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本編
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一週間前、ついにシュゼットがこの学園へやってきた。前々世では、校内を歩くことはあまりなかったために彼女が学園へ来た日に会うことはなかった。だが、今世ではレヴォン様から逃げるために校内をうろついていたため、彼女が庭園に立っている姿を見かけた。
前々世でレヴォン様は言っていた。シュゼットと始めて出会ったのは、彼女が編入生として学園へ始めてやってきた日に指定された部屋へ案内したからだ、と。
いつかのパーティーで彼とダンスをしていたときに、編入生の話題、つまりシュゼット様の話題になったためにその話を聞いたのだ。
その時の私は、まだ彼女と会ったことがなく名前も知らなかったため、その時始めて彼女の認識をした。当時の彼は彼女に好意を寄せているようには見えなかったので、私も怒ったりはせず『そうなのですね』で終わっていた。
そしてここ一週間、レヴォン様が私を探すことがなくなった。それまでは休憩時間に庭園や図書室から戻ってくると、クラスの方が『第一王子殿下が訪ねていらっしゃいましたよ』と言っていたのだが、何も言われなくなった。
つまり、私が去ったあの後にレヴォン様はシュゼット様と出会ったはずなのだ。
その彼女を見かけたときに身体が傾くような感覚がしたことなのだが、なぜそんな感覚がしたのかはわからない。その後に聞こえた私と似た女性の声も。
嫌な予感の正体はこれのことかもしれないと思った。
とりあえず私一人で考えても何もわからないためネオラに相談することにした。
彼女にその感覚のことを話せば、少し黙り込んだ後に
『……まだ確定はできませんが、おそらくこれだろうという予想はできています。…まあ合っている可能性が高いので、ある程度対策は考えておきます。
このことは確定はできていないので、はっきりしてからお教えしますね。』
と言った。彼女の前世の経験から予想できるのだろう、私は勉強以外してこなかったためにわからないが。
先程軽く流してしまったパーティーのことなのだが、それは一月後程に行わられる、レヴォン様が16歳となるために開かれるパーティーだ。
その時に話していたシュゼット様との話を聞いた限り、彼はすでにそれなりの回数の交流を済ましていたようだった。
つまりこの一ヶ月の間に彼はシュゼット様と何回か会うことになるはずなので、私はその場に居合わせぬよう気をつけなければならない。
…いや、会っていじめた方が良いのかもしれない。
彼と彼女がわざわざ仲睦まじくしている様子など見たいとは全く思わないが、私が彼女をいじめなければ彼が私と婚約破棄をする理由がなくなってしまう。
それでは困る。私は好きでもない、むしろ恨んでいる方と結婚などしたくない。
……ああでも、よく考えたら別にいじめる必要などなかった。
彼に彼女との結婚願望があれば、私が婚約解消を求めれば認めてくれるはずだ。ということは、私はあの二人が仲良くしている姿を見かけても、何事もなかったかのように通り過ぎてしまえばいいだけ。
家の名に傷つけることにならずに済みそうでよかった。
ネオラに手伝ってもらいながら学園へ行く準備をしつつこれからのことを考えていると、ちょうど寮を出る時間となっていた。
「行ってまいります」と言い部屋を出ると、一人で学園へ向かった。
それからさらに一週間経ったが、特に変化はなかった。
嫌な予感もしなければ、身体が傾くような感覚に襲われたこともなかった。レヴォン様が訪れる様子もなさそうなので、休憩時間に教室から離れることもなくなった。
だから少しだけ、油断していた。
それは休憩時間にお手洗いへ向かっていたときのことだった。
不意に窓の外に咲いている花が目に入り、その花はまだ見たことのないものでじっと見つめていた。後で調べるためにその花を観察していると、庭園の向こう側で歩いている男女が目に入った。
縛られたようにその場から身動きが取れなくなることを金縛りというのなら、私はその瞬間、今まで体験をしたことのなかった金縛りにあったと言えるだろう。
その男女から目を離すことができなかった。離したくても、私の身体がそれを許さなかった。
彼らのその表情の中に恋情などのものは見えなかった。だが、二人が友人という関係ではない。そう考えることのできる表情をしていた。
やめてやめてやめて‼︎
見たくない見たくない見たくない‼︎
その場から立ち去りたくても目を逸らしたくても、動かすことができなかった。
"貴方が自分に正直になれば、こんなことしなくても良かったのよ"
また、私と似た声の女性が私に語りかける。私をその場に縛り付けているのは、彼女だと思った。
"認めてしまえばいいのよ。自分の思うがままに動けばいい。…彼女を、痛めつけるだけよ"
頭を横に振ろうとするが動かない。
"何故そんなにも自分の気持ちを否定するの?本当は変わらないくせに。変えられないくせに"
彼らが金縛りで動けぬ私の方へ近づいて来る。
嫌。会いたくない。話したくない。見たくない。
どんなに焦っても呼吸は乱れず、足を動かそうとしても動かない。
"でも、まだ私が出るには少し早いわ。私の出番が来るまで、じっくり考えることね"
その言葉を最後に、金縛りは解けた。
私はその場を急いで離れる。誰もいない廊下を歩いている間、目から流れるものは止まることなくぼろぼろと溢れる。
違う。そうじゃない。
自分で自分に否定をする。
何に対して否定しているのかもよくわからずに、そうじゃないのと心の中で繰り返す。
