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危機
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震えが止まらなかった。
——私が頑張れなかったら誰かが死ぬ。
その言葉が頭の中で何度もリフレインしているのに、身体はまったく動いてくれなかった。
身が竦む。
怒鳴り声。
私を責める声。
痛いと、やめてと泣く私をあざ笑い、黙れと殴る人たちの声。
害意と敵意の籠った声。
フラッシュバックするその声が、鎖のように私を縛り付けていた。
地面に倒れ、亀のように身を丸めていると轟音が響いた。
金属同士がぶつかるような激音に何とか頭をあげれば、
「お嬢様に! 関わるなッ! 金輪際! 二度とだッ!!!」
ノノが怒声とともに大剣を振るっていた。
手が真っ白になるほどに大剣を握りしめ、怒りに顔をゆがめ、……そして泣いていた。
——私のために泣いてくれていた。
土煙から現れた巨人が振るう剛腕を弾き、切り裂き、叩き潰す。
ノノの剣捌きはまさに剛剣と呼ぶに
巨人の胸に張り付いた顔が苦悶に歪められるも、大剣でパックリと切り裂かれた腕はぐじゅぐじゅと血肉をまき散らしながら再生していた。
『殺スゥ!!』『二人トモグチャグチャニナルマデ犯シテヤルッ』『後悔サセテヤル』『オ前ラサエ来ナケレバ』『オ前ラノセイダッ!』
胸に張り付いた顔が口々に勝手なことを言う。
……なんなの、これは。
魔物だとしても異色。真似るだけならばともかく人の言葉を喋る魔物なんてきいたことがなかった。
『鑑定:縺ゅ>縺�∴縺� �撰シ
托シ抵シ�ェ繧ゥ譁�ュ怜喧縺代ヱ繧ソ繝シ繝ウ』
何……これ……?
『補足:ナノマシンを用いた情報解析を阻害されています』
「な、なんで? 何が起こってるの?」
『推測:魔王種によって意図的につくられた魔物かと。近くに魔王種がいる可能性もあるのでご注意を』
唐突な言葉に思考がフリーズした。
魔王種。
すべての魔物を統べる王。
単独で国を崩壊させるほどの、理不尽なまでの力の塊。
それがここにいる?
あの三人組を魔物にした?
何で? どうやって?
頭の中が疑問でいっぱいになったところでノノの怒声が私の意識を現実へと引き戻した。
「お嬢様のせいにするなッ! お嬢様は何も悪くないッ!」
ノノの剣速があがり、自身よりも大きな剣が暴風のように振るわれる。
『ガァァァァ!』『小癪ナ!』
斬ったそばから再生していく怪物だが、ノノがそれを上回った。
怪物の腕が叩き斬られて宙を舞う。
赤紫色の血液をまき散らしながら腕が吹き飛び、地面に落ちた。
ノノは疾走した。このまま一気に勝負を決めるつもりなんだろう。
大剣を振りかぶり、胸に並んだ三つの顔へと迫ったところで、ぼごり、と異変が起きた。
顔の一つが胸の中に埋まり、消えたのだ。
代わりに、斬られたはずの腕がびくびくと震えた。
手の甲に顔が生まれ、ニタリと笑った。
『油断シタナァ!!!』
怪物の腕は手指を使って地面を掻きながら私に迫った。
「あ、」
逃げることはおろか、まともに声を出すことすら出来なかった。
驚愕に目を見開いたノノが私を見つめる。明確な隙を怪物が見逃すはずもなく、ノノはあっさりと叩き落された。
私にも怪物の腕が迫る。
——巨大な手のひらが眼前に広がった。
——私が頑張れなかったら誰かが死ぬ。
その言葉が頭の中で何度もリフレインしているのに、身体はまったく動いてくれなかった。
身が竦む。
怒鳴り声。
私を責める声。
痛いと、やめてと泣く私をあざ笑い、黙れと殴る人たちの声。
害意と敵意の籠った声。
フラッシュバックするその声が、鎖のように私を縛り付けていた。
地面に倒れ、亀のように身を丸めていると轟音が響いた。
金属同士がぶつかるような激音に何とか頭をあげれば、
「お嬢様に! 関わるなッ! 金輪際! 二度とだッ!!!」
ノノが怒声とともに大剣を振るっていた。
手が真っ白になるほどに大剣を握りしめ、怒りに顔をゆがめ、……そして泣いていた。
——私のために泣いてくれていた。
土煙から現れた巨人が振るう剛腕を弾き、切り裂き、叩き潰す。
ノノの剣捌きはまさに剛剣と呼ぶに
巨人の胸に張り付いた顔が苦悶に歪められるも、大剣でパックリと切り裂かれた腕はぐじゅぐじゅと血肉をまき散らしながら再生していた。
『殺スゥ!!』『二人トモグチャグチャニナルマデ犯シテヤルッ』『後悔サセテヤル』『オ前ラサエ来ナケレバ』『オ前ラノセイダッ!』
胸に張り付いた顔が口々に勝手なことを言う。
……なんなの、これは。
魔物だとしても異色。真似るだけならばともかく人の言葉を喋る魔物なんてきいたことがなかった。
『鑑定:縺ゅ>縺�∴縺� �撰シ
托シ抵シ�ェ繧ゥ譁�ュ怜喧縺代ヱ繧ソ繝シ繝ウ』
何……これ……?
『補足:ナノマシンを用いた情報解析を阻害されています』
「な、なんで? 何が起こってるの?」
『推測:魔王種によって意図的につくられた魔物かと。近くに魔王種がいる可能性もあるのでご注意を』
唐突な言葉に思考がフリーズした。
魔王種。
すべての魔物を統べる王。
単独で国を崩壊させるほどの、理不尽なまでの力の塊。
それがここにいる?
あの三人組を魔物にした?
何で? どうやって?
頭の中が疑問でいっぱいになったところでノノの怒声が私の意識を現実へと引き戻した。
「お嬢様のせいにするなッ! お嬢様は何も悪くないッ!」
ノノの剣速があがり、自身よりも大きな剣が暴風のように振るわれる。
『ガァァァァ!』『小癪ナ!』
斬ったそばから再生していく怪物だが、ノノがそれを上回った。
怪物の腕が叩き斬られて宙を舞う。
赤紫色の血液をまき散らしながら腕が吹き飛び、地面に落ちた。
ノノは疾走した。このまま一気に勝負を決めるつもりなんだろう。
大剣を振りかぶり、胸に並んだ三つの顔へと迫ったところで、ぼごり、と異変が起きた。
顔の一つが胸の中に埋まり、消えたのだ。
代わりに、斬られたはずの腕がびくびくと震えた。
手の甲に顔が生まれ、ニタリと笑った。
『油断シタナァ!!!』
怪物の腕は手指を使って地面を掻きながら私に迫った。
「あ、」
逃げることはおろか、まともに声を出すことすら出来なかった。
驚愕に目を見開いたノノが私を見つめる。明確な隙を怪物が見逃すはずもなく、ノノはあっさりと叩き落された。
私にも怪物の腕が迫る。
——巨大な手のひらが眼前に広がった。
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