上等だ

吉田利都

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休日の過ごし方

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日曜、朝。

目覚まし時計が鳴る前に起きる。

昨日の事を考えうなだれる。

美咲になんて言おう。

僕は珍しくコーヒーを飲んだ。

ミルクも砂糖もいれない。

いたってシンプルなコーヒー。

テレビをつけても何を言っているのかさっぱりだ。

そういえば待ち合わせはどこだろう。

今日会う約束はしたけどどこで会うかなんて聞いてない。

コンコンコン

庭の窓ガラスを小さく叩く音がした。

誰だろう、こんな朝早くに。

僕は物音を立てないようにこっそりのぞいてみた。

「黒沢~」

小声で僕の名前を呼んでいる。

美咲だ。

すぐに窓を開けるとニコニコした美咲が僕を見ていた。

「朝早いからインターホン押せなかった。」

「だからこっちからなんだ。」

僕が起きてなかったらどうしてたのだろう。

「こんな朝早くにどうしたの?」

ひそひそと会話は進む。

「今日遊ぶ約束だろ。」

「そうだけど早くない?」

「待ち合わせの場所も時間も決めてないんだからいいじゃん。」

「漁港は?」

「それナシで。」

ナシって・・・

「あたし外で待ってるから準備してきて。」

せかすように美咲は手で僕を煽った。

なるべく母さんや父さんが起きないよう慎重に準備する。

チャックは起きてしまったけど。

とりあえず着替え、玄関のドアをゆっくり開けた。

「黒沢~こっちこっち」

少し離れたところで僕を呼んでいる。

改めてみると美咲の今日の服装はやけに女の子らしい。

いつもジーパンにTシャツと男っぽいのに今日はスカートだ。

「黒沢。遊園地、行くよ。」

「え、遊園地!?」

昨日水族館に行って今日遊園地なんて今週は忙しい。

「なんで遊園地?しかも朝早くなんて」

「朝起きた時に行きたくなったんだよ。黒沢と遊園地」

黒沢と。その言葉に少し違和感が生じる。

「それに今日は少し遠い遊園地に行くから早く行っていっぱい遊ぼうと思ってさ。」

「そうなんだ。どれくらいかかるの?」

「2時間」

「2時間!?」

本当に遠いじゃないか。

「さ、駅に行こうぜ。」

美咲は鼻歌を交えながら楽しそうに話しかける。

それを僕は相槌を打ち聞いている。

昨日よりだいぶ楽だった。

電車に乗ってからも美咲はずっと喋っている。

昨日のテレビの事や好きなアーティストの話。

聞いてて苦じゃないしむしろ退屈にならなくて済むからありがたい。

そんな状況を嬉しく思いつつも昨日の事を思い出し複雑でいた。

遊園地。こんな形で楽しめるのだろうか。
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