35 / 55
第10話 恋の鞘当てで苦労することになる。
Chapter-34
しおりを挟む
ちょっと今回は、閑話な話になるかもしれない。
「あーあ、良いよなー、アルヴィンは」
俺が帝都屋敷を開設して、キャロやエミ、そしてミーラと一緒に生活し始めてから、ジャックがやたら僻むような声を出すようになっていた。
いや、ジャックだってここで生活しているんだが。
とは言え、言いたいことは解っている。
「嫁さん候補が3人もいてさー、しかも、外れた方もアルヴィンにはついていくって言ってるし。ほんと羨ましいよ」
外れた方って、お前、キャロやミーラにそんな言い回し、聞かれたら、殴られるぞ。
「俺にも出会いが欲しいよなー」
うーん、俺としても、ジャックにも多少は幸せになってほしいんだよなぁ。
原作『転生したら辺境貴族の末っ子でした』では、ジャックは終始、マイケル・アルヴィンの親友、と言う名の雑用係扱い。
まぁ、この手の創作物では、往々にしてある話なんだが。
とは言え、俺は、原作知識ではなく実体験として、ジャックにそれなりに世話になってきたわけで。
そんな扱いは、あんまりだなぁ、と思ってしまう。
とは、言ったものの……
「アルヴィンから、誰かに口利いてもらえたら、俺にも出会いがあるかもしれないんだけどなー」
「まぁ、考えてはいるよ」
そう、考えちゃいる。
しかし、この先マイケル・アルヴィンに近付いてくる女性って、基本的にハーレム要員なんだよな。だから、マイケル・アルヴィンに興味があって近付いては来るけど、ジャックは基本的にアウト・オブ・眼中。
まぁ、俺は、これ以上ハーレム属性出すつもり無いから、そう言う女性とは、近づかないようにしたいわけなんだが。
「ただなぁ、俺も、別に女性の扱いに長けているってわけじゃないからなぁ」
「そう言われても、全然説得力ないぞ、と」
ジャックはそう言うものの、実際、前世でも非モテ非リア充だった俺は、女性をうまくジャックに引き付けてやることとか、そんな器用な事はできないしなぁ。
うーん、俺の知ってる女性で、独身で、俺に対しては異性としての興味のない人間か……
原作知識をフル動員しても、難しいぞ、そりゃ。
かと言って、そこらへんの町娘ナンパする度胸なんざ、俺にもないし。
敢えて該当すると言えば……
「姉弟子ぐらいしか、独身女性に知り合いいないんだよなぁ……」
「!」
俺が言うと、ぱっ、と、なんかジャックの顔色が変わった。
「リリーさんか……」
え? 何?
ジャックってば、姉弟子に興味あんの?
「ちょっと待てよ、姉弟子、あんな姿だけど、アラフォ……40近いぞ」
「でも、あの姿だし。それに、独身なんだよな?」
まぁ、確かにそうだ。姉弟子でどうこう言ってたら、200に手が届こうって師匠なんか、無体も良いところだし。
師匠は、アラサー、いや押し通そうと思えば20代前半でも押し通せる。
しかも、男が10人見れば、7人は美女だと言うだろう。
とは言え、流石に、師匠を紹介するなんて無茶は、出来ないが……
「リリーさんか……悪くないな、うん、可愛いし、それでいて面倒見良さそうだし、悪くなさそうだぞ」
あれ、なんだ。ジャックのやつ、もしかして、合法ロリ属性持ちなのか?
「本気で言ってるのか?」
俺は、ジトーっとした目を向けてしまいながら、ジャックに問いただした。
「ああ、リリーさん、悪くないじゃないか。お前が、紹介してくれるってんなら、正直、お近づきになりたいぞ」
うーん。
姉弟子から見たら、正直、ジャックなんて子供そのものなんだけどなぁ……
でも、あれか、それならそれで、姉弟子ならうまく、ジャックを傷つけないように、やんわりと断ってくれるか。
「まぁ、そこまで言うなら……話だけは通してやるけど」
「ホントか!? アルヴィン、ホント、お前、友達甲斐のあるやつだな!」
おいこら。
自分に女性紹介してくれるからって、親友扱いとか、現金にもほどがあるぞ。
「あくまで話はしてやる、ってだけだからな、年の差は大きいんだし、過度な期待はするなよ」
「解ってる解ってる。別にアルヴィンのことを恨んだりなんかしないさ」
とは、言うものの。
完全にその気になって舞い上がってやがんな、こいつ。
姉弟子がうまくあしらってくれるといいんだが。
さて、その翌日。
その姉弟子が、俺の帝都屋敷を訪ねてきた。
帝都屋敷開設の祝いだ、とか言って、この国じゃあまだ貴重な、クリームを使ったお菓子を持ってきてくれた。
ジャックの話もあるが、まずはその前に……
「姉弟子、これ、なんだか解りますか?」
俺は、マントに格納してあったそれを取り出して、姉弟子に見せた。
それは、この屋敷で回収した、宝石箱に入ったあの種みたいな宝石だ。
「これは、ホムンクルスシードじゃないか」
「えっ、これが、そうなんですか?」
通りで、ちょっとだけ覚えがあるはずだ。
師匠のところで、資料だけは読んだ覚えがある。
ホムンクルス、つまり、人造生命体を作るための種子。古代魔法時代に作られたもの、らしい。もっとも、今となっては、その技術は失われてしまっているらしいが。
普通の人間からしたら、ただの透明度の低い宝石でしかないんだが……
問題は、この前のように、怨霊とかの、強い悪意に触れた時。
それが原因になって、霊障とかを起こすことがあるらしい。
「問題は……ないとは言えないな、市井に放っておけば、また霊障を起こすかもしれない」
「そうですね……姉弟子、預かっててもらえますか?」
「いや、正直私の手にも負えない、これは、師匠にでも預けたほうがいいだろう。
姉弟子の言葉に、俺は姉弟子を頼ったが、姉弟子にもお手上げという感じだった。
「でも、いいよ。私が持っておいて、折を見て師匠のところに持っていこう」
「いいんですか?」
姉弟子が、あまりにもあっさりと言いながら、自分のマントに格納するのを見て、俺は、思わず訊き返していた。
「ああ、それに、お前さんは、これからしばらく、いろいろと忙しくなるだろうからね」
姉弟子は、苦笑しながらそう言った。まぁ、そうなんだよね。
この後も、ちょっとした、あんまり愉快じゃないイベントがあったりするし。
まぁ、原作ルートはもう完全に外れているだろうから、そのイベントが発生するかどうかは、わからないけど。
「ところで、姉弟子、話はガラッと変わるんですけど……」
「ん、なんだい?」
しょうがない、約束はしたんだ、話だけは、しといてやろうじゃないか。
「実は、姉弟子と付き合いたい、って男性がいるんですけどね」
「私と!?」
姉弟子は、一瞬、驚いたような声を出した。
だが、すぐに、ニヤッと笑って、
「もしかして、彼かい?」
と、小声でそう言った。
そう、さっきから、ジャックのやつ、気づかれてないつもりなのか、壁に隠れて、チラチラと姉弟子を見ている。
「それで、どうなんだい、実際、アルヴィンから見て、彼は」
おやっ。
俺は、もう最初から無理、と言われると思ってたから、意外に感じて、間の抜けた顔をしてしまった。
「アルヴィン?」
「えー……あ、ジャックですよね、いいやつですよ。気さくで、いろいろ気兼ねなく相談できるし、それに、軽いようにも見えますけど、結構、頼りになりますから」
こういう時、どう言えば良いのか、俺にはうまくわからんのだが、少なくとも嘘はいってないはず。
「アルヴィンがそう言って、信用して、ずっと付き合ってるんだから、それなりに良い人間なんだろうね」
姉弟子は、そう言って、ニコッ、と笑った。
こりゃ、意外な反応だ。
「え、と、姉弟子、良いんですか? その、ジャックと」
「試しに付き合ってみる程度ならね。そもそも、下心がまったくなかったら、若い頃の姿なんて保ってないさ」
言われてみりゃ、それもそうか……
「うん、そうだね、一度、直接、話はしてみようじゃないか。それで今後、どうするかは、決めるよ」
姉弟子は、笑顔でそう言った。その笑顔は、俺まで見とれてしまうほど、自然で、可愛らしかった。
良かったな、ジャック。全く脈なしでも、ないっぽいぞ……これ。
「あーあ、良いよなー、アルヴィンは」
俺が帝都屋敷を開設して、キャロやエミ、そしてミーラと一緒に生活し始めてから、ジャックがやたら僻むような声を出すようになっていた。
いや、ジャックだってここで生活しているんだが。
とは言え、言いたいことは解っている。
「嫁さん候補が3人もいてさー、しかも、外れた方もアルヴィンにはついていくって言ってるし。ほんと羨ましいよ」
外れた方って、お前、キャロやミーラにそんな言い回し、聞かれたら、殴られるぞ。
「俺にも出会いが欲しいよなー」
うーん、俺としても、ジャックにも多少は幸せになってほしいんだよなぁ。
原作『転生したら辺境貴族の末っ子でした』では、ジャックは終始、マイケル・アルヴィンの親友、と言う名の雑用係扱い。
まぁ、この手の創作物では、往々にしてある話なんだが。
とは言え、俺は、原作知識ではなく実体験として、ジャックにそれなりに世話になってきたわけで。
そんな扱いは、あんまりだなぁ、と思ってしまう。
とは、言ったものの……
「アルヴィンから、誰かに口利いてもらえたら、俺にも出会いがあるかもしれないんだけどなー」
「まぁ、考えてはいるよ」
そう、考えちゃいる。
しかし、この先マイケル・アルヴィンに近付いてくる女性って、基本的にハーレム要員なんだよな。だから、マイケル・アルヴィンに興味があって近付いては来るけど、ジャックは基本的にアウト・オブ・眼中。
まぁ、俺は、これ以上ハーレム属性出すつもり無いから、そう言う女性とは、近づかないようにしたいわけなんだが。
「ただなぁ、俺も、別に女性の扱いに長けているってわけじゃないからなぁ」
「そう言われても、全然説得力ないぞ、と」
ジャックはそう言うものの、実際、前世でも非モテ非リア充だった俺は、女性をうまくジャックに引き付けてやることとか、そんな器用な事はできないしなぁ。
うーん、俺の知ってる女性で、独身で、俺に対しては異性としての興味のない人間か……
原作知識をフル動員しても、難しいぞ、そりゃ。
かと言って、そこらへんの町娘ナンパする度胸なんざ、俺にもないし。
敢えて該当すると言えば……
「姉弟子ぐらいしか、独身女性に知り合いいないんだよなぁ……」
「!」
俺が言うと、ぱっ、と、なんかジャックの顔色が変わった。
「リリーさんか……」
え? 何?
ジャックってば、姉弟子に興味あんの?
「ちょっと待てよ、姉弟子、あんな姿だけど、アラフォ……40近いぞ」
「でも、あの姿だし。それに、独身なんだよな?」
まぁ、確かにそうだ。姉弟子でどうこう言ってたら、200に手が届こうって師匠なんか、無体も良いところだし。
師匠は、アラサー、いや押し通そうと思えば20代前半でも押し通せる。
しかも、男が10人見れば、7人は美女だと言うだろう。
とは言え、流石に、師匠を紹介するなんて無茶は、出来ないが……
「リリーさんか……悪くないな、うん、可愛いし、それでいて面倒見良さそうだし、悪くなさそうだぞ」
あれ、なんだ。ジャックのやつ、もしかして、合法ロリ属性持ちなのか?
