【完結】最強ロリ聖女のゆるゆりグルメ紀行

吉武 止少

文字の大きさ
94 / 95

後日談

しおりを挟む
 元・ブレナバン王国の王城跡地。
 簡単なテントを張って臨時本部になっているそこの一角からは、王都全体が見渡せる。

 もうもうと上がる白い煙は、戦いによるものでもなければ死者を焼くためのものでもない。
 炊事の煙だ。

「ようやく他国からの応援も届きましたが……高ランクの魔物肉を山のように持っているとは驚きました」
「いつか食べるかなって」
「挨拶したいというものが大挙しておりまして」
「えー……私もう聖女じゃないし、やだなぁ」
「ははは。マリアベル様をだと思っている人はいませんよ」

 私が全力で魔法を放ったことで、マーカスは痕跡すら残さずに消えた。
 それどころか暴走気味だった回復魔法はブレナバン全域を癒し、麦角も疫病も消し去ってしまったのだ。

 私はすぐさま気を失ってしまったけれど、その時の光景を、この国の全員が奇跡と呼んでいた。

「下の広場に集めておりますので、上から手を振るだけでもお願いできませんか?」
「分かった」

 臨時で財務を握っているロンドさんに連れられて端っこまで移動すると、手を振った。
 同時に、空気が爆発したんじゃないかってくらいの大歓声があがる。

「御使い様! ありがとうございます!」
「息子を救ってくださり感謝します!」
「女神様ー! ありがとー!」
「死んだパパがね、お別れに来てくれたの! 女神様のお陰だよ!」
「お袋に別れの挨拶ができました! ありがとうございます!」

 本来ならば、生命を穢す王は冥界を管理する存在だったらしい。
 私がそれを消し飛ばしたせいで一時的に冥界と現世との行き来ができるようになった。

 死んだ人を生き返らせることはできないけれど、理不尽で唐突な死を迎えた人々は、残した家族や恋人の元にいって挨拶ができたんだとか。
 実際に自由になれたのは10分かそこらだったみたいだけれど、それでもきちんとお別れができたというのは大きい。

 区切りがないと、人は前を向けないから。

 そう気づいたのは、私がマーカスを消し飛ばしてからだ。

 こころのが取れたように、私は大きく気持ちが変わっていた。
 復興までたどり着いていないけれど、瓦礫をどけたり炊き出しに参加したりと、未来に向けて動き出した人の姿が見えたのも良かったのかもしれない。

「さて。そろそろ行こっかな。もう食料は私が使っても大丈夫なんだよね?」
「ええ。今後も復興のために商人ギルドが総力を掛けて輸送しますので……ジグには煮え湯を飲んでもらいますけど」
「全額借金、だっけ? ちょっとかわいそうな気もするけど」
「王族……元王族の責務だと本人も言っていましたから」

 私が目覚めた後で、首を差し出そうとしたジグさんだけど、臨時政府のトップに就任した。
 炊き出しの手伝いを始めた私に首を、首を、と迫ってきたので、ノノが𠮟ってくれたのだ。

「馬鹿なことを言っている暇があるなら復興を手伝いなさい! お嬢様が必死に料理をなさっているのが見えないのですか!」

 最初は料理の手伝いをしようとしてたけれど、どちらかというと邪魔になるから、と連れ出されて今は元王族として政治系のとりまとめに忙しくしてる。「全部終わったら辞任して首を届けに行く」なんて言ってるらしいので私は全力で逃げようと思う。

 そして、当のノノは昨日まで徹夜で炊き出しの指示をとって、今はリーアと一緒に寝ているはずだ。
 本当は私も寝てたんだけれど、やりたいことがあったから起きてきた、というわけだ。

「さて、それじゃあ頑張りますか」

 うーん、と伸びをすると、私はふらりと歩き始めた。

 ***

 ノノが目を覚ました時、抱くようにして一緒に床に就いたはずのマリアベルが見えなかった。

「お嬢様……?」
「んむ……マリィなら二時間ほど前にベッドから出ていったぞ?」
「気づいていたならなぜついていかなかったのです!」

 悲鳴を上げて走り始めたノノに、寝ぼけ眼のリーアが追随する。

「過保護じゃの。マリィは妾よりもずっとナノマシン適合率が高いのじゃ。滅多なことで遅れなど取らんというに」
「その滅多なことが起きたらどうするのですか!?」

 バタバタと王城を走り回り、中庭や裏手を確認したノノの鼻腔に、嗅ぎなれない匂いが刺さった。
 嫌な臭いではない。
 どちらかといえば、食欲をそそるような、肉が焼ける時の匂いだ。

 とはいえ、炊き出しではありえない。
 多くの人々を賄わねばならない炊き出しでは野菜をたくさん摂れるスープに、エネルギー源として大量生産したパンがほとんどなのだ。
 多少のバリエーションがあったとしても、肉を焼くようなメニューが出るはずなかった。

 もしや、と匂いを追いかければ、

「あ、ノノ! おはよう!」
「お嬢様! ご無事でしたか!」
「? うん。いま起こしに行こうと思ってたの」

 瓦礫を片づけて作った簡易的なキッチンスペースに、マリアベルが立っていた。

しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

十年間虐げられたお針子令嬢、冷徹侯爵に狂おしいほど愛される。

er
恋愛
十年前に両親を亡くしたセレスティーナは、後見人の叔父に財産を奪われ、物置部屋で使用人同然の扱いを受けていた。義妹ミレイユのために毎日ドレスを縫わされる日々——でも彼女には『星霜の記憶』という、物の過去と未来を視る特別な力があった。隠されていた舞踏会の招待状を見つけて決死の潜入を果たすと、冷徹で美しいヴィルフォール侯爵と運命の再会! 義妹のドレスが破れて大恥、叔父も悪事を暴かれて追放されるはめに。失われた伝説の刺繍技術を復活させたセレスティーナは宮廷筆頭職人に抜擢され、「ずっと君を探していた」と侯爵に溺愛される——

「無能」と捨てられた少女は、神の愛し子だった――。 凍てつく北の地で始まる、聖獣たちと冷徹公爵による「世界一過保護な」逆転生活。

秦江湖
恋愛
魔法適性「鑑定」がすべてを決める、黄金の国ルミナリス。 名門ベルグラード公爵家の末娘アデリーンは、十五歳の鑑定式で、前代未聞の『鑑定不能(黒の沈黙)』を叩き出してしまう。 「我が家の恥さらしめ。二度とその顔を見せるな」 第一王子からは婚約破棄を突きつけられ、最愛の三人の兄たちからも冷酷な言葉とともに、極寒の地「ノースガル公国」へ追放を言い渡されたアデリーン。 着の身着のままで雪原に放り出された彼女が出会ったのは、一匹の衰弱した仔狼――それは、人間には決して懐かないはずの『伝説の聖獣』だった。 「鑑定不能」の正体は、魔力ゼロなどではなく、聖獣と心を通わせる唯一の力『調律師』の証。 行き倒れたアデリーンを救ったのは、誰もが恐れる氷の公爵ゼノスで……。 「こんなに尊い存在を捨てるとは、黄金の国の連中は正気か?」 「聖獣も、私も……お前を離すつもりはない」 氷の公爵に拾われ、聖獣たちに囲まれ、これまでの不遇が嘘のような「極上溺愛」を享受するアデリーン。 一方で、彼女を捨てた黄金の国は、聖獣の加護を失い崩壊の危機に直面していた。 慌ててアデリーンを連れ戻そうとする身勝手な王族たち。 しかし、彼らの前には「復讐」の準備を終えたアデリーンの兄たちが立ちはだかる。 「遅いよ。僕らのかわいい妹を泣かせた罪、一生かけて償ってもらうからね」 これは、すべてを失った少女が、真の居場所と愛を見つけるまでの物語。

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました【完結】

iru
恋愛
第19回 恋愛小説大賞エントリーしています。ぜひ1票お願いします。 小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

追放聖女だってお茶したい!─セカンドライフはティーサロン経営を志望中─

石田空
ファンタジー
「ミーナ今までありがとう。聖女の座を降りてもらおう」 貴族の利権関係が原因でいきなり聖女をクビになった庶民出身のミーナ。その上あてがわれた婚約者のルカは甘味嫌いで食の趣味が合わない。 「嫌! 人の横暴に付き合うのはもうこりごり! 私は逃げます!」 かくしてミーナは神殿から脱走し、ティーサロン経営のために奔走しはじめた。 ときどき舞い込んでくるトラブル。 慌ててミーナを探しているルカ。 果たしてミーナは理想のセカンドライフを歩めるのか。 甘いお菓子とお茶。そしてちょっとの恋模様。 *サイトより転載になります。

【完結】家族に愛されなかった辺境伯の娘は、敵国の堅物公爵閣下に攫われ真実の愛を知る

水月音子
恋愛
辺境を守るティフマ城の城主の娘であるマリアーナは、戦の代償として隣国の敵将アルベルトにその身を差し出した。 婚約者である第四王子と、父親である城主が犯した国境侵犯という罪を、自分の命でもって償うためだ。 だが―― 「マリアーナ嬢を我が国に迎え入れ、現国王の甥である私、アルベルト・ルーベンソンの妻とする」 そう宣言されてマリアーナは隣国へと攫われる。 しかし、ルーベンソン公爵邸にて差し出された婚約契約書にある一文に疑念を覚える。 『婚約期間中あるいは婚姻後、子をもうけた場合、性別を問わず健康な子であれば、婚約もしくは結婚の継続の自由を委ねる』 さらには家庭教師から“精霊姫”の話を聞き、アルベルトの側近であるフランからも詳細を聞き出すと、自分の置かれた状況を理解する。 かつて自国が攫った“精霊姫”の血を継ぐマリアーナ。 そのマリアーナが子供を産めば、自分はもうこの国にとって必要ない存在のだ、と。 そうであれば、早く子を産んで身を引こう――。 そんなマリアーナの思いに気づかないアルベルトは、「婚約中に子を産み、自国へ戻りたい。結婚して公爵様の経歴に傷をつける必要はない」との彼女の言葉に激昂する。 アルベルトはアルベルトで、マリアーナの知らないところで実はずっと昔から、彼女を妻にすると決めていた。 ふたりは互いの立場からすれ違いつつも、少しずつ心を通わせていく。

若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!

古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。 そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は? *カクヨム様で先行掲載しております

混血の私が純血主義の竜人王子の番なわけない

三国つかさ
恋愛
竜人たちが通う学園で、竜人の王子であるレクスをひと目見た瞬間から恋に落ちてしまった混血の少女エステル。好き過ぎて狂ってしまいそうだけど、分不相応なので必死に隠すことにした。一方のレクスは涼しい顔をしているが、純血なので実は番に対する感情は混血のエステルより何倍も深いのだった。

処理中です...