上等だ

吉田利都

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遊園地

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僕のテンションとは反対に遊園地は活気づいていた。

入場料600円の遊園地。ここには昔よく家族で来ていたな。

「何しけた面してんだよ。楽しもうぜ。」

美咲は僕の腕をつかみアトラクションの方へと向かった。

「わあーーーーー!!!!!!」

いきなりジェットコースターなんてぶっ飛んでる。

僕は絶叫系が得意じゃないけど今日はなんだか楽しい。

なんかいろんな事が飛んで行ってしまったような。

「美咲。」

「なに?聞こえない!」

トップスピードの中、美咲に伝える。

「ありがとう。」

「後で言って!」

多分聞こえてないだろう。

ラストの急な下りは心臓が締め付けられた。

「はあ。疲れた。」

「まだ序盤だ。疲れてる暇はないぞ!」

また美咲は僕の腕を引っ張り次はメリーゴーランドへと向かった。

「僕は、見てるといっただろ。」

「乗ったほうが楽しいに決まってるじゃん。」

僕たち以外小さい子供しか乗っていない。

5分ほどで終わったがジェットコースターの後では変に気持ち悪くなる。

「ちょっと休憩」

「しょうがねぇな。」

僕は近くのベンチに腰掛けしばらく空を眺めていた。

もう動くものは見たくない。

「ほい。飲め。」

美咲が顔をのぞかせ僕の顔にお茶を押し付ける。

「冷た。」

「ナハハハ」

「ありがとう。」

僕はもう一度お礼を言う。

「お茶くらいで真剣な顔すんなよ。」

けたけた笑っている。

「違うよ。もちろんこれも感謝してるけど。」

「なんだよ。」

「今日誘ってくれてありがとう。」

「そんなことかよ。」

「昨日少し落ち込んでたんだけど美咲のおかげで気持ちの整理がついた。」

「あ、そっか。昨日酒井さんと会ってたんだよな。」

忘れていたのか。当初の予定はどうだったか聞くことだろ。

僕だけ気になってたってわけか。

「うん。ダメだった。」

「ダメだった!?」

「酒井さんとはなんだか合わないんだ。」

「そっかー。あんないい子なのに合わないか。」

「良い子過ぎるのかもしれない。」

「あたしは、てっきり二人はくっついたのかと思ってた。」

意外だった。美咲が僕と酒井さんの事をそういう風に見てたなんて。

「それはないよ。僕は前から少し苦手だったんだ。」

「そうなの?」

「うん。」

ちょっと変な空気になったな。

ここからは僕がリードしよう。

「お化け屋敷行こう。」

スッと立ち、美咲の手をとる。

「おいおい、そんな慌てるなよ。」

すぐに手を離したけどしばらく美咲の手の感触が残っているような気がした。

「黒沢。お化け平気?」

「苦手だよ。」

「じゃあなんで来たんだよ!あたしも苦手なんだけど!」

「そ、そうなの?」

まさか二人とも怖いなんてな。

案の定二人は入るや否や叫びっぱなしであまりの怖さにほとんど何も見ずに走り抜けてしまった。

最初の骸骨が棺桶から出てくるところなんて誰でもビビるだろう。

「黒沢。」

「なに」

「怖くなかったよな。」

お互い息切れしながらやせ我慢をした。

「うん。全然。」

「次どこ行く?」

美咲、まだいけるのか。僕はもうだめだ。

「ちょっと静かなところがいい。」

「そうだな。お昼も近いしレストランに行こう。」

良かった、美咲も流石に疲れただろう。

ぜーぜー言いながら僕たちはレストランへと向かうのだった。
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