【完結】最強ロリ聖女のゆるゆりグルメ紀行

吉武 止少

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スイートポテト

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 ノノが取り出したのは赤紫色の植物。太った根っこみたいな見た目のそれは、サツマイモというおいもの一種らしい。

「ちゃちゃっと作れるものにします」

 毒々しい赤紫の皮を剥くと、明るい黄色の中身が見えた。手ごろなサイズに切り分けて、ざるをセットしたお鍋に放り込む。

「ふむ? 茹でるのですか?」
「いえ。沸騰したお湯の蒸気で温める——”蒸す”という調理法です」

 目を輝かせたロンドさんがメモを取ってるけど、これきっと売るつもりなんだろうな。味見どころか何ができあがるかすら分からないのに、と思わなくもないけれど、ノノが作るものに間違いはないから別に良いや。

 小さく切り分けたから一〇分もしないうちに火が通ってほっくり。
 湯気を立てたサツマイモはなんとなく透明感が出て、黄色というよりも金色に見えた。

「これをマッシャーで潰します。——アーヴァイン氏が」
「俺が!?」
「ええ。量を作るとなると重労働なので」
「殿下、ここはひとつ挑戦です。……料理名にはエンペラーの名を冠してはく付けを……!」

 ロンドさん、心の声が漏れてるよ。
 アーヴァインもちょっと戸惑ってたけど割と素直に従った。プッタネスカの時にも楽しそうにハーブを砕いたりしてたし、もしかしたら皇族で料理とかさせてもらえないから楽しいのかもしれない。

「できた——ぬ? 何を入れた?」
「塩と砂糖と牛乳、バターです。なめらかになるまで混ぜてください」
「まかせろ」
「塩も入れるんですね?」

 あ、これは厚焼き玉子の時に聞いたから知ってる。

「お塩を少しだけ入れると甘味が引き立つんだよ!」
「さすがお嬢様です! やはり聖女料理の創設者だけあります!」
「えっ!? 創設してないよ!?」
「……マリィにだけ甘すぎないか……?」
「気持ちは分かりますけどね」

 ねぇ、聖女料理って何?
 聖女クレープに聖女天丼だけでもう十分だよ。ノノが頑張って作ってくれたんだからどちらかと言えば私よりもノノの名前を入れたい。

 調味料と一緒にしっかり混ぜたサツマイモをオーブン用の天板に並べていく。ほとんどは細長い形だけど、いくつかは一口大に丸めたり、フルーツナイフを使ってちょちょんと模様をつけたりしていく。
 並べ終えたそれらに卵黄を崩して刷毛はけで塗ったら、

「あとは焼くだけです。スイートポテト、というお菓子です」
「すいーとぽてと!」
「ふむ、では商品名は皇太子スイートポテトで——」
「却下だ。俺が考えたものじゃない」
「却下です。聖女スイートポテトを希望します」
「まって!? なんで私!? 作ったのノノだよ!?」

 流れるように聖女料理になりそうだったので慌てて否定するけれど、手を洗ったノノにガッシリ肩を掴まれてしまった。

「良いですかお嬢様。ノノは料理を頑張りました。それもこれもお嬢様のためです」
「あ、ありがと」
「ですのでお嬢様のための料理、と言っても過言ではないのです」
「うん……うん?」
「つまりこれも聖女料理なんです。良いですね?」
「は、はい」

 な、なんか押し切られた……!

 紅茶の代わりに消化を助けてくれるハーブティーを淹れてもらい、準備万端だ。すでにオーブンからは甘い香りが漂ってきていて、私の胃が必死に動いているのが分かる。

 プッタネスカでお腹いっぱいだったけど、絶対に美味しいものが出てくるんだから少しでも隙間を作らないと……!

「さて、焼けました」
「わぁっ! かわいいっ!」
「ええ、では召し上がりましょうか」

 全員分を皿に盛り付けてサーブしてくれた。みんなのやつはシンプルな形をしているけれど、私のところに盛り付けられたのは小さなボール型のものと、

「ハリネズミか。上手いものだな」

 ノノがフルーツナイフで作ったハリネズミの形をしたスイートポテトだ。黄金色の体に茶色に焦げ目のついたとげとげツンツンな先っぽはグラデーションが鮮やか。
 黒ゴマでできた目と、尖った鼻先は今にも動き出しそうだった。

「ノノ、どうしよう……可愛すぎて食べられない」
「ぐぅっ!?」
「う、上目遣いは強いですね……」
「ほら、ロンドさんもアーヴァインさんも食べれないって——あ、鼻血が」
「いえ、これは良い鼻血なので大丈夫です」

 本当に大丈夫?
 すごい勢いでダバダバ出てるけど……。

「まずは小さな丸の方をお召し上がりください」
「うん。……かわいい」
「はうぁっ」

 ハリネズミの鼻先をつんつんしたら何故かノノの鼻血が多くなった。
 えっ、これ繋がってるとかじゃないよね……?

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