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第1章
都市メイリーズ
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「いらっしゃいませー!!」
あれから5日が経った。
言わずもがな、わたしがこのシャイネス王国に呼び出されて占い師の真似事をしてから5日である。
「ご注文はお決まりでしょうか?」
わたしは今、レグルス達の村からトロッコで4つ先の大きな町でウエイトレスのお仕事をしている。
トロッコといったら車体の上半分がむき出しの、ゆっくりと郊外の風景を楽しむことができる乗り物をイメージするかと思うが、この世界のトロッコは車体は全て覆われており天井に星空の印刷が施されていることが唯一の開放ポイントであった。
窓がないので外の景色が見れないことはおろか車内は常に夜というなかなか不思議な乗り物である。
わたしは星空が好きなのではじめて乗った時はとてもはしゃいでいたが、慣れてくるとこのなんとも時間感覚を奪うトロッコがちょっと苦手な存在となってしまった。
まぁ気分転換くらいなら良いんだろうけどね。
「お待たせ致しました。太陽のカケラ玉子のオムライスとみかん畑の花のソテーです!」
仕事を始めて一番苦労したのがメニューの名称。
いろんなアルバイトを経験してきた上で、新しい職場でメニューを覚えるという業務が毎回大変だと感じていたけれど、大体はオーソドックスな名前なのですぐに覚えられた。
でもこのレストラン『ロイドミック』では馴染みのない単語を使ったメニューがとっても多いのである。
しかし、使われている食材さえ覚えてしまえばいけると踏んだわたしは、ひたすらこちらの国の食べ物図鑑を読みまくった。台本の台詞を覚えるかのごとく片時も図鑑を離さなかった。
今ではお客様に質問されても即答できるほどに食材について詳しくなった。まさに努力の賜物!!!
「ありがとうございましたーー!」
本日最後のお客様がお食事を終え、ドアへ向かう。ティコンティコンティンティンと絃を弾く楽器であろう音が電子化されたメロディーが鳴り、お客様の退店を伝える。
さて、わたしがどうして『ロイドミック』で働くことになったかというとーー
「働かざるもの着るべからず。」
「………いや!強制的に呼んでおいて何冷たいこと言ってんの?!」
「呼びたくて呼んだわけじゃねーし。大体、なんでおまえ帰らねーんだよ。」
「帰らねーんじゃなくて帰れねーの!あんた、わたし以外が来たところで全部その塩対応するつもりだったんじゃないでしょうね?」
「魔法陣で呼んだなら魔法陣で帰す。条件はいつ如何なる時も同じはずだ。だから呼んで、話をしたら普通に帰すつもりでいた。しかしおまえはそれじゃ帰れねー。なんでだ。」
「…そんなことわたしに言われても…」
この異世界は未知なるものばっかりで好奇心揺さぶられる楽しい環境であった。しかし、3人と山で遊び倒していざ帰ろうとした時にレグルスの魔法陣から弾かれてしまったのだ。つまりわたしは自分の世界への帰り方がわからない。そんな中でのレグルスの冷たい言葉は些か心を抉るもので、泣きたくなってきた。
「そんな言い方すんなってー。うちに帰れる魔法が見つかるまで世話してあげたらいいじゃん!おまえが呼んだんだしさ!男なら責任とれって!」
髪色に負けず劣らずなキラキラ笑顔でサルドナがレグルスの肩を組む。
「そうだよ!カズハはなーぁんにもわからない所に1人で来て、絶対絶対不安なんだから!」
そこにユミィが加勢をしてくれる。もう2人揃って天使でしかない。
冒頭の「働かざるもの~」は、わたしの服をこっちの世界の物に合わせた方がいい。じゃあみんなで買いに行こう。じゃあレグルスのお金で。という会話の流れに憤慨したレグルスによる抵抗である。
自分で買えと言われてもわたしにはこの世界で使えるお金なんてない。
「まあ、働くことには賛成だけどな!帰れるまでに何日掛かるかわからないわけだし、服以外にも必要な物はあるだろう?レグルスはまだ魔法だけでは稼げてないから安月給だし!カズハのためにも自分の分は自分で稼いだ方がいいと思うな!」
「おい!安月給ってなんだ!」
確かにサルドナの言う通り、自分の生活のために人様に全ての金銭を負担してもらうのは正直心苦しい。何より『欲しいものは何の躊躇いもなく買いたい』というのがわたしのアイデンティティなのだ!したがって年がら年中金欠なのだが。
ここで生きていくために必要な物やわたしでも雇ってもらえるようなお店は何処かとみんなで言い合っているとユミィが『ロイドミック』のことを口にしたのだ。
「ここからトロッコで少し行ったところの都市メイリーズにあるお店なんだ!時給もいいし、制服がとっても可愛いのーー!」
なるほど。女子にとって、長期働く上で一番と言っても過言ではない可愛い制服という条件をクリアしているというのか。
「それに、わたしの花屋もサルドナの勤めるシャイネス料理専門店もメイリーズにあるのよ。何かあった時に助けてあげられると思うの!」
「ほんとは俺の職場で雇ってあげられたらいいんだけどさ、専門店なだけあって、こっちの知識が低いカズハにはいろんなことが負担になるかもしれないんだ。」
サルドナが眉を下げ寂しそうな顔で言う。申し訳無いって思ってくれているんだろうな。優しいやつめ。
「ちなみに、レグルスはメイリーズの都市機関で雑用してるから、困ったことがあればこいつにヘルプを飛ばせばいいぜ!」
となると、わたしが都市メイリーズの何処かのお店で働くということは譲れない事項ということだ。だって3人とも職場がメイリーズにあるんだもの。
「あー…ってことはベルも必要ってことかぁ。おまえ金かかるなぁ。」
ベルとはわたしの世界でいう携帯電話のことらしい。
ユミィが実物を見せてくれた。
色や形は好みによって替えることができるみたいだけど、ケータイっていうより腕時計に近くて、すっごい小型。これでメッセージや音声を飛ばせるんだそうだ。
「仕方ないじゃない!生きていくにはお金が必要なんだもん!たくさん稼ごうねぇ、カズハ!!」
「まぁ、なんにせよ最初のミッションは着るものだよな。これは予定通りレグルスに買ってもらおうぜ。働くための初期投資ってやつだな!」
「…仕方ねーな」
渋々でもレグルスが了承してくれた。最初のお給料で半額返金を条件に。ちゃっかりしてるんだから。
それでも、これからどうしたらいいのかわからなかったわたしにとって目先の目的ができたのは有難かった。
まずはこっちの世界で違和感のない服を買って、メイリーズのお店(最有力候補はロイドミックというレストラン)にアルバイトとして雇ってもらい、自分で生活費を稼ぐ。同時進行で元の世界に帰る方法を探すこと。
帰れなくてもいいんだけどね。
あれから5日が経った。
言わずもがな、わたしがこのシャイネス王国に呼び出されて占い師の真似事をしてから5日である。
「ご注文はお決まりでしょうか?」
わたしは今、レグルス達の村からトロッコで4つ先の大きな町でウエイトレスのお仕事をしている。
トロッコといったら車体の上半分がむき出しの、ゆっくりと郊外の風景を楽しむことができる乗り物をイメージするかと思うが、この世界のトロッコは車体は全て覆われており天井に星空の印刷が施されていることが唯一の開放ポイントであった。
窓がないので外の景色が見れないことはおろか車内は常に夜というなかなか不思議な乗り物である。
わたしは星空が好きなのではじめて乗った時はとてもはしゃいでいたが、慣れてくるとこのなんとも時間感覚を奪うトロッコがちょっと苦手な存在となってしまった。
まぁ気分転換くらいなら良いんだろうけどね。
「お待たせ致しました。太陽のカケラ玉子のオムライスとみかん畑の花のソテーです!」
仕事を始めて一番苦労したのがメニューの名称。
いろんなアルバイトを経験してきた上で、新しい職場でメニューを覚えるという業務が毎回大変だと感じていたけれど、大体はオーソドックスな名前なのですぐに覚えられた。
でもこのレストラン『ロイドミック』では馴染みのない単語を使ったメニューがとっても多いのである。
しかし、使われている食材さえ覚えてしまえばいけると踏んだわたしは、ひたすらこちらの国の食べ物図鑑を読みまくった。台本の台詞を覚えるかのごとく片時も図鑑を離さなかった。
今ではお客様に質問されても即答できるほどに食材について詳しくなった。まさに努力の賜物!!!
「ありがとうございましたーー!」
本日最後のお客様がお食事を終え、ドアへ向かう。ティコンティコンティンティンと絃を弾く楽器であろう音が電子化されたメロディーが鳴り、お客様の退店を伝える。
さて、わたしがどうして『ロイドミック』で働くことになったかというとーー
「働かざるもの着るべからず。」
「………いや!強制的に呼んでおいて何冷たいこと言ってんの?!」
「呼びたくて呼んだわけじゃねーし。大体、なんでおまえ帰らねーんだよ。」
「帰らねーんじゃなくて帰れねーの!あんた、わたし以外が来たところで全部その塩対応するつもりだったんじゃないでしょうね?」
「魔法陣で呼んだなら魔法陣で帰す。条件はいつ如何なる時も同じはずだ。だから呼んで、話をしたら普通に帰すつもりでいた。しかしおまえはそれじゃ帰れねー。なんでだ。」
「…そんなことわたしに言われても…」
この異世界は未知なるものばっかりで好奇心揺さぶられる楽しい環境であった。しかし、3人と山で遊び倒していざ帰ろうとした時にレグルスの魔法陣から弾かれてしまったのだ。つまりわたしは自分の世界への帰り方がわからない。そんな中でのレグルスの冷たい言葉は些か心を抉るもので、泣きたくなってきた。
「そんな言い方すんなってー。うちに帰れる魔法が見つかるまで世話してあげたらいいじゃん!おまえが呼んだんだしさ!男なら責任とれって!」
髪色に負けず劣らずなキラキラ笑顔でサルドナがレグルスの肩を組む。
「そうだよ!カズハはなーぁんにもわからない所に1人で来て、絶対絶対不安なんだから!」
そこにユミィが加勢をしてくれる。もう2人揃って天使でしかない。
冒頭の「働かざるもの~」は、わたしの服をこっちの世界の物に合わせた方がいい。じゃあみんなで買いに行こう。じゃあレグルスのお金で。という会話の流れに憤慨したレグルスによる抵抗である。
自分で買えと言われてもわたしにはこの世界で使えるお金なんてない。
「まあ、働くことには賛成だけどな!帰れるまでに何日掛かるかわからないわけだし、服以外にも必要な物はあるだろう?レグルスはまだ魔法だけでは稼げてないから安月給だし!カズハのためにも自分の分は自分で稼いだ方がいいと思うな!」
「おい!安月給ってなんだ!」
確かにサルドナの言う通り、自分の生活のために人様に全ての金銭を負担してもらうのは正直心苦しい。何より『欲しいものは何の躊躇いもなく買いたい』というのがわたしのアイデンティティなのだ!したがって年がら年中金欠なのだが。
ここで生きていくために必要な物やわたしでも雇ってもらえるようなお店は何処かとみんなで言い合っているとユミィが『ロイドミック』のことを口にしたのだ。
「ここからトロッコで少し行ったところの都市メイリーズにあるお店なんだ!時給もいいし、制服がとっても可愛いのーー!」
なるほど。女子にとって、長期働く上で一番と言っても過言ではない可愛い制服という条件をクリアしているというのか。
「それに、わたしの花屋もサルドナの勤めるシャイネス料理専門店もメイリーズにあるのよ。何かあった時に助けてあげられると思うの!」
「ほんとは俺の職場で雇ってあげられたらいいんだけどさ、専門店なだけあって、こっちの知識が低いカズハにはいろんなことが負担になるかもしれないんだ。」
サルドナが眉を下げ寂しそうな顔で言う。申し訳無いって思ってくれているんだろうな。優しいやつめ。
「ちなみに、レグルスはメイリーズの都市機関で雑用してるから、困ったことがあればこいつにヘルプを飛ばせばいいぜ!」
となると、わたしが都市メイリーズの何処かのお店で働くということは譲れない事項ということだ。だって3人とも職場がメイリーズにあるんだもの。
「あー…ってことはベルも必要ってことかぁ。おまえ金かかるなぁ。」
ベルとはわたしの世界でいう携帯電話のことらしい。
ユミィが実物を見せてくれた。
色や形は好みによって替えることができるみたいだけど、ケータイっていうより腕時計に近くて、すっごい小型。これでメッセージや音声を飛ばせるんだそうだ。
「仕方ないじゃない!生きていくにはお金が必要なんだもん!たくさん稼ごうねぇ、カズハ!!」
「まぁ、なんにせよ最初のミッションは着るものだよな。これは予定通りレグルスに買ってもらおうぜ。働くための初期投資ってやつだな!」
「…仕方ねーな」
渋々でもレグルスが了承してくれた。最初のお給料で半額返金を条件に。ちゃっかりしてるんだから。
それでも、これからどうしたらいいのかわからなかったわたしにとって目先の目的ができたのは有難かった。
まずはこっちの世界で違和感のない服を買って、メイリーズのお店(最有力候補はロイドミックというレストラン)にアルバイトとして雇ってもらい、自分で生活費を稼ぐ。同時進行で元の世界に帰る方法を探すこと。
帰れなくてもいいんだけどね。
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