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2章 少年期

2話 誘拐1

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   ━━━神父の部屋━━━



 翌日。


 今日カイト達は、隣町の町はずれの教会に来ていた。


 教会での仕事は、魔力供給と教会の掃除である。


 この教会の神父や、シスターは魔力槽達にも優しく接してくれる数少ない人達であった。


 とは言っても、表立って施しをするわけにもいかないため、お菓子とお茶を出してくれる程度ではあったが。


 カイト達が、今日も教会での仕事を終わらせて談話室でお菓子を食べていると、カイトは尿意に襲われた。


 この教会のトイレは外にあり1度教会から出なければならない。


 カイトがトイレに行こうと立ち上がると、それに気づいたネリネが近づいてくる。


「…どうしたの?」

「いや、ちょっとトイレにね」

「…ついて行く」

「大丈夫!すぐ戻ってくるから」


 カイトの説得にネリネは不満そうだが頷いた。


 カイトは教会の外に出ると、端っこにあるトイレに向かった。


「ふ~。すっきりしたぁ……で?あんたら誰?」


 出てきたカイトを囲む4人の男達とシスター。


「お前がカイトだな?悪ぃが大人しく捕まってもらうぜぇ?」

「はぁ…訊いてるのはこっちなんだけどなぁ……」

「なに呑気に頭掻いてやがる。……おっと動くなよぉこっちにゃあ人質g」

「はいはい……捕まえにこないの?」


 カイトの態度に呆然とする4人とシスター。


「っ!なにしてる!早く捕まえろ!!」

「「「へ、へい!」」」


 リーダーの言葉でカイトに襲いかかる3人の男達。


「……なぁんちゃ…ってぇ!!」


 カイトは右から来た眼帯の男の伸ばして来た腕をつかんで、左から来たスカーフの男に投げつける。

 それで終わらず後方に居た短剣を持った男の懐に飛び込むと、男の顎に掌底を打つ。


 すかさず短剣を奪い取り、リーダーに投げつけるカイト。


「なっ!?」


 反応して首を左側に傾けるシスター。


 トスッ


 短剣はリーダーの顔の横スレスレで後ろの木に刺さった。


 リーダーは耐えきれず泡を吹いて気絶してしまうのだった。


「いっちょあがり!……大丈夫ですか?」

「はい…」


 一息ついたカイトにシスターが近づいてくる。


「お強いのですね?」

「…まあね」


 そう言って呻き声をあげる3人の方へ歩き始めるカイト。


 トンッ


「…でも、残念でした♪」


 シスターはカイトの首に手刀を入れる。


 綺麗に入った手刀で意識を失ったカイトを袋に詰めると、それを背負うシスター。


「強さは予想以上…でも詰めが甘いわねぇ」


 シスターはそう言うと闇の中に消えて行くのだった。


 翌日。


 アーク領は騒然となっていた。


 魔力槽になったとは言え、侯爵家の次男が行方不明になったのだ。噂にならないわけがない。


 人々は口々にどこどこの貴族だなんだと、噂し合っていた。


 アーク家はというと、フェクダは貧乏ゆすりをしながら報告を待ち、カメーリエは部屋にこもり、エルラーイはただひたすら木剣を振っていた。


 ネリネは後悔していた。


(無理にでもついて行くべきだった!…そうすればカイトは…)


 そこまで考えてネリネは気づく。


(ついて行ってそれで?…あたしは…カイトみたいに強く無い…)


 ネリネはどんどんネガティブに考え始めてしまうのだった。
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