28 / 56
第3話 百年前の残滓
百年前の残滓 08
しおりを挟む「私の判断でろくな調査も出来ないまま、君たちを危険なところに送り込んで本当に申し訳なかった」
悪魔の襲撃に対して迅速な対応で事態の収束をする為なら上の判断ひとつで兵士である自分達を危険な場所に送り込まれせて当然のこと
ゼオンたちはそれをを重々理解しており、そのことについて咎めるつもりも、勝手な判断として指摘するつもりも全くない
ましてやゼオン達九人姉妹は少数で迅速に対応する能力者部隊『MLS』の兵士だ
しかし、目の前のラクナという男は自分の部下達を最前線に送り込んで、危険な目に合うことをわかって判断を下すものの、それを仕方ないの一言で片付けられる図太い男ではなかった
強く心配してくれている嬉しさを感じながらゼオンは軽い調子でラクナを諭す
「大丈夫!オレ達は女の子だけど、仕事である以上はちゃんと弁えてるし、この通り元気だから気にしなくてオーケーだ!」
「私たちは女の子だけど、ゼオ姉は女の子じゃないよね~!二十歳だし」
「そーだな、ラルの言う通り!」
「…そのとおり……」
「お前らそういう下らんことで一致団結するなよ!」
ゼオンと彼女を煽る三人の妹達の様子を前にラクナは下げていた頭をゆっくりとあげ、感謝の言葉を付け加える
「そうか、ありがとう」
感謝の言葉を言い終えると、ラクナはしっかりとした顔つきで背筋を伸ばしていた姿勢から一転、肩の力をあからさまに抜けきって顔をから正気を抜け落とす
ふざけているのではないのだが、先程の謝罪がまるで冗談だったと思わせるぐらいの普段の彼らしいだらしなさが表面に現れる程、ラクナは彼女たちの気前の良い返事で気持ちが和らいでいた
メリハリがつきすぎだろーーー
と、突っ込みたいくらいだったが、真剣な謝罪の後故、水を刺したくなかったゼオンは黙っておいた
「それで、任務のことについてだが…君たちの奮闘と、ある悪魔の助太刀のお陰で、重傷者や死者は一人も出なかったそうだよ」
「そうか」
「もちろん、キミたちが保護した男性もね」
ゼオンは一瞬、『ピーヌス』の前で倒れていた、先日の任務の依頼者である初老の男性の顔を思い浮かべ、彼もまた無事だったことに安堵する
男性を抱えたときに外傷が殆どなかったことを確認し、セレーラルが安全な病院へ移動させたとしても以降の経過を知らなかった彼女にとって今の今まで頭から離れなかったが、ようやくその蟠りがなくなった
「あのー…」
その横でセレーラルは恐る恐る挙手して、疑問を胸にラクナに一つ伺う
「悪魔の助太刀って…どっかの悪魔が助けてくれたの?」
恐らく、セレーラルだけではなくマレーシャや実際に任務に赴いていないアーシェリでも同じことを思っただろう
「近隣住民の話によると…ピーヌスの襲撃から逃がている最中に現れて、何体か倒してくれたという証言があったんだ…」
「……」
全ての悪魔が魔界に住んでるわけではないこの『瑠璃世界』の中に蠢くピーヌス達もいれば、うまく人間社会の中に溶け込んでいる悪魔達や『九人姉妹』のような先祖に悪魔を持つ者も存在する
彼の言葉から、そういった者が慈善で助けてくれたのかと思うとセレーラルは頼もしく感じていた
そしてセレーラルに次いで今度はアーシェリが後頭部に両腕を組ませてラクナに問う
「その悪魔の風貌は聞いてねーのか?」
「聞いてるよ…」
質問を受けたラクナは「えーっと」と呟きながら胸ポケットから黒い手帳を取り出してページをパラパラとめくりだす
「話によると、黒いフード付きのコートで、紫髪をした二本の黒い角を頭部の左右に生やしていたそうだ…」
「は…?」
質問の返答を聞いたアーシェリはその内容に首を捻らせていた
確かついさっき聞いたことがあるような…と思って周りの様子を見てみると…
ゼオンとセレーラルは口を開けたまま目を見開いて驚愕をそのまま表した表情をしており、マレーシャも顔は俯かせたままであったが、まるで石になったかのように完全に硬直していた
「な、なぁ…お前らが戦ったって言う悪魔って確か…」
「あ、ああ司令が言った悪魔の特徴と一致してるやつだ…」
「じゃあ、何かの行き違いで戦うことになっちまったのかよ?」
アーシェリの問いかけも最もであり、今思えばゼオン自身、あの悪魔が現れたときは、あの悪魔がピーヌスを操っているものだと最初から決めつけていたかもしれない
あやふやとなっていた記憶の整理ができず、誰一人として確たる回答を断言できなくなっていた
0
あなたにおすすめの小説
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる