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2章 少年期

1話 5歳になりました

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 ━━━カイトとネリネの部屋━━━



「ネリネ!…起きてよネリネ!」

「…うーん………抱っこ…」

「抱っこはしない!起きないと……置いて行くよ?」


 バッ


「置いてっちゃ…ダメ」


 目をつぶったままのネリネだが、2年ちょっとも一緒に過ごしていると起きているか寝ているかも分かるようになってきたカイト。


「うん。置いて行かないから準備して?」

「…分かった」


 ネリネは基本的に朝が弱く、カイトが来るまで(少しの間だが)トラがネリネを寝たまま担いで連れて行っていたらしい。


 その影響か、ネリネは時々バンザイの格好で停止する。


 そういう時は仕方なくカイトがおぶって連れて行くのだった。


(今日は起きてくれたか…良かった)

「…できた!」

「よし!出発するよ」



 こうしてやっと2人は広間に向かうのだった。


     ━━━広間━━━



「おう!お前達で最後だ。早く並べ!」

「…ごめんなさい」

「はいはい」


 2人が、来た順の列の後ろに並ぶのを確認すると皆に聞こえるように声を張る。


「よし!今日も仕事だ!てめぇらぁ…準備はいいかぁ!!」

「「「「「おーう!!」」」」」

「さあ行くぞ!!」


 いつものトラのかけ声で気合いを入れる一同。


     ━━━馬車━━━



 アーク侯爵家の門を出るとアーク家の紋章の入った馬車に乗り込む一同。


 この国では、魔力槽は道具扱いなため馬車も小さいのだが誰も文句を言おうとはしない。


(魔力槽になって2年経つけど慣れる気がしないなぁ)

「今日は魔術師ギルドでの仕事だ。貴族もくる可能性が高い。言葉使いを気をつけるように」

(よしっ、今日は当たりだな…他領への出張じゃなくて良かった)


 トラの言葉でテンションが少し上がるカイト。


 一方、ネリネはカイトの肩に頭を載せて眠っていた。


「がんばるぞ!えいえい」

「「「「「おー!」」」」」

「うるせーーーー!!馬が怯えるだろうがクズども!!………ったく…これだから魔力槽は…」

「すいやせん…」

(このやり取りも、何度見たことか…飽きないのかな?)


 そのやり取りがきっかけで、静寂の訪れる車内。


 だいたい15分くらいたった頃、馬がいななき馬車が止まる。


「ついたぞクズども!!さっさと降りて仕事して来い!」


   ━━━魔術師ギルド━━━



「お、来たな。さあ皆様、魔力槽が到着しましたよ。並んでくださいな」


 受付に居た男性がカイト達を確認すると、整理券を持っている人達に声をかける。


 ここでの仕事は、魔法を撃ちすぎて魔力切れを起こした人への魔力の供給である。


 供給の仕方は、枷に貯められた装備者の魔力を触れることで相手に送ることが出来る。


 一同が魔力供給をしていると、ギルドの入り口から喚き声が聞こえてきた。


「私はパス子爵家のデルフィ様だぞ!さっさと魔力供給させろ!!」

(うわっ……前言撤回…今日はハズレだ…)

「これはこれはデルフィ様。いかがされましたかな?」

「っ!おお!ギルドマスターこいつらが私の邪魔をしてくるんだ!」

「そうですか…ですが並ばないと、いつまでも供給できませんぞ?」

「おまえもか!!私をなめt」

「それ以上言わない方が良い。ここはアーク家の預かりですぞ?逆らえば……」

「っ!?…わ、分かった。オイ!並ぶぞ!」


(よく分からないが、アーク家ってすごいんだなぁ…)


 改めて自分の両親の凄さを思い知るカイトであった。
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