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移動方法
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「はい、完成!」
「さすがお嬢様です!」
「うまそ……」
「駄目よ、お昼なんだから」
「わーってるよ」
絶望の淵に立っていた私を救い出してくれたのはやっぱりノノだった。
作り終わったサンドイッチのいくつかをホットサンドに加工するから手伝ってほしいとお願いされたから、落ち込んでいる暇なんてなくなったのだ!
ホットサンドをつくるための、ぎゅっと挟めるタイプの鉄板にバターを塗って、サンドイッチを挟んだらずらさないように気を付けながら炙っていく。
近すぎると焦げちゃうけれど遠すぎると焼き目がつかないので加減が難しかった。最初の一つ二つは失敗してしまったけれども、ロンドさんとドルツさんが食べてくれたので痕跡は残っていない。
サーモンは火が通っちゃうのでホットサンドにはしなかったけれど、代わりにドルツさんのリクエストでたっぷりのチーズに千切りキャベツとベーコンを挟んだがっつり系のホットサンドも作った。
あんまり重たいものは酔っちゃうと思ったんだけど、私の10倍以上食べられるドルツさんなら平気かな。
私も一口なら頑張れるかもしれないし、自分で作ったとなれば格別のはずだ。
「お昼楽しみ!」
朝の残りの唐揚げもサーモンもあるのでどれを食べるか迷っちゃうけれど、さくっと食べれるなら何でもいい。
「それじゃ、そろそろ出発ですね」
「うん……皆に提案があるの」
「提案、ですか」
「疫病を止めるなら、早い方が被害は少ないよね?」
今この時にも苦しんでいる人がたくさんいるだろうし、時間が掛かれば掛かるほど手遅れになる人が増えるだろう。
だから、
「馬を限界速度で走らせてください」
「そんなことをすれば馬が潰れてしまいます!」
「却って遅くなっちまうぞ?」
「私が回復魔法で補強して移動します」
馬車の中で動かずに魔法を使うだけなら、一日中だってできる。
馬を回復しながら走らせ、昼食も馬車の中で摂る。そのためにさくっと食べられるものをお願いしたのだ。
最高速で移動すれば、きっと救える命は多くなるはずだ。
——失わせない。
そんなことは無理だって分かってる。
人は必ず死んでしまう。大樹林でも何人もの兵士や騎士が命を落とした。
でも、私のせいで人が死ぬのはもう嫌なんだ。
私が頑張らなかったせいで。
私が諦めたせいで。
私が楽をしようとしたせいで。
助かるはずの命が失われることは耐えられなかった。
「揺れで馬車酔いするようならそれも癒します。ガタガタの道でお尻が痛くなったらそれも癒します」
「……通常の三倍。いや、休憩もほとんど取らなくていいから四倍は進めるな」
「経由する街も減らせますからもっと早くなります。一か所だけ、食料の手配のために寄ってもらわねばなりませんが」
「食料も空間魔法の中にあるから大丈夫。大鍋も魔法で作るから、現地で料理の手伝いをしてくれる人を募ればどこにも寄らなくていい」
「ルートを変えます。まっすぐ王都に向かいましょう」
「道も土魔法で均すし、風魔法で追い風にする」
「そんなことをすれば魔力がもたないだろう!?」
私の言葉に反対したのはジグさんだ。
「魔力が切れれば意識は失うし、死ぬほど苦しい思いをするんだぞ。無理をして進もうとしても無駄に苦しむだけでいい結果にはならねぇぞ」
「もつよ?」
数年前までは無理だったかもしれないけれど、今の私なら絶対にもつ。
「さすがお嬢様です!」
「うまそ……」
「駄目よ、お昼なんだから」
「わーってるよ」
絶望の淵に立っていた私を救い出してくれたのはやっぱりノノだった。
作り終わったサンドイッチのいくつかをホットサンドに加工するから手伝ってほしいとお願いされたから、落ち込んでいる暇なんてなくなったのだ!
ホットサンドをつくるための、ぎゅっと挟めるタイプの鉄板にバターを塗って、サンドイッチを挟んだらずらさないように気を付けながら炙っていく。
近すぎると焦げちゃうけれど遠すぎると焼き目がつかないので加減が難しかった。最初の一つ二つは失敗してしまったけれども、ロンドさんとドルツさんが食べてくれたので痕跡は残っていない。
サーモンは火が通っちゃうのでホットサンドにはしなかったけれど、代わりにドルツさんのリクエストでたっぷりのチーズに千切りキャベツとベーコンを挟んだがっつり系のホットサンドも作った。
あんまり重たいものは酔っちゃうと思ったんだけど、私の10倍以上食べられるドルツさんなら平気かな。
私も一口なら頑張れるかもしれないし、自分で作ったとなれば格別のはずだ。
「お昼楽しみ!」
朝の残りの唐揚げもサーモンもあるのでどれを食べるか迷っちゃうけれど、さくっと食べれるなら何でもいい。
「それじゃ、そろそろ出発ですね」
「うん……皆に提案があるの」
「提案、ですか」
「疫病を止めるなら、早い方が被害は少ないよね?」
今この時にも苦しんでいる人がたくさんいるだろうし、時間が掛かれば掛かるほど手遅れになる人が増えるだろう。
だから、
「馬を限界速度で走らせてください」
「そんなことをすれば馬が潰れてしまいます!」
「却って遅くなっちまうぞ?」
「私が回復魔法で補強して移動します」
馬車の中で動かずに魔法を使うだけなら、一日中だってできる。
馬を回復しながら走らせ、昼食も馬車の中で摂る。そのためにさくっと食べられるものをお願いしたのだ。
最高速で移動すれば、きっと救える命は多くなるはずだ。
——失わせない。
そんなことは無理だって分かってる。
人は必ず死んでしまう。大樹林でも何人もの兵士や騎士が命を落とした。
でも、私のせいで人が死ぬのはもう嫌なんだ。
私が頑張らなかったせいで。
私が諦めたせいで。
私が楽をしようとしたせいで。
助かるはずの命が失われることは耐えられなかった。
「揺れで馬車酔いするようならそれも癒します。ガタガタの道でお尻が痛くなったらそれも癒します」
「……通常の三倍。いや、休憩もほとんど取らなくていいから四倍は進めるな」
「経由する街も減らせますからもっと早くなります。一か所だけ、食料の手配のために寄ってもらわねばなりませんが」
「食料も空間魔法の中にあるから大丈夫。大鍋も魔法で作るから、現地で料理の手伝いをしてくれる人を募ればどこにも寄らなくていい」
「ルートを変えます。まっすぐ王都に向かいましょう」
「道も土魔法で均すし、風魔法で追い風にする」
「そんなことをすれば魔力がもたないだろう!?」
私の言葉に反対したのはジグさんだ。
「魔力が切れれば意識は失うし、死ぬほど苦しい思いをするんだぞ。無理をして進もうとしても無駄に苦しむだけでいい結果にはならねぇぞ」
「もつよ?」
数年前までは無理だったかもしれないけれど、今の私なら絶対にもつ。
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