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本編
3 (悪役令嬢:前世1)
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私の生まれた家は、お金持ちとの呼ばれるような家だった。
産まれた時から中学生まで、日本で一番と言っていいほどに父の会社は大きく裕福な暮らしをしていたためか、私のプライドというものは自然と高くなっていった。
小等部から高等部まで存在する女学園に通い、プライドの高い私に友達と呼べる人は誰一人としていなかった。
だが高等部に上がる少し前に父の会社が潰れ、お金のない私は女学院の高等部へ上がれなくなってしまった。
今まで住んでいた家は家賃が高く住めなくなってしまったために引っ越し、その先の近くの公立高校を受け、入学することとなった。
だが、中等部で既に高校3年間分の勉強を終え、学院の中で一番を取っていた私には、偏差値50程度の平凡高校で友人もいない生活はつまらなかった。
「俺、嶋田祐介っていうんだ。よろしく」
そんな中での彼と出会いは、高校二年生の春だった。
クラス発表を終え、指定された席へ座ったとき話しかけてきたのは、彼だった。私の苗字が鷹田で彼は嶋田だったため、隣の席になったのだ。
話しかけられたとき、高校に入ってから今まで話しかけられたことなど片手で数えられるほどしかなかったために私に話しかけているのだと思わず、彼を無視してしまった。
形的に無視をしてしまったにもかかわらず、彼はめげずに私の席の前へしゃがみ込み私の顔を見て話しかけた。
「ねえ、なんて言う名前?」
私は本を読もうと鞄の中から本を探していた手を止めると、彼を見た。
「…私に話しかけているんですか?」
「うん、君以外に誰がいるって言うんだ」
彼は笑いながらそう言うと、私に片手を伸ばした。
「俺嶋田っていうんだ。よろしく、鷹田さん」
「…はい。…あの、少し疑問に思ったんですけどなぜ私の名前を知っているのですか?」
私は少し戸惑いながらもその手を握り返すと、自己紹介されたときに感じた疑問を口にする。
彼はしまった、という表情をすると、しどろもどろになりながら応えた
「えーと…あ、そう。鷹田さんって有名だったから」
視線を泳がしながら言う姿を見て騙されるほど私も馬鹿ではないが、わざわざ深追いすることでもないと思い、何も聞かなかった。
「あ、そうだ。鷹田さんさっきから敬語だけどタメで話してよ。せっかく同じクラスになったのに赤の他人みたいじゃん」
にかっと笑って言う彼に少し関心した。今まで話しかけてきた人は片手で数えられるほどならいたが、それでもこんなにも普通の会話をしようとしたり、仲良くしようとする人などいなかった。だから、こんな私にも仲良くしようとしてくれる人がいるのだと。
以前の女学院に通っていたころの私なら『気安く話しかけてくれませんか?』と話しかけられた時点で言っていただろうが、女学院の生徒でなくなってから1年程立ったこともあり、私がそんなことを言えるような立場ではない(もちろん昔の私もだが当時はそんな風に考えることができなかった)とわかっていたので言わなかったし、考えもしなかった。
「わかりまし…わかったわ。改めてよろしく、嶋田くん」
私がそう言えば、彼は私の顔を見開いた目で見た後嬉しそうに笑った。
それから半年ほど経ち、高校2年生のメインイベントである修学旅行の日が来た。
結局半年間、彼以外に友達のできなかった私は、同じ部屋のペアをつくるときに余った者同士でペアになった。修学旅行にそこまでの興味を持たなかった私は相手が誰でもよかったが、相手は私とペアになってしまい気の毒だと思った。
ペアになった子は同じクラスの木下愛由美さんという子だった。
周りに興味のなかった私はペアになったことで彼女と初めて話すことになったのだが、彼女もまた、彼と同じように私に物怖じしない人だった。
それがわかったのは、私たちが泊まるホテルの部屋に入ってから、沈黙が続いていたときだった。
彼女は何も話さない私に気を遣ったのか、スマホから顔を上げると私に話しかけた。
「…鷹田さんってさあ、嶋田くんと付き合ってるの?」
「え?」
突然話しかけられただけでなく、質問の内容もありえない内容だったために私の口から間抜けな声がでる。
「ほら、教室でもよく話してる姿見るし、クラスの女子がそーゆー噂してたからちょっと気になって」
「…嶋田くんはいい人だから、あまり話さない私に気を遣ってコミュニケーションを取ろうとしてくれてるだけだと思いますよ」
以前から彼が私に話しかけてくれているのは、気を遣ってくれているからだろう。そうに違いないと考えていたために、私は思ったままのことを口に出す。
「…あれで伝わってないのはある意味嶋田くんが可愛そう…」
「何か言いましたか?」
ぼそりと彼女が何かを呟いたように聞こえたために聞き返せば、彼女は何でもないと首を横に振る。
「…木下さんは、部屋のペアが私で嫌だと思わないのですか?」
私は部屋割りが決まった時から感じていた疑問を彼女に聞く。
『木下さん、鷹田さんと同じ部屋になるけどそれでいい?』
学級委員である子が木下さんに聞いた時、みんな愛想のあまりよくない私とはペアになりたがらないだろうから一人部屋を用意してもらえないかな、と考えていたところで、私以外に余った彼女が「大丈夫」とあっさり応えたことに驚いた。
あまり良い私の噂を知っているはずなのに、彼女はあっさりと『大丈夫』と言ったのだ。女学院にいた時でさえ遠巻きに見られていたというのに。
「何で?鷹田さん、全然悪い人じゃないでしょ?」
キョトンとした顔で応える彼女。
その表情があまりに抜けていて、思わず少し笑ってしまった。
「あ、鷹田さんが笑った‼︎やっぱりかわいー‼︎」
彼女は私へ歩み寄ると、私の両頬を掴みキラキラとした瞳で私を見つめる。
「鷹田さん、笑ったら絶対可愛いと思ってたんだよねぇ。
正直ね、本当は喋ってみたいなーと思ってたんだけど私コミュ障だし話しかけられないから、今回が鷹田さんと仲良くなれるチャンスだって思って楽しみにしてたんだ‼︎」
私の両頬を掴んだまま彼女は満面の笑みを浮かべる。私はただ、突然上がった彼女のテンションに驚くことしかできなかった。
「ええっと、それは良かったです…?」
「うん‼︎…あ、そうだ。私も嶋田くんとおんなじようにタメで話してほしいなー」
「わかり…わかったわ。善処する、わ、ね」
私が敬語をなくして話せば、満足気に頷く彼女。彼も彼女も、こんな私に優しくしてくれる彼らは本当に良い人で、いつかその優しさを私も返さなければと思った。
それから休み時間は彼女と話すことが増え、彼女を"愛由美ちゃん"と呼ぶようになった。いつも一人で食べていた昼食は彼女と一緒に教室で食べ、時折友達のもとを離れた嶋田くんが私たちの間へ入り話しかけてきた。
愛由美ちゃんと二人で話すときは大抵、彼女が今はまっているらしい乙女ゲームの話をしている。嶋田くんが入ってきたときには、彼と愛由美ちゃんが話していて、私はその会話に相槌を入れて聞いていることが多かった。
でも、今まで友達のいなかった私にはそれだけでも楽しかった。
産まれた時から中学生まで、日本で一番と言っていいほどに父の会社は大きく裕福な暮らしをしていたためか、私のプライドというものは自然と高くなっていった。
小等部から高等部まで存在する女学園に通い、プライドの高い私に友達と呼べる人は誰一人としていなかった。
だが高等部に上がる少し前に父の会社が潰れ、お金のない私は女学院の高等部へ上がれなくなってしまった。
今まで住んでいた家は家賃が高く住めなくなってしまったために引っ越し、その先の近くの公立高校を受け、入学することとなった。
だが、中等部で既に高校3年間分の勉強を終え、学院の中で一番を取っていた私には、偏差値50程度の平凡高校で友人もいない生活はつまらなかった。
「俺、嶋田祐介っていうんだ。よろしく」
そんな中での彼と出会いは、高校二年生の春だった。
クラス発表を終え、指定された席へ座ったとき話しかけてきたのは、彼だった。私の苗字が鷹田で彼は嶋田だったため、隣の席になったのだ。
話しかけられたとき、高校に入ってから今まで話しかけられたことなど片手で数えられるほどしかなかったために私に話しかけているのだと思わず、彼を無視してしまった。
形的に無視をしてしまったにもかかわらず、彼はめげずに私の席の前へしゃがみ込み私の顔を見て話しかけた。
「ねえ、なんて言う名前?」
私は本を読もうと鞄の中から本を探していた手を止めると、彼を見た。
「…私に話しかけているんですか?」
「うん、君以外に誰がいるって言うんだ」
彼は笑いながらそう言うと、私に片手を伸ばした。
「俺嶋田っていうんだ。よろしく、鷹田さん」
「…はい。…あの、少し疑問に思ったんですけどなぜ私の名前を知っているのですか?」
私は少し戸惑いながらもその手を握り返すと、自己紹介されたときに感じた疑問を口にする。
彼はしまった、という表情をすると、しどろもどろになりながら応えた
「えーと…あ、そう。鷹田さんって有名だったから」
視線を泳がしながら言う姿を見て騙されるほど私も馬鹿ではないが、わざわざ深追いすることでもないと思い、何も聞かなかった。
「あ、そうだ。鷹田さんさっきから敬語だけどタメで話してよ。せっかく同じクラスになったのに赤の他人みたいじゃん」
にかっと笑って言う彼に少し関心した。今まで話しかけてきた人は片手で数えられるほどならいたが、それでもこんなにも普通の会話をしようとしたり、仲良くしようとする人などいなかった。だから、こんな私にも仲良くしようとしてくれる人がいるのだと。
以前の女学院に通っていたころの私なら『気安く話しかけてくれませんか?』と話しかけられた時点で言っていただろうが、女学院の生徒でなくなってから1年程立ったこともあり、私がそんなことを言えるような立場ではない(もちろん昔の私もだが当時はそんな風に考えることができなかった)とわかっていたので言わなかったし、考えもしなかった。
「わかりまし…わかったわ。改めてよろしく、嶋田くん」
私がそう言えば、彼は私の顔を見開いた目で見た後嬉しそうに笑った。
それから半年ほど経ち、高校2年生のメインイベントである修学旅行の日が来た。
結局半年間、彼以外に友達のできなかった私は、同じ部屋のペアをつくるときに余った者同士でペアになった。修学旅行にそこまでの興味を持たなかった私は相手が誰でもよかったが、相手は私とペアになってしまい気の毒だと思った。
ペアになった子は同じクラスの木下愛由美さんという子だった。
周りに興味のなかった私はペアになったことで彼女と初めて話すことになったのだが、彼女もまた、彼と同じように私に物怖じしない人だった。
それがわかったのは、私たちが泊まるホテルの部屋に入ってから、沈黙が続いていたときだった。
彼女は何も話さない私に気を遣ったのか、スマホから顔を上げると私に話しかけた。
「…鷹田さんってさあ、嶋田くんと付き合ってるの?」
「え?」
突然話しかけられただけでなく、質問の内容もありえない内容だったために私の口から間抜けな声がでる。
「ほら、教室でもよく話してる姿見るし、クラスの女子がそーゆー噂してたからちょっと気になって」
「…嶋田くんはいい人だから、あまり話さない私に気を遣ってコミュニケーションを取ろうとしてくれてるだけだと思いますよ」
以前から彼が私に話しかけてくれているのは、気を遣ってくれているからだろう。そうに違いないと考えていたために、私は思ったままのことを口に出す。
「…あれで伝わってないのはある意味嶋田くんが可愛そう…」
「何か言いましたか?」
ぼそりと彼女が何かを呟いたように聞こえたために聞き返せば、彼女は何でもないと首を横に振る。
「…木下さんは、部屋のペアが私で嫌だと思わないのですか?」
私は部屋割りが決まった時から感じていた疑問を彼女に聞く。
『木下さん、鷹田さんと同じ部屋になるけどそれでいい?』
学級委員である子が木下さんに聞いた時、みんな愛想のあまりよくない私とはペアになりたがらないだろうから一人部屋を用意してもらえないかな、と考えていたところで、私以外に余った彼女が「大丈夫」とあっさり応えたことに驚いた。
あまり良い私の噂を知っているはずなのに、彼女はあっさりと『大丈夫』と言ったのだ。女学院にいた時でさえ遠巻きに見られていたというのに。
「何で?鷹田さん、全然悪い人じゃないでしょ?」
キョトンとした顔で応える彼女。
その表情があまりに抜けていて、思わず少し笑ってしまった。
「あ、鷹田さんが笑った‼︎やっぱりかわいー‼︎」
彼女は私へ歩み寄ると、私の両頬を掴みキラキラとした瞳で私を見つめる。
「鷹田さん、笑ったら絶対可愛いと思ってたんだよねぇ。
正直ね、本当は喋ってみたいなーと思ってたんだけど私コミュ障だし話しかけられないから、今回が鷹田さんと仲良くなれるチャンスだって思って楽しみにしてたんだ‼︎」
私の両頬を掴んだまま彼女は満面の笑みを浮かべる。私はただ、突然上がった彼女のテンションに驚くことしかできなかった。
「ええっと、それは良かったです…?」
「うん‼︎…あ、そうだ。私も嶋田くんとおんなじようにタメで話してほしいなー」
「わかり…わかったわ。善処する、わ、ね」
私が敬語をなくして話せば、満足気に頷く彼女。彼も彼女も、こんな私に優しくしてくれる彼らは本当に良い人で、いつかその優しさを私も返さなければと思った。
それから休み時間は彼女と話すことが増え、彼女を"愛由美ちゃん"と呼ぶようになった。いつも一人で食べていた昼食は彼女と一緒に教室で食べ、時折友達のもとを離れた嶋田くんが私たちの間へ入り話しかけてきた。
愛由美ちゃんと二人で話すときは大抵、彼女が今はまっているらしい乙女ゲームの話をしている。嶋田くんが入ってきたときには、彼と愛由美ちゃんが話していて、私はその会話に相槌を入れて聞いていることが多かった。
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※暇な時にちょこちょこ書いている程度なので、内容はともかく出来についてはご了承ください。
追記
六十五話以降、タイトルの頭に『※』が付いているお話は、流血表現やグロ表現がございますので、閲覧の際はお気を付けください。
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