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ああ、こんなに美味しいモノが……だなんて
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【男ぉ!】
【そんなにびっくりすることないでしょ! 僕ちゃんとスカートなんか穿いてないじゃないですか!】
【そりゃ、勇者様の連れなんだから、お忍びの姫様なのかなぁとか……】
女性に間違われていたことに激怒する僕に、マシューが遠慮がちにそう言った。その目はどことなく傷ついた風。そして、
【バカ、こいつがそんな品のいい顔してるか?】
【確かに上品とは言えないかもしれないけど、かわいいじゃないですか。コータロと並ぶとお似合いです】
先輩がいつものように僕をこき下ろすのに同調して、何気に酷いことをさらっと言ってのける。ううっ、確かに百六十五センチの僕は、百八十三センチの先輩やほぼ変わりないだろうマシューからすれば小柄だけどね。
【げっ、こいつとお似合いだなんて言うな!】
すかさず先輩が言う。でも、それはこっちの台詞です。
【そうか、妙な光に包まれてこっちに運ばれてきたねぇ。あんたたちこれからどうするね】
それから、僕たちはマシューにここに運ばれてきた経緯を掻い摘んで話した。マシューは僕たちが別に高貴な出自でもなく、歳もさして変わらないことが判ると幾分砕けた口調になっていた。だけど、元々敬語が曖昧(日本語が厳密すぎるのか)な英語では大して変化はないのだけれど。 それに、マシューが僕たちを高貴な出自だと勘違いしたのも、その口語というより、ブリティッシュイングリッシュな日本の英語教育が原因なのだろうし。
大体、僕だって私だって、こっちじゃ全部I my meだ。それが間違いの根元だって気がする……って、英語に八つ当たりしても仕方ないんだけどさ。
【とにかく、腹が減っていてはなんもいい考えは浮かばんて、リルムの町で腹ごしらえといくか】
マシューに促されて僕たちは町外れで車を降りると(馬のない馬車なんかに乗っていたら、絶対にドン引きされるとマシューが言うので)リルムの町に入った。
【お、良いぞ。今日は市が立ってる】
見ると町のショボいメインストリートにはいくつかの屋台が出ていた。
「プリンだぁ!」
その中に僕は『Mon Pudding』という看板を見つけて色めきたった。車のないこの世界には当然プラ容器なんてものはないらしく、極小のブリキっぽいバケツに黄色いプルプルが収まっていた。
【それ三つ】
すると、その声を聞いたマシューがプリンを買って僕たちに手渡してくれた。
【助けてくれた礼だ、食え】
【うわぁ、ありがとう】
僕はそれを受け取ると、添え付けの木の棒で掬い取って口に入れる。予想通りと言うか、予想以上の美味しさ。
「んまい! 幸せだぁ~」
思わず日本語でうなってしまう。
「相変わらず、おまえの幸せはお手軽だなぁ。ま、なかなかいけるがな」
先輩もまんざらではない様子。
【旨いか】
【はい、とっても】
味を聞いてきたマシューに僕はぶんぶんと首を縦に振ってそう答えた。でも、僕の頷きにニコニコしながらマシューが言った
【そうだろ、そうだろ。ここいらは本当に良いスライムがいっぱいとれるからな】
の一言で、僕と先輩は互いの顔を見合わせて固まってしまった。
「す、スライム?」
「お、おえ~っ!」
僕が素っ頓狂な声を上げるのと同時に先輩が吐いた。あんなに美味しかったプリンの原料がほんのついさっき戦ったあのゲル状だっただなんて……
「ショックだ……こんなに美味しいものがスライムでできているなんて……」
「っていいながら、お前まだ食ってんじゃねぇか。一体どんな神経してんだ」
ショックだと言いながらどんどんと食べ続ける僕に、先輩は蒼い顔をしながらそう言った。
「だけど、こんなに美味しいんですよ。それに、途中で捨てるなんてもったいないです、そんなこと僕にはできません」
そのあとも僕は、
