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第五話 復讐者の来訪
復讐者の来訪 07
しおりを挟む「あーー…つかれたー!」
静まり返った地下のトレーニングルームでは午後の特訓を終えて、疲労を訴えるシェリエールの声がこだましていた
汗だくになりながら力の抜けた歩調で壁際まで歩いていくと、力尽きたように、そのまま力なくと床にへたり込む
周りを見渡すと同じように特訓を終えたルリア、マレーシャ、アウリもそれぞれの場所で休息をとっており、長女ゼオンもシェリエールのそばで壁にもたれて一息ついていた
「おまえ、『安静期間』にあんなにうごいていいのか?」
「ああ、現に大怪我したわけじゃないし昨日までは休んでたからな
今日はリハビリ気分でトレーニングさ」
「マレーシャはおまえより、おちついてたぞ」
ぼやくように吐くシェリエールの言葉を聞きながら、ゼオンは壁にかけてある時計を確認すると、その針は午後五時半過ぎを示していた
いつも夕飯は次女キルバレンが用意してくれているのだが、任務等で支度が間に合わない場合は前もって彼女から連絡を通すようになっている
今この時間になって連絡がこないということは近いうちに帰宅するだろうと思って、ゼオンは冷蔵庫の中にある食材が少なかったことを思い出す
「食材買いに行ったほうがいいかもしれんな…」
そう言って壁から背中を離したゼオンは明るい顔を見せて他の姉妹に呼びかける
「じゃあおまえら、オレはテキトーに食材買いに行ってくるから、キルバレンが帰ってきたら七時前には帰ってくると言っといてくれ!」
「うん…」
「りょーかーい!」
「…」
ルリアとアウリの返事を確認した後、トレーニングルームの扉を開けたゼオンはそのまま階段へと足を運ぼうとしたが、着ている服につっかかりを感じた
後ろを振り返ると、ゼオンの服を摘んで下を俯いているシェリエールの姿があった
下げた顔を中々上げてこない様子からなにか言いにくいことでもあるのだと勘繰るゼオンは、そのままシェリエールの反応を待つ
「おい、おまえ…」
そう言うと同時に、シェリエールはゆっくりと顔を上げていく
「買い物ついでにシュークリームとジャムパンかってこい」
その顔にはムッとした迫力の無い傲慢な表情が映し出されていた
「おいおい、姉に対してなんてものの頼み方だよ…」
ゼオンはやれやれといった手つきでわがままな妹を一瞥すると、扉のノブへ手をかけて部屋を後にした
その後ろ姿を見送り、扉のドアが閉まる音が響くとシェリエールは部屋の隅から訓練用の竹刀を一本抜き取って、やる気に満ちた顔でその先端を居残った三人に向ける
「おい!もうひとがんばりするぞ!」
「え!?まだやるの?あうりん疲れたよ~」
「…はは、凄い元気だね…」
もはやトレーニング終了の雰囲気で、更に体力を使い切ったルリアとアウリは疲れからやる気が出せず、その場から立ち上がろうとしないまま、シェリエールの気迫に対して返事を返すのがやっとだった
そんな二人の様子にイライラを募らせて、シェリエールは自らのストレスを表現するかのように竹刀の先端で床を何度も叩く
「ばかちび!元気だけが取り柄のくせに なにをへばっているんだ!」
「あうりんはもう元気ゼロだよ~」
「それにチキン!おまえはそれなんだから 一生チキンなんだ!」
「でも、頑張りすぎは明日にも疲れが響くから程々がいいと思うよ…」
ルリアとアウリがこれ以上のトレーニングに否定的中、シェリエールがただ一人やる気が空回りしている状態でマレーシャが無言で立ち上がる
そして竹刀を手にとってシェリエールの前に出ようとするが、対するシェリエールはマレーシャに対して左手で静止の合図を見せていた
「おまえはダメだろ『安静期間』じゃないのか?」
「………」
シェリエールの警告を無視して、マレーシャは闘志を滲ませながら竹刀を目前へと構えてシェリエールと対峙する
そして静かに一呼吸をおくと、シェリエールの構えを待つように、臨戦態勢のまま息を潜める
シェリエールは知らないが、無表情のその瞳には一度敗戦を味わったが故の悔しさからマレーシャ自身力への渇望が彼女の闘志を表していた
その心情の理解無いまま、シェリエールはマレーシャへ説得を続けていく
「おまえ、ひとのはなしきいて…」
「よーい……」
マレーシャが痺れを切らして始めの合図を口にしたとき、彼女の真剣さを察知したシェリエールは瞬時に全身に霊気を纏わせて、臨戦態勢に入る
「しらんぞ、わたしは」
その姿を確認したマレーシャは竹刀を逆手に持ち替え、両足に力を込めて模擬戦の火蓋を切った
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