エンゼルローズ

RASHE

文字の大きさ
47 / 56
第五話 復讐者の来訪

復讐者の来訪 07

しおりを挟む

「あーー…つかれたー!」


静まり返った地下のトレーニングルームでは午後の特訓を終えて、疲労を訴えるシェリエールの声がこだましていた

汗だくになりながら力の抜けた歩調で壁際まで歩いていくと、力尽きたように、そのまま力なくと床にへたり込む

周りを見渡すと同じように特訓を終えたルリア、マレーシャ、アウリもそれぞれの場所で休息をとっており、長女ゼオンもシェリエールのそばで壁にもたれて一息ついていた


「おまえ、『安静期間』にあんなにうごいていいのか?」

「ああ、現に大怪我したわけじゃないし昨日までは休んでたからな
今日はリハビリ気分でトレーニングさ」

「マレーシャはおまえより、おちついてたぞ」


ぼやくように吐くシェリエールの言葉を聞きながら、ゼオンは壁にかけてある時計を確認すると、その針は午後五時半過ぎを示していた

いつも夕飯は次女キルバレンが用意してくれているのだが、任務等で支度が間に合わない場合は前もって彼女から連絡を通すようになっている

今この時間になって連絡がこないということは近いうちに帰宅するだろうと思って、ゼオンは冷蔵庫の中にある食材が少なかったことを思い出す


「食材買いに行ったほうがいいかもしれんな…」


そう言って壁から背中を離したゼオンは明るい顔を見せて他の姉妹に呼びかける


「じゃあおまえら、オレはテキトーに食材買いに行ってくるから、キルバレンが帰ってきたら七時前には帰ってくると言っといてくれ!」

「うん…」

「りょーかーい!」

「…」


ルリアとアウリの返事を確認した後、トレーニングルームの扉を開けたゼオンはそのまま階段へと足を運ぼうとしたが、着ている服につっかかりを感じた

後ろを振り返ると、ゼオンの服を摘んで下を俯いているシェリエールの姿があった

下げた顔を中々上げてこない様子からなにか言いにくいことでもあるのだと勘繰るゼオンは、そのままシェリエールの反応を待つ


「おい、おまえ…」


そう言うと同時に、シェリエールはゆっくりと顔を上げていく


「買い物ついでにシュークリームとジャムパンかってこい」


その顔にはムッとした迫力の無い傲慢な表情が映し出されていた


「おいおい、姉に対してなんてものの頼み方だよ…」


ゼオンはやれやれといった手つきでわがままな妹を一瞥すると、扉のノブへ手をかけて部屋を後にした



その後ろ姿を見送り、扉のドアが閉まる音が響くとシェリエールは部屋の隅から訓練用の竹刀を一本抜き取って、やる気に満ちた顔でその先端を居残った三人に向ける


「おい!もうひとがんばりするぞ!」

「え!?まだやるの?あうりん疲れたよ~」

「…はは、凄い元気だね…」


もはやトレーニング終了の雰囲気で、更に体力を使い切ったルリアとアウリは疲れからやる気が出せず、その場から立ち上がろうとしないまま、シェリエールの気迫に対して返事を返すのがやっとだった

そんな二人の様子にイライラを募らせて、シェリエールは自らのストレスを表現するかのように竹刀の先端で床を何度も叩く


「ばかちび!元気だけが取り柄のくせに なにをへばっているんだ!」

「あうりんはもう元気ゼロだよ~」

「それにチキン!おまえはそれなんだから 一生チキンなんだ!」

「でも、頑張りすぎは明日にも疲れが響くから程々がいいと思うよ…」


ルリアとアウリがこれ以上のトレーニングに否定的中、シェリエールがただ一人やる気が空回りしている状態でマレーシャが無言で立ち上がる

そして竹刀を手にとってシェリエールの前に出ようとするが、対するシェリエールはマレーシャに対して左手で静止の合図を見せていた


「おまえはダメだろ『安静期間』じゃないのか?」

「………」


シェリエールの警告を無視して、マレーシャは闘志を滲ませながら竹刀を目前へと構えてシェリエールと対峙する

そして静かに一呼吸をおくと、シェリエールの構えを待つように、臨戦態勢のまま息を潜める

シェリエールは知らないが、無表情のその瞳には一度敗戦を味わったが故の悔しさからマレーシャ自身力への渇望が彼女の闘志を表していた

その心情の理解無いまま、シェリエールはマレーシャへ説得を続けていく


「おまえ、ひとのはなしきいて…」
「よーい……」


マレーシャが痺れを切らして始めの合図を口にしたとき、彼女の真剣さを察知したシェリエールは瞬時に全身に霊気を纏わせて、臨戦態勢に入る


「しらんぞ、わたしは」


その姿を確認したマレーシャは竹刀を逆手に持ち替え、両足に力を込めて模擬戦の火蓋を切った
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

処理中です...