『何でこんなに美味しいものがスライムからできてるんだ』と繰り返しつぶやきながら、先輩の分のプリンも平らげたのだった。
【そんなにびっくりすることないでしょ! 僕ちゃんとスカートなんか穿いてないじゃないですか!】
【そりゃ、勇者様の連れなんだから、お忍びの姫様なのかなぁとか……】
女性に間違われていたことに激怒する僕に、マシューが遠慮がちにそう言った。その目はどことなく傷ついた風。そして、
【バカ、こいつがそんな品のいい顔してるか?】
【確かに上品とは言えないかもしれないけど、かわいいじゃないですか。コータロと並ぶとお似合いです】
先輩がいつものように僕をこき下ろすのに同調して、何気に酷いことをさらっと言ってのける。ううっ、確かに百六十五センチの僕は、百八十三センチの先輩やほぼ変わりないだろうマシューからすれば小柄だけどね。
【げっ、こいつとお似合いだなんて言うな!】
すかさず先輩が言う。でも、それはこっちの台詞です。
【そうか、妙な光に包まれてこっちに運ばれてきたねぇ。あんたたちこれからどうするね】
それから、僕たちはマシューにここに運ばれてきた経緯を掻い摘んで話した。マシューは僕たちが別に高貴な出自でもなく、歳もさして変わらないことが判ると幾分砕けた口調になっていた。だけど、元々敬語が曖昧(日本語が厳密すぎるのか)な英語では大して変化はないのだけれど。 それに、マシューが僕たちを高貴な出自だと勘違いしたのも、その口語というより、ブリティッシュイングリッシュな日本の英語教育が原因なのだろうし。
大体、僕だって私だって、こっちじゃ全部I my meだ。それが間違いの根元だって気がする……って、英語に八つ当たりしても仕方ないんだけどさ。
【とにかく、腹が減っていてはなんもいい考えは浮かばんて、リルムの町で腹ごしらえといくか】
マシューに促されて僕たちは町外れで車を降りると(馬のない馬車なんかに乗っていたら、絶対にドン引きされるとマシューが言うので)リルムの町に入った。
【お、良いぞ。今日は市が立ってる】
見ると町のショボいメインストリートにはいくつかの屋台が出ていた。
「プリンだぁ!」
その中に僕は『Mon Pudding』という看板を見つけて色めきたった。車のないこの世界には当然プラ容器なんてものはないらしく、極小のブリキっぽいバケツに黄色いプルプルが収まっていた。
【それ三つ】
すると、その声を聞いたマシューがプリンを買って僕たちに手渡してくれた。
【助けてくれた礼だ、食え】
【うわぁ、ありがとう】
僕はそれを受け取ると、添え付けの木の棒で掬い取って口に入れる。予想通りと言うか、予想以上の美味しさ。
「んまい! 幸せだぁ~」
思わず日本語でうなってしまう。
「相変わらず、おまえの幸せはお手軽だなぁ。ま、なかなかいけるがな」
先輩もまんざらではない様子。
【旨いか】
【はい、とっても】
味を聞いてきたマシューに僕はぶんぶんと首を縦に振ってそう答えた。でも、僕の頷きにニコニコしながらマシューが言った
【そうだろ、そうだろ。ここいらは本当に良いスライムがいっぱいとれるからな】
の一言で、僕と先輩は互いの顔を見合わせて固まってしまった。
「す、スライム?」
「お、おえ~っ!」
僕が素っ頓狂な声を上げるのと同時に先輩が吐いた。あんなに美味しかったプリンの原料がほんのついさっき戦ったあのゲル状だっただなんて……
「ショックだ……こんなに美味しいものがスライムでできているなんて……」
「っていいながら、お前まだ食ってんじゃねぇか。一体どんな神経してんだ」
ショックだと言いながらどんどんと食べ続ける僕に、先輩は蒼い顔をしながらそう言った。
「だけど、こんなに美味しいんですよ。それに、途中で捨てるなんてもったいないです、そんなこと僕にはできません」
そのあとも僕は、
『何でこんなに美味しいものがスライムからできてるんだ』と繰り返しつぶやきながら、先輩の分のプリンも平らげたのだった。
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