった妻に愛想を尽かしていたのではない。加奈子が修司から逃げていたのだ。
加奈子は修司の愛撫にいつしか感じられなくなっていた。急激に肥満したことがそうなのか、二度の出産で緩んでしまったその秘所は、ほとんど手を施さずとも修司の男性自身を受け入れるので、修司が加奈子をまず楽しませることをおざなりにしていたからなのか、あるいは子供の父母として互いを見るようになり、男として見られなくなっていたからなのか――おそらくそれらの要素が少しずつ合わって加奈子は、自分が不感症だと信じるに至った。楽しめないセックスなど、苦痛以外の何物でもない。かくして、加奈子は夫からの営みの誘いを二人の子供の育児に託けてはぐらかし続けていたのだ。
かく言う加奈子も、結婚前はその会社に勤めていて、熱血教師のような社長の下、和気藹々と仕事をしていた。
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実は、大和は通常よりはずっと精子の数が少なく、おそらく子供には恵まれないだろうと医者から言われていた。だが、彼らは養子をとるということは考えず、一生二人で過ごす覚悟だったという。
しかし、結婚から一年半、突然倒れた妻の許に駆けつけた大和は、彼女の妊娠の事実を知らされた。最初は信じることすらできなかった。そして、ちょうどその場にいた直哉のことを疑ったほどだ。
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そして、それからの大和のいささか過保護すぎるほどの嫁への態度、親バカを全開する姿に、直哉は若かったとは言え、結婚生活での自分の配慮が足りなかったことを何度も思わされた。何より、直哉は簡単に息子を手放してしまったことを悔いた。それで、直哉はたびたびかつての妻に連絡するようになった。
結果、直哉はかつての妻とよりを戻した。そして修司は直哉と別れて今にも消え入りそうになっている千夏を最初は上司として慰めていたのだが、その内彼らは超えてはならない一線を越えてしまう。
正直なところ、その当時修司と加奈子に夜の営みはなかった。それは修司が肥大してしまった妻に愛想を尽かしていたのではない。加奈子が修司から逃げていたのだ。
加奈子は修司の愛撫にいつしか感じられなくなっていた。急激に肥満したことがそうなのか、二度の出産で緩んでしまったその秘所は、ほとんど手を施さずとも修司の男性自身を受け入れるので、修司が加奈子をまず楽しませることをおざなりにしていたからなのか、あるいは子供の父母として互いを見るようになり、男として見られなくなっていたからなのか――おそらくそれらの要素が少しずつ合わって加奈子は、自分が不感症だと信じるに至った。楽しめないセックスなど、苦痛以外の何物でもない。かくして、加奈子は夫からの営みの誘いを二人の子供の育児に託けてはぐらかし続けていたのだ。
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