31 / 56
第四話 アクセルの力
アクセルの力 02
しおりを挟むしかし、二人から帰ってきたのは戸惑いの表情と沈黙だけだった
首を傾げて呆けるアウリの背中に手をあてがって、ゼオンは顔を屈めながら語りかける
「いいかアウリ、何時も言ってることだけど自分は最強だと、微塵にも思ったら駄目だぞ」
その『何時も』は常に戒めの為に言っていたが、ゼオンは自分で口にしていながら、はっきりと現実のものとして自分の中に刻まれる感覚を強く感じていた
自身の常識内で最強になっても、世の中にはその範疇を逸脱した常識外の存在がおり、その強さには通用しないと
「う~ん…?わかった!」
言葉を向けられたアウリが暫く呆然としていたと思ったら、急にいつもの元気で能天気な返事が返ってきた
その様子を見てマレーシャ以外の一同はアウリが本当に理解してくれているのかどうなのかと不安そうな顔をしながら苦笑いする
「ところでアウリよ、我々はこれから能力のおさらいを執行するのであるが、キミも付き合うかい?」
その場の空気に区切りをつけるように、セレーラルが芝居がかった口調と手振りでアウリに手を差し伸べて語りかけるも、アウリは首を横に振って断った
「あうりんはきるきるに頼まれて夕飯の仕込みをしなきゃいけないから直ぐはダメだけど、その後だったらいいよ!」
きるきること次女・キルバレンに料理の仕込みを頼まれていたアウリは、その仕込みの具材が入っていると思われる買い物袋を頭上に翳す
「なる程、アウリは時たまに勘違いから酷い駄作料理を作ることはあるけど、基本的には料理はできるからねぇ~…それに比べて…」
喋るセレーラルの言葉は続かないけれども、ゼオンに向けられたその視線が何を語っているのか、視線を向けられた本人も含めて全員が理解した
そう、今までゼオンが作った料理は例外なくマズい料理だけだった
「いやいやいやいや…お前だって似たようなもんだろう!」
「私は料理に関しては知識も経験もないだけだって」
「それはそれで駄目だろう」
「確かに駄目だけど、でもゼオ姉は知識があった上で出来てないじゃない」
何やら料理ができないもの同士、言い争いが始まりった二人の間から離れていアウリとアーシェリは観客気分で眺めていた
「らるちんだったら頭良いから勉強すればできるんだろうけど、何でやらないのかな?」
「さーな、めんどくせーだけじゃねーのか?」
やがてどっちが料理ができないという話はやがてお互いの口論をヒートアップさせてしまい、収集がつかなくなってきたが、何方も料理下手という点で、
互いに譲れないものは殆どない筈なのだが
それでも感情が昂っていく状況になっても、流石に妹達の手前、長女と四女はお互いを強く罵倒するような言葉遣いはせず、理性を持って言い争いを続けていく
そんな中、場の空気を気にすることなく、マレーシャが二人の間に入っては、そのまま自宅の玄関へと歩く
「結果的にはどっちも料理が下手だよね…」
と、すれ違いざまに真顔で言いながら
珍しくマレーシャが喋ったことと、葉に絹着せない物言いに二人の動きが凍りついてしまった
どうやら、普段から文句を言いかねないアーシェリや、言葉に重みを感じさせないアウリに言われるより余程堪えるものがあったようで、マレーシャに続いてアーシェリとアウリが帰宅した後も放心したように二人揃ってその場に立ち尽くしていた
やがて、時が動き出したかの如く二人の元に風が吹き込むと、互いにしょんぼりとため息を零す
「ごめんゼオ姉、ちょっと言い過ぎたよ」
「いや、謝るのはこっちの方だ
仮にも長女だからもうちょい冷静になるべきだった」
二人とも謝罪をすませると、どちらともなくお互いに肩を組み合って玄関を目指して歩き出す
「でもゼオ姉がメシマズなのは変わりないけどね!」
「おまえなぁ~…」
0
あなたにおすすめの小説
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる