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暴君くん
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中司さんがミルクを飲んでいる間に僕たちも軽くお腹に入れて、買い物を再開することに。
食事中、中司さんをずっとだっこしていた谷山先輩に、
「僕はぜんぜん分からないから、谷山先輩が選んでくださいね」
だから、僕がだっこしますよと僕は中司さんの前に両手を出した。だけど、彼はひゅっとその手を谷山先輩の方に伸ばして、彼女にしがみつこうとする。その様子を見て、彼女がぷっと吹き出したけれど、僕は構わず彼の脇に手を突っ込んで引き剥がした。その途端、中司さんは頭が下になるくらいそっくり返り、火がついたように泣いて暴れる。
まるで、誘拐犯にでもなった気分だ。
「やっぱりダメみたいね。宮本君には荷物持ちしてもらうから良いわよ」
谷山先輩はそう言いながら中司さんの前に手を差し出す。すると中司さんは、思いっきり手を伸ばして谷山先輩に縋りつき、その胸の中にすとんと納まるとピタッと泣き止んだ。何とも現金なことで……
「大丈夫ですか? この子結構持ち重りがしますよ」
さっき、立って抱いていた時でもだんだんに重みが増してきたもの。慣れもあるのかも知れないし、だからといって放り投げる訳にもいかないのだろうけど、世のお母さんたちは本当に偉いと思う。
「大丈夫よ、買い物カートについている座席に座らせるから」
そう言って歩き出す谷山先輩に、僕も慌てて続いた。
だけど、その買い物カートにも中司さんは頑として乗らず、結局急遽だっこバンドを買う羽目になってしまった。おむつもミルクも消耗品だし、服は必要だからまだしも、布団と言い、こんなのはなんだかなぁ……と思っていると、僕の携帯に電話が入る。先輩からだった。
「買い物済んだか?」
「後少しで」
布団もパジャマも買ったし、たぶん。
「じゃぁ、もう出られるな。ところでお前、XXの『メルヘン』って喫茶店は知ってるな」
「ええ、知ってます」
知ってるも何も、僕があることで足重く通っているおなじみのお店だ。
「俺は会社に戻んなきゃなんねぇから、ビクトールをそこに迎えに行って、マンションに戻ってくれ」
「はい、わかりました」
って答えたけど、何だかイヤな予感がする。あの店を選んだのは、絶対先輩じゃなくってセルディオさんだと思う。
先輩の電話を受けて、僕たちはいっぱいの荷物を載せて『メルヘン』に向かった。
で、店の扉を開けてまず目に飛び込んできたのは、予想通りお店の名物メニュー、『ジャンボプリンパフェ』にかじりついているセルディオさんの姿だった。もう、半分以上食べ尽くしていて陥落間近。
「お、宮ちゃんも来たな。さすが兄弟だな、良い食いっぷりだぜ。双子なんだってな」
「え、ええ」
双子と言うことにしている訳ね。僕は、適当に相づちを打つ。
「大体、アレを一人で食い切れる奴はそうそうはいない」
と、人の良い店のマスターは笑う。だけど、
「ま、不思議と、こういうもんは女の方が完食するもんだがな」
と続けたので、僕はあわてた。
「そ、それセル……いや、あの子に言いました?」
それで、僕はぐっと声のトーンを落としてマスターにそう聞いた。
「いや?」
僕のあわてようにマスターは首を傾げる。
「それ、彼の前では絶対に言わないでくださいね」
「か、彼ってことは、男か!?」
セルディオさんが男だと分かってマスターは素っ頓狂な声を上げる。ぼくは人差し指を口元にたてて、
「ええ」
と頷く。
「スカート穿いてるのに?」
あれは、魔術師のローブで別にスカートでもワンピースでもないんだけどな。って言っても地球人のマスターに解る訳はないし。
「あ、あれは仕事上仕方なく……でも、本人気にしてますから。でないと……」
ひどい目に遭います。僕は、赤ちゃんがもう一人増える図を想像してぞっとした。
食事中、中司さんをずっとだっこしていた谷山先輩に、
「僕はぜんぜん分からないから、谷山先輩が選んでくださいね」
だから、僕がだっこしますよと僕は中司さんの前に両手を出した。だけど、彼はひゅっとその手を谷山先輩の方に伸ばして、彼女にしがみつこうとする。その様子を見て、彼女がぷっと吹き出したけれど、僕は構わず彼の脇に手を突っ込んで引き剥がした。その途端、中司さんは頭が下になるくらいそっくり返り、火がついたように泣いて暴れる。
まるで、誘拐犯にでもなった気分だ。
「やっぱりダメみたいね。宮本君には荷物持ちしてもらうから良いわよ」
谷山先輩はそう言いながら中司さんの前に手を差し出す。すると中司さんは、思いっきり手を伸ばして谷山先輩に縋りつき、その胸の中にすとんと納まるとピタッと泣き止んだ。何とも現金なことで……
「大丈夫ですか? この子結構持ち重りがしますよ」
さっき、立って抱いていた時でもだんだんに重みが増してきたもの。慣れもあるのかも知れないし、だからといって放り投げる訳にもいかないのだろうけど、世のお母さんたちは本当に偉いと思う。
「大丈夫よ、買い物カートについている座席に座らせるから」
そう言って歩き出す谷山先輩に、僕も慌てて続いた。
だけど、その買い物カートにも中司さんは頑として乗らず、結局急遽だっこバンドを買う羽目になってしまった。おむつもミルクも消耗品だし、服は必要だからまだしも、布団と言い、こんなのはなんだかなぁ……と思っていると、僕の携帯に電話が入る。先輩からだった。
「買い物済んだか?」
「後少しで」
布団もパジャマも買ったし、たぶん。
「じゃぁ、もう出られるな。ところでお前、XXの『メルヘン』って喫茶店は知ってるな」
「ええ、知ってます」
知ってるも何も、僕があることで足重く通っているおなじみのお店だ。
「俺は会社に戻んなきゃなんねぇから、ビクトールをそこに迎えに行って、マンションに戻ってくれ」
「はい、わかりました」
って答えたけど、何だかイヤな予感がする。あの店を選んだのは、絶対先輩じゃなくってセルディオさんだと思う。
先輩の電話を受けて、僕たちはいっぱいの荷物を載せて『メルヘン』に向かった。
で、店の扉を開けてまず目に飛び込んできたのは、予想通りお店の名物メニュー、『ジャンボプリンパフェ』にかじりついているセルディオさんの姿だった。もう、半分以上食べ尽くしていて陥落間近。
「お、宮ちゃんも来たな。さすが兄弟だな、良い食いっぷりだぜ。双子なんだってな」
「え、ええ」
双子と言うことにしている訳ね。僕は、適当に相づちを打つ。
「大体、アレを一人で食い切れる奴はそうそうはいない」
と、人の良い店のマスターは笑う。だけど、
「ま、不思議と、こういうもんは女の方が完食するもんだがな」
と続けたので、僕はあわてた。
「そ、それセル……いや、あの子に言いました?」
それで、僕はぐっと声のトーンを落としてマスターにそう聞いた。
「いや?」
僕のあわてようにマスターは首を傾げる。
「それ、彼の前では絶対に言わないでくださいね」
「か、彼ってことは、男か!?」
セルディオさんが男だと分かってマスターは素っ頓狂な声を上げる。ぼくは人差し指を口元にたてて、
「ええ」
と頷く。
「スカート穿いてるのに?」
あれは、魔術師のローブで別にスカートでもワンピースでもないんだけどな。って言っても地球人のマスターに解る訳はないし。
「あ、あれは仕事上仕方なく……でも、本人気にしてますから。でないと……」
ひどい目に遭います。僕は、赤ちゃんがもう一人増える図を想像してぞっとした。
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