【完結】最強ロリ聖女のゆるゆりグルメ紀行

吉武 止少

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入り混じる思惑

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「魔力が切れれば意識は失うし、死ぬほど苦しい思いをするんだぞ。無理をして進もうとしても無駄に苦しむだけでいい結果にはならねぇぞ」
「もつよ?」

 数年前までは無理だったかもしれないけれど、今の私なら絶対にもつ。

「それに、もし気絶したら太ももか肩を刺してくれればすぐ起きるもん」
「なっ」
「ッ!?」
「馬鹿か!?」
「馬鹿じゃないよ。傷は魔法で癒せるし、私が起きれば救える命があるんだから」

 私の言葉にしかし、ジグさんはおろかロンドさんやドルツさんまでもが苦しそうな顔をしていた。
 ノノは指が真っ白になるほどに握り込み、食い込んだ爪で血をにじませていた。

「……お嬢様。やはりブレナバンに行くのはやめませんか?」
「ごめん」

 それはできない。
 だって、そんなことをしたら救えるはずの命が救えなくなるから。

「……償わせる……何が何でも償わせる。すまん……!」

 なんでジグさんは泣いてるんだろう。
 どこか痛いのかな。

 ***

 王城に、火の手があった。
 城そのものが燃えているわけではない。
 中庭に用意された木材に火がつけられ、その中に死体が投げ込まれていたのだ。

 疫病で死んだ者たちだ。

 人の脂が焼ける不快な臭いとともに黒煙がぶすぶすと立ち上っていた。

「ふん……他に発病者は?」
「おりません」
「では予定通りに処刑を執り行う」

 第二王子が号令をかけると同時、一人の人間が兵士に引きずられてやってきた。

 それまでとは違い、生きた人間だ。

「流行り病をばら撒いたばかりか、王城を病で穢した罪を償え」
「殿下! おやめください殿下! 病は王命で研究していたのです!」
「放り込め」
「殿下ぁ!」

 悲鳴を上げる大臣は四肢を持ち上げられ、そのまま
 耳をつんざくような悲鳴があがり、そしてすぐに消えた。

「ふん……次は異母弟マーカスか。まだ捕まらないのか?」
「申し訳ありません。徴発された村人の数が予想よりも多く」
「さっさと殺せ。マーカスに与する者など我が国には要らぬ」
「し、しかしこちらの被害が……」
「王都の民も俺のために死ねるのならば本望だろう。人が減り、風通しが良くなれば病もおさまるであろう?」
「……かしこまりました」
「徴発で病をもらってくるなよ? 発病者は見つけ次第殺して家ごと焼け」

 第二王子の言葉に部下たちが顔をこわばらせる。王城で働く者は、王都で生まれ育った者も少なくはなかった。
 とはいえ反抗することはできない。
 今さっき、生きたまま焼かれた大臣を見せつけられたばかりなのだ。
 諫言をすればほぼ間違いなく勘気に触れる。どのような処刑方法かはわからずとも、結果だけははっきりと見えていた。

「はっ」
「発病者を隠した者も同罪だ。すぐに焼け」

 顕現した地獄は、更なる状況の悪化を見せていた。

***

「あいつはどこ行ったんだ! この忙しい時に!」

 魔王種が頭を掻きむしっていた。怒りと焦りを体現するかのように魔王種を取り囲む植物が悶えていた。
 互いに憎みあうかのように絡み合い、締め付けあう。
 ちぎり、折れ、枯れた先からさらに植物が生え、再び絡み合って悶える。

 そうして枯死した植物が地層のように積み重なった上に、ぴょろりと一本の植物が生えた。
 驚異的な速度で成長した植物は先端に実をつけた。
 むくむくと大きくなった木の実はぱっくりと割れ、そこから目玉を覗かせた。ぎょろりと動くそれは明らかな意思を持った何かだ。

「……審判の樹、じゃと……?」

 魔王種は戸惑いながらその実へと手を伸ばした。ぽとり、と手のひらに落ちたそれはやがて一つの方向を見据える。
 大樹林より離れてなお遠く、その視線が向いた先には。

「死をもてあそぶ愚か者か」

嫌な臭いを放つ黒煙がたなびいていた。
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