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第14話

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 王宮の奥。近衛すら侵入が禁止されたプライベートなスペースに二つの影があった。
 国王とゴードンだ。

「いやー……今回は肝が冷えました」
「そりゃ儂もじゃ。アリシア嬢は肝がすわりすぎとりゃせんか?」
「ええ。いくら馬鹿の演技・・・・・・をしていたとはいえ、竜の逆鱗をつついている気分でした」

 二人はヴィンテージのワインを傾けながらオリーブの実を齧っていた。

「でもまぁ、僕が引っ掻き回したお陰でセドリックの古狸ふるだぬきも尻尾を出しましたし、結果論ですがアリシア嬢とアルフレッド殿も良い感じに落ち着きましたね」
「……ペット兼乗り物にしている時点でどうかと思うがのぅ」
「アリシア嬢ですからね」
「お主もすまんな……いつも損な役回りを押し付けて」
「いえいえ。表では馬鹿をやらせてもらえるので気楽なものです。それに、兄上たちが王位を継ぐならば王族として僕にできるのはこのくらいですから」

 別人を疑われそうなほどに利発な顔をしたゴードンが、国王へと視線を向ける。

「お父様だってずいぶん損をしてるじゃないですか。宰相の恨みを買ってまでアリシア嬢をアルフレッド殿に嫁がせるなんて」
「お利口さんに育っただけのご令嬢では、色々なものを背負ったアルフレッド殿のこころを動かすことは難しい。アリシアを選んだのは間違いじゃなかったわい」
「こころを動かすというか、ぎ払うというか……」

 自身をモデルにした耽美小説をばら撒かれた心の傷が痛んだゴードンは遠くを見て、それから頭を掻いた。

「まぁ、アリシア嬢もまんざらじゃなさそうですし、これで一件落着ですね」
「……だと良いが」
「何か不安でも?」
「……あのアリシア嬢じゃぞ? まだ何かが起こる気がせんか?」
「やめてくださいよ。僕はもうお腹いっぱいです。しばらくはお風呂屋のルアンナちゃんのところで癒されたいです」
「馬鹿な事を言うな。仮にも王族だろう?」
「良いんですよ。そういうことができるように馬鹿のふりをしてるんですから」

 ゴードンは爽やかに笑ってワインを煽った。
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