私は許してなんかいないもの。恨んでいるわ。
「…だから、ありえないのよ」
私の言葉は、誰かに聞かれることなく、静まり返った廊下に響き渡った。
前々世でレヴォン様は言っていた。シュゼットと始めて出会ったのは、彼女が編入生として学園へ始めてやってきた日に指定された部屋へ案内したからだ、と。
いつかのパーティーで彼とダンスをしていたときに、編入生の話題、つまりシュゼット様の話題になったためにその話を聞いたのだ。
その時の私は、まだ彼女と会ったことがなく名前も知らなかったため、その時始めて彼女の認識をした。当時の彼は彼女に好意を寄せているようには見えなかったので、私も怒ったりはせず『そうなのですね』で終わっていた。
そしてここ一週間、レヴォン様が私を探すことがなくなった。それまでは休憩時間に庭園や図書室から戻ってくると、クラスの方が『第一王子殿下が訪ねていらっしゃいましたよ』と言っていたのだが、何も言われなくなった。
つまり、私が去ったあの後にレヴォン様はシュゼット様と出会ったはずなのだ。
その彼女を見かけたときに身体が傾くような感覚がしたことなのだが、なぜそんな感覚がしたのかはわからない。その後に聞こえた私と似た女性の声も。
嫌な予感の正体はこれのことかもしれないと思った。
とりあえず私一人で考えても何もわからないためネオラに相談することにした。
彼女にその感覚のことを話せば、少し黙り込んだ後に
『……まだ確定はできませんが、おそらくこれだろうという予想はできています。…まあ合っている可能性が高いので、ある程度対策は考えておきます。
このことは確定はできていないので、はっきりしてからお教えしますね。』
と言った。彼女の前世の経験から予想できるのだろう、私は勉強以外してこなかったためにわからないが。
先程軽く流してしまったパーティーのことなのだが、それは一月後程に行わられる、レヴォン様が16歳となるために開かれるパーティーだ。
その時に話していたシュゼット様との話を聞いた限り、彼はすでにそれなりの回数の交流を済ましていたようだった。
つまりこの一ヶ月の間に彼はシュゼット様と何回か会うことになるはずなので、私はその場に居合わせぬよう気をつけなければならない。
…いや、会っていじめた方が良いのかもしれない。
彼と彼女がわざわざ仲睦まじくしている様子など見たいとは全く思わないが、私が彼女をいじめなければ彼が私と婚約破棄をする理由がなくなってしまう。
それでは困る。私は好きでもない、むしろ恨んでいる方と結婚などしたくない。
……ああでも、よく考えたら別にいじめる必要などなかった。
彼に彼女との結婚願望があれば、私が婚約解消を求めれば認めてくれるはずだ。ということは、私はあの二人が仲良くしている姿を見かけても、何事もなかったかのように通り過ぎてしまえばいいだけ。
家の名に傷つけることにならずに済みそうでよかった。
ネオラに手伝ってもらいながら学園へ行く準備をしつつこれからのことを考えていると、ちょうど寮を出る時間となっていた。
「行ってまいります」と言い部屋を出ると、一人で学園へ向かった。
それからさらに一週間経ったが、特に変化はなかった。
嫌な予感もしなければ、身体が傾くような感覚に襲われたこともなかった。レヴォン様が訪れる様子もなさそうなので、休憩時間に教室から離れることもなくなった。
だから少しだけ、油断していた。
それは休憩時間にお手洗いへ向かっていたときのことだった。
不意に窓の外に咲いている花が目に入り、その花はまだ見たことのないものでじっと見つめていた。後で調べるためにその花を観察していると、庭園の向こう側で歩いている男女が目に入った。
縛られたようにその場から身動きが取れなくなることを金縛りというのなら、私はその瞬間、今まで体験をしたことのなかった金縛りにあったと言えるだろう。
その男女から目を離すことができなかった。離したくても、私の身体がそれを許さなかった。
彼らのその表情の中に恋情などのものは見えなかった。だが、二人が友人という関係ではない。そう考えることのできる表情をしていた。
やめてやめてやめて‼︎
見たくない見たくない見たくない‼︎
その場から立ち去りたくても目を逸らしたくても、動かすことができなかった。
"貴方が自分に正直になれば、こんなことしなくても良かったのよ"
また、私と似た声の女性が私に語りかける。私をその場に縛り付けているのは、彼女だと思った。
"認めてしまえばいいのよ。自分の思うがままに動けばいい。…彼女を、痛めつけるだけよ"
頭を横に振ろうとするが動かない。
"何故そんなにも自分の気持ちを否定するの?本当は変わらないくせに。変えられないくせに"
彼らが金縛りで動けぬ私の方へ近づいて来る。
嫌。会いたくない。話したくない。見たくない。
どんなに焦っても呼吸は乱れず、足を動かそうとしても動かない。
"でも、まだ私が出るには少し早いわ。私の出番が来るまで、じっくり考えることね"
その言葉を最後に、金縛りは解けた。
私はその場を急いで離れる。誰もいない廊下を歩いている間、目から流れるものは止まることなくぼろぼろと溢れる。
違う。そうじゃない。
自分で自分に否定をする。
何に対して否定しているのかもよくわからずに、そうじゃないのと心の中で繰り返す。
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「…だから、ありえないのよ」
私の言葉は、誰かに聞かれることなく、静まり返った廊下に響き渡った。
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