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第五話 復讐者の来訪
復讐者の来訪 08
しおりを挟む「ドン」
始まりの合図と共にマレーシャは開いていたシェリエールとの距離を一飛びで一気に詰めて彼女の懐に潜り、カウンターを狙いで突きの姿勢を見せていたシェリエールの竹刀を力任せでうまく組み敷く
「つっ…!」
「…」
シェリエールはマレーシャの勢いから逃げるように体ごと竹刀を翻して攻撃を凌ぎ、再度何度か打ち合い続けるも、彼女の怒涛の攻撃から一方的な防戦を強いられていた
任務での敗戦、そして強さへの渇望を『安静期間』中のトレーニングの制限によって今まで持て余していた気持ちがバネとなり、マレーシャは一撃一撃に自分の感情を力強く乗せていた
「おまえ、ずいぶんあついじゃないか」
その勢いに呑まれかけながらも、シェリエールは態勢整えながら打たれる度に少しずつ竹刀の剣先をマレーシャに向けつつ、反撃の構えを見せ始める
やがて、勢いのまま攻めるマレーシャの側面からの攻撃に、シェリエールは勢いを殺さずに剣先をマレーシャに向けたまま攻撃を逸らすように薙ぎ、一歩踏み込んで突きの一撃を放った
「くッ…!?」
高速で迫る竹刀の剣先を寸前のところで転がるように相手の側面へと回避した為、竹刀に服を擦れた程度で済んだが、マレーシャにしては珍しくしかめっ面を晒していた
対照的に、してやったりとにやけて見せたシェリエールの追撃を警戒してマレーシャは間隔を開けるように大きく後ろへと飛び引く
「ふふん、闘いというのはおちつきも必要なんだよ」
「えっ?でもシェリちゃんピンチになると結構怒らなかった?あうりんと戦ったときもそうだったし」
「外野はうるさい!」
シェリエールとアウリの会話を聞き、自らを落ち着かせることでマレーシャは無言ながらもしかめ続けていたその顔から表情を取り払う
やがていつもの無表情の顔で眼光の鋭さだけは衰えさせず、逆手に持った竹刀を前に出して攻撃の構えを取った
「すこしはさむくなったか…」
相手が冷静さを取り戻したところでシェリエールもマレーシャに合わせるように竹刀を前に構えて、いつでも踏み込めるように両足に力を込める
お互いに呼吸を同調させて、刹那の間に双方から距離を一気に詰めて竹刀をぶつけ合う
勢いよく放たれた攻撃にお互い反発し、模擬戦とはいえど、互いに相手を倒すという気持ちに遠心力を乗せて再び衝突する
そうして打ち合いを再開させて数十秒ーーー
シェリエールは先程と同じように剣先をマレーシャからずらさないようにマレーシャの攻撃を往なしたり回避したりしながら、隙を見つけては突きを繰り返し
対するマレーシャは身体を唸らせながらも自分の立ち位置を目紛しく変えては攻撃から身を逸らし、時折身体の遠心力を頼りに力強い回転攻撃でシェリエールの姿勢を崩しにかかっていた
マレーシャの動作は剛の剣一筋を思わせるような力強い攻撃をしながらも、そのフットワークは非常に軽く、攻撃を上へ逸された瞬間にそのままの勢いで身体をシェリエールの頭上へと飛び越え、更にその最中に身を捩らせて空中で反撃を加えて距離を取るなど
自らに竹刀の動きを合わせるのではなく、竹刀の動きに自分の動きを同調させていた
まるで弧を描く竹刀の軌道をより滑らかにするように
「おお、やっとまーちゃんらしくなってきたね!」
「そうだね…だいぶ本調子に戻ってるみたい」
外から模擬戦を見ていたアウリとルリアが言うように打ち合う度にマレーシャの動きがより鋭くなっていき、シェリエールを翻弄し始めていた
対するシェリエールも攻撃の手数は減っているものの、その精度は徐々に増しており、追撃による決め手の攻撃を許さない
「……」
それでも、状況的にはマレーシャがやや優勢で、何度も竹刀を打ち合う度にシェリエールは徐々に後ろへと下がっていく
やがて壁際まで追い詰められたシェリエールは逃げ場を失って動きが鈍り、フォームを崩した竹刀を弾かれて無防備な姿を晒してしまい、気がつくと振り下ろされたマレーシャの竹刀が目前へと迫っていた
そしてーーー
「いったぁー!!」
張りのある竹刀の打撃音が鳴るとシェリエールは尻餅をつき、その目前でマレーシャは身を屈ませてシェリエールの様子を覗き込むように見ていた
先程、頭上に振りかぶられた竹刀をすかさず左肘で防いでおり、霊気によって防御力を上げていたものの消しきれなかった痛みがあるようで、左肘をさすりながら悔しそうな表情で立ち上がる
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