「本気で言ってるのか?」
俺は、ジトーっとした目を向けてしまいながら、ジャックに問いただした。
「ああ、リリーさん、悪くないじゃないか。お前が、紹介してくれるってんなら、正直、お近づきになりたいぞ」
うーん。
姉弟子から見たら、正直、ジャックなんて子供そのものなんだけどなぁ……
でも、あれか、それならそれで、姉弟子ならうまく、ジャックを傷つけないように、やんわりと断ってくれるか。
「まぁ、そこまで言うなら……話だけは通してやるけど」
「ホントか!? アルヴィン、ホント、お前、友達甲斐のあるやつだな!」
おいこら。
自分に女性紹介してくれるからって、親友扱いとか、現金にもほどがあるぞ。
「あくまで話はしてやる、ってだけだからな、年の差は大きいんだし、過度な期待はするなよ」
「解ってる解ってる。別にアルヴィンのことを恨んだりなんかしないさ」
とは、言うものの。
完全にその気になって舞い上がってやがんな、こいつ。
姉弟子がうまくあしらってくれるといいんだが。
さて、その翌日。
その姉弟子が、俺の帝都屋敷を訪ねてきた。
帝都屋敷開設の祝いだ、とか言って、この国じゃあまだ貴重な、クリームを使ったお菓子を持ってきてくれた。
ジャックの話もあるが、まずはその前に……
「姉弟子、これ、なんだか解りますか?」
俺は、マントに格納してあったそれを取り出して、姉弟子に見せた。
それは、この屋敷で回収した、宝石箱に入ったあの種みたいな宝石だ。
「これは、ホムンクルスシードじゃないか」
「えっ、これが、そうなんですか?」
通りで、ちょっとだけ覚えがあるはずだ。
師匠のところで、資料だけは読んだ覚えがある。
ホムンクルス、つまり、人造生命体を作るための種子。古代魔法時代に作られたもの、らしい。もっとも、今となっては、その技術は失われてしまっているらしいが。
普通の人間からしたら、ただの透明度の低い宝石でしかないんだが……
問題は、この前のように、怨霊とかの、強い悪意に触れた時。
それが原因になって、霊障とかを起こすことがあるらしい。
「問題は……ないとは言えないな、市井に放っておけば、また霊障を起こすかもしれない」
「そうですね……姉弟子、預かっててもらえますか?」
「いや、正直私の手にも負えない、これは、師匠にでも預けたほうがいいだろう。
姉弟子の言葉に、俺は姉弟子を頼ったが、姉弟子にもお手上げという感じだった。
「でも、いいよ。私が持っておいて、折を見て師匠のところに持っていこう」
「いいんですか?」
姉弟子が、あまりにもあっさりと言いながら、自分のマントに格納するのを見て、俺は、思わず訊き返していた。
「ああ、それに、お前さんは、これからしばらく、いろいろと忙しくなるだろうからね」
姉弟子は、苦笑しながらそう言った。まぁ、そうなんだよね。
この後も、ちょっとした、あんまり愉快じゃないイベントがあったりするし。
まぁ、原作ルートはもう完全に外れているだろうから、そのイベントが発生するかどうかは、わからないけど。
「ところで、姉弟子、話はガラッと変わるんですけど……」
「ん、なんだい?」
しょうがない、約束はしたんだ、話だけは、しといてやろうじゃないか。
「実は、姉弟子と付き合いたい、って男性がいるんですけどね」
「私と!?」
姉弟子は、一瞬、驚いたような声を出した。
だが、すぐに、ニヤッと笑って、
「もしかして、彼かい?」
と、小声でそう言った。
そう、さっきから、ジャックのやつ、気づかれてないつもりなのか、壁に隠れて、チラチラと姉弟子を見ている。
「それで、どうなんだい、実際、アルヴィンから見て、彼は」
おやっ。
俺は、もう最初から無理、と言われると思ってたから、意外に感じて、間の抜けた顔をしてしまった。
「アルヴィン?」
「えー……あ、ジャックですよね、いいやつですよ。気さくで、いろいろ気兼ねなく相談できるし、それに、軽いようにも見えますけど、結構、頼りになりますから」
こういう時、どう言えば良いのか、俺にはうまくわからんのだが、少なくとも嘘はいってないはず。
「アルヴィンがそう言って、信用して、ずっと付き合ってるんだから、それなりに良い人間なんだろうね」
姉弟子は、そう言って、ニコッ、と笑った。
こりゃ、意外な反応だ。
「え、と、姉弟子、良いんですか? その、ジャックと」
「試しに付き合ってみる程度ならね。そもそも、下心がまったくなかったら、若い頃の姿なんて保ってないさ」
言われてみりゃ、それもそうか……
「うん、そうだね、一度、直接、話はしてみようじゃないか。それで今後、どうするかは、決めるよ」
姉弟子は、笑顔でそう言った。その笑顔は、俺まで見とれてしまうほど、自然で、可愛らしかった。
良かったな、ジャック。全く脈なしでも、ないっぽいぞ……これ。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
100
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる