【完結】最強ロリ聖女のゆるゆりグルメ紀行

吉武 止少

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Sideノノ

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 お嬢様は泣きながら走っていた。

「私が、……助っ……け……!」

 顔色は血が通っていないのではないかというほどに白い。
 ぜひゅ、と変な呼吸音をさせ、ふらふらになりながらも走っていた。しかし、その結果として奇蹟のように人々が回復、避難できていた。

 街を守る憲兵たちや冒険者らしき者たちが非難を助ける中、お嬢様は爆発の中心部に向けて走っていた。
 中心に近づけば近づくほど被害は酷くなるが、お嬢様はお構いなしだ。
 倒壊した家屋を風や水で吹き飛ばし、下敷きになっていた人を助け出す。腹や腕を木材に貫かれて死の間際にいた人々を瞬時に助け、動けるまでに回復させる。
 回復魔法以外も自由に扱えるようになったせいで、お嬢様が”助けられる”範囲が大きく広がった。広がってしまった。
 その負担はそのままお嬢様に返ってくる。

「助っ…………ご、ん……さ……っ!」

 もうお嬢様の視界には私すら入っていない。
 すべてを投げ打ってでも、どんな犠牲を払ってでも助ける。そんな覚悟が滲むような行動だった。
 ふらふらと前に進みながら、無理やり紡がれた言葉。

 それを耳にした瞬間、気が狂いそうになった。

『助けられなくてごめんなさい。死なせちゃってごめんなさい』

 それは懺悔ざんげだった。

 お嬢様の心は、まだエクゾディス大樹林の最前線にいるのだ。
 畜生にも劣る下劣な王子と騎士たちによってつけられた、心の傷。それは癒えるどころか、今まさに傷口から血を滴らせていた。

——なぜお嬢様ばかりがこんな目に合わねばならないのか。

 優しく、まっすぐな方だ。
 多くの人を助け、救い、感謝や尊敬を集めて然るべき方だ。
 全知全能の神じゃないんだから、手のひらから零れる命があるのは当然のことだろう。むしろ、他の人では絶対にできないほどに多くの人を救っている。

 だというのに、謝罪と懺悔を口にし、自らの命を擦り減らすほど無理をしていた。
 人を助けるために走り回ったお嬢様はがれきに足を取られた。すでに体力の限界が来ていたのだろう。体が大きくかしぎ、そのまま倒れる。

「お嬢様!」
「助、ぇ、な、きゃ」

 お嬢様は這いずるようにして、しかしそれでも前に進もうとしていた。

「お嬢様、私がどこへなりとも背負います。ですから落ち着いてください!」

 そう告げて抱き上げようとしたその時だ。
 土煙がいまだに晴れない爆発の中心地から、化け物が現れた。

『イタゾ』『殺ス』『見ツケタ!』『ブチ犯シテヤル』『ヒザマズケ』『泣キ喚ケ!』『命乞イシロォ!』

 建物よりも巨大な体躯。
 皮膚はなく、赤黒い筋肉のようなものがみっちり詰まったそれは歪ながらも人のシルエットをしていた。特徴的なのは胸のあたりに埋め込まれた人間の顔だ。

——お嬢様を嵌めようとした元冒険者三人組。

 明らかに生きた状態のそれは、私とお嬢様を睨みつけて口々にゲスなことを口走る。

『裸デ土下座シロォ!』『命ダケハ助ケテヤル』『手足ヲモイデ可愛ガッテヤロウ!』『コノ詐欺師ドモガッ』『オ前ラノセイデコンナコトニ』『許サンゾ!』

 罵声とともに巨木よりも太い腕が伸びてくる。
 お嬢様の顔がゆがんだ。頭を押さえ、地に伏せながら小さくなって震えていた。
 巨大な手。野太い男の声。
 錯乱気味だったお嬢様の脳裏には、大樹林でのトラウマがフラッシュバックしているのだろう。

「ご、ごめんなさい……!」

 あれほど必死になって人々を救おうとしていたお嬢様が、小さくなって震えていた。

 なぜお嬢様を踏みつけにしようとする。
 なぜお嬢様を悲しませる。
 なぜお嬢様がこんな惨めな思いをしなければならない……!

 お嬢様からいただいた大剣を握り、目の前の怪物に向き直った。
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