上等だ

吉田利都

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心のもや

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「美咲さんとはどういう関係なの?」

僕が答えるのを待たずに質問を攻めてくる酒井さんは

なんだか焦っているように思えた。

「僕は、美咲とはただの友達だよ。」

友達。それは間違っていない。

それなのに僕の心はもやもやしていた。

「と、友達なんだ!」

やけに驚いた表情だ。

「そんなに驚く?」

「てっきり私、二人は付き合ってるのかと。」

「そんなわけないよ!僕たちは友達だ!」

「今日酒井さんおかしくない?」

僕は酒井さんのせいにした。

本当は僕がどうかしてたと思う。

「私おかしい!?でも、誰でも学校での様子見たら付き合ってるって…」

「僕と美咲はそんなんじゃない!」

僕へ視線が集まる水族館。

酒井さんは固まってしまった。

「あ、ごめん…」

「いや、ごめんなさい。私も。」

こんなの怒ることじゃないのに。

相手が酒井さんだから?

僕と美咲の関係を簡単に見ないで欲しいから?

「酒井さん。ちょっと移動しよう。」

酒井さんの袖を引っ張りジンベエザメが見える特大水槽の前に来た。

「大きいね…」

酒井さんが語りかける。

「うん、さっきはごめん。」

ジンベエザメやエイガこちらを見て笑っている。

「いいよ。気にしないで。私も悪かったわ。」

「二人はいつから友達なの?」


僕は美咲との事を話した。

今日一番口が動いていただろう。

酒井さんはそれをニコニコしながら聞いている。

一通り話し終わると酒井さんが言った。

「素晴らしい関係だと思います。私も黒沢君と正式に友達になりたい。」


唾を飲み返事をした。



水族館を出て帰りの電車で一言だけ会話した。

「私、学校で話しかけてもいいかな?」

「うん。もちろん。」

今日は土曜日。

明日は今日の事を美咲に直接話す事になる。

帰ったら沢山チャックと遊ぼう。

そして、死んだように眠るんだ。
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