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異世界カジノ贈収賄事件 ~ガーニー官房長官の犯罪を暴け~ 3
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「極めて筋の良い贈収賄じゃありませんか…」
一兵は思わずそんな感想を洩らした。
カッツとアンリ夫妻、とりわけアンリはカジノ業者の選定…、どこの遊技機メーカーに賭場を仕切らせるか、その「職務権限」があり、そこで遊技機メーカーのガセミックはカッツとアンリ夫妻にとっての親分とも言うべきガーニー官房長官に3000枚もの金貨…、日本円にして3億もの金を贈り、そのうちの半額の1500枚もの金貨…、日本円にして1億5千万がカッツとアンリ夫妻に流れ、結果、ガセミックが見事、カジノを取り仕切ることになった…、ガセミックが金を贈ったガーニー官房長官にこそ「職務権限」はないものの、それでも「職務権限」のある子分のカッツとアンリ夫妻に対してガセミックより贈られた金の半額を渡して、ガセミックにカジノを仕切らせることにさせたのだから、これはもう筋の良い…、言うなれば「綺麗」な贈収賄、それも斡旋収賄であった。
「しかもカッツとアンリはその1500枚もの金貨を前の選挙でばら撒いた疑いもあります」
ワセダ長官はそう付け加えた。
「ばら撒いたって…、それって買収ってことですか?」
「その通りです」
ワセダ長官によると、カッツはカープ県全県区選出の国民議会議員であり、一方、女房のアンリはお隣のスサノオ県全県区選出の国民議会議員であった。
カープ県、スサノオ県共に、定数3の選挙区であるが、直近の総選挙でアンリが夫のカッツの選挙区であるカープ県全県区に「国替え」を果たしたのであった。
「カープ県はそれまで与党のミンジが2、野党のシュミンが1と仲良く棲み分けがなされていたのですが…」
そこへ急遽、与党・ミンジ所属のアンリが割り込んできた。表向き、与党での選挙区独占を狙ってのことだが実際には違う。
カープ県全県区選出の与党議員はカッツと、それにミゾヤンであった。ミゾヤンは現首相にして党総裁でもあるアヴェガーに対して批判的な立場を取る議員の一人として知られており、そこでアヴェガーはこのミゾヤンを落選させるべく、アンリを第三の候補としてカープ県へと「国替え」、要は割り込ませることにしたのであった。カープ県は定数が3で、そのうち1議席は野党が獲るので、与党が3議席独占するなど不可能であった。
必然的に与党3候補のうち、1人が落選するわけだ。無論、アヴェガーはミゾヤンを落選させるためにアンリを立たせたのであった。
ちなみにアンリに白羽の矢が立ったのは他でもない、アンリが亭主のカッツ共々、総理総裁のアヴェガーの「お友達」だからだ。
ともあれこうして派手な選挙戦が展開された。いや、派手な選挙戦を展開したのはカッツとアンリ夫妻であり、この夫婦は派手な「実弾攻勢」を仕掛けたそうな。
結果、見事にカッツと共にアンリも初当選を果たし、そして下馬評通り野党・シュミンも1議席を獲ったことから、現職議員のミゾヤンが弾き飛ばされた格好となった。
「我々、検察としてはカッツとアンリの公職選挙法違反、買収をも視野に入れて捜査しております」
ワセダ長官の説明に一兵は、「成程…」と納得したような声を出すと、
「それで…、捜査の端緒…、何がきっかけで捜査を?」
一兵はずっと気になっていたことを尋ねた。
「金貨を…、3000枚もの金貨を実際に官房長官のガーニーサイドに運んだガセミックの役員だった男の供述がきっかけです」
「役員だった男…、ああ…、何かのきっかけで会社を…、ガセミックを追われ、それで腹いせに検察に駆け込んだ…、そんなところですか?」
一兵はそんな絵図を頭の中で思い描き、そしてそれはその通りであったらしく、ワセダ長官を頷かせた。
「その通りです。で、その男…、ミライズの供述によりますと、議員会館に入居するガーニー官房長官の事務所に金貨を…、3000枚もの金貨を届けたそうです…」
「カジノという賭場をガセミックで仕切らせてもらう代わりに、ですね?」
「そうです」
「議員会館ということは…、面会証は…」
「勿論、押さえました」
「ということは記録があったと?」
「ええ。ミライズが供述した日時の面会証、それを押さえることに成功しました」
「その、ガーニーに贈った3000枚もの金貨、そのうちの半分の1500枚もの金貨が子分であるカッツとアンリ夫妻、とりわけ職務権限のあるアンリ夫人に流れることもミライズ…、と言うよりはガセミックは勿論、承知していたと?」
「その通りです。その結果、我々はガーニーの事務所…、議員会館に入居する事務所は地元事務所、さらに自宅に同時に捜索をかけました」
「それでガサ…、捜索の結果は?」
「ハマ県にある地元事務所の金庫から金貨200枚を押収することに成功しました」
「200枚…、3000枚の金貨のうち半分は子分のカッツとアンリ夫妻に贈ったから、ガーニーの手元に残っているのは同じく1500枚の金貨の筈…、やはり1300枚の金貨も選挙の…、ガーニー自身の選挙に使ったとか?」
「それもないとは言えないでしょうが、恐らくは他の子分の議員の選挙に使ったのではないかと…」
「成程ねぇ…、まぁ、ともあれタマリ…、金貨が出たのならもう逮捕状が取れるでしょうに…」
「それがそうはいかないんですよ」
ワセダ長官は難しい顔付きでそう否定した。
「どうして?」
「その200枚の金貨ですが、正規の政治資金だと…」
「正規の政治資金?」
「そうです。決して、ガセミックから贈られた金貨ではなく、他の企業からの政治献金だと…、勿論、政治資金収支報告書にもその旨、記載されていると…」
「つまり表の金だと、そう言ってるわけですね?」
「その通りです」
「で、検察としてはガーニーのその言い訳を覆せないと?」
「残念ながらその通りです」
ワセダ長官は如何にも無念そうにそう呟いたかと思うと、一転、力強い調子で、
「そこで是非ともイッペイさん…、いえ、イッペイ捜査官のお力をお借りしたく…」
一兵にそう懇請したのであった。
一兵は思わずそんな感想を洩らした。
カッツとアンリ夫妻、とりわけアンリはカジノ業者の選定…、どこの遊技機メーカーに賭場を仕切らせるか、その「職務権限」があり、そこで遊技機メーカーのガセミックはカッツとアンリ夫妻にとっての親分とも言うべきガーニー官房長官に3000枚もの金貨…、日本円にして3億もの金を贈り、そのうちの半額の1500枚もの金貨…、日本円にして1億5千万がカッツとアンリ夫妻に流れ、結果、ガセミックが見事、カジノを取り仕切ることになった…、ガセミックが金を贈ったガーニー官房長官にこそ「職務権限」はないものの、それでも「職務権限」のある子分のカッツとアンリ夫妻に対してガセミックより贈られた金の半額を渡して、ガセミックにカジノを仕切らせることにさせたのだから、これはもう筋の良い…、言うなれば「綺麗」な贈収賄、それも斡旋収賄であった。
「しかもカッツとアンリはその1500枚もの金貨を前の選挙でばら撒いた疑いもあります」
ワセダ長官はそう付け加えた。
「ばら撒いたって…、それって買収ってことですか?」
「その通りです」
ワセダ長官によると、カッツはカープ県全県区選出の国民議会議員であり、一方、女房のアンリはお隣のスサノオ県全県区選出の国民議会議員であった。
カープ県、スサノオ県共に、定数3の選挙区であるが、直近の総選挙でアンリが夫のカッツの選挙区であるカープ県全県区に「国替え」を果たしたのであった。
「カープ県はそれまで与党のミンジが2、野党のシュミンが1と仲良く棲み分けがなされていたのですが…」
そこへ急遽、与党・ミンジ所属のアンリが割り込んできた。表向き、与党での選挙区独占を狙ってのことだが実際には違う。
カープ県全県区選出の与党議員はカッツと、それにミゾヤンであった。ミゾヤンは現首相にして党総裁でもあるアヴェガーに対して批判的な立場を取る議員の一人として知られており、そこでアヴェガーはこのミゾヤンを落選させるべく、アンリを第三の候補としてカープ県へと「国替え」、要は割り込ませることにしたのであった。カープ県は定数が3で、そのうち1議席は野党が獲るので、与党が3議席独占するなど不可能であった。
必然的に与党3候補のうち、1人が落選するわけだ。無論、アヴェガーはミゾヤンを落選させるためにアンリを立たせたのであった。
ちなみにアンリに白羽の矢が立ったのは他でもない、アンリが亭主のカッツ共々、総理総裁のアヴェガーの「お友達」だからだ。
ともあれこうして派手な選挙戦が展開された。いや、派手な選挙戦を展開したのはカッツとアンリ夫妻であり、この夫婦は派手な「実弾攻勢」を仕掛けたそうな。
結果、見事にカッツと共にアンリも初当選を果たし、そして下馬評通り野党・シュミンも1議席を獲ったことから、現職議員のミゾヤンが弾き飛ばされた格好となった。
「我々、検察としてはカッツとアンリの公職選挙法違反、買収をも視野に入れて捜査しております」
ワセダ長官の説明に一兵は、「成程…」と納得したような声を出すと、
「それで…、捜査の端緒…、何がきっかけで捜査を?」
一兵はずっと気になっていたことを尋ねた。
「金貨を…、3000枚もの金貨を実際に官房長官のガーニーサイドに運んだガセミックの役員だった男の供述がきっかけです」
「役員だった男…、ああ…、何かのきっかけで会社を…、ガセミックを追われ、それで腹いせに検察に駆け込んだ…、そんなところですか?」
一兵はそんな絵図を頭の中で思い描き、そしてそれはその通りであったらしく、ワセダ長官を頷かせた。
「その通りです。で、その男…、ミライズの供述によりますと、議員会館に入居するガーニー官房長官の事務所に金貨を…、3000枚もの金貨を届けたそうです…」
「カジノという賭場をガセミックで仕切らせてもらう代わりに、ですね?」
「そうです」
「議員会館ということは…、面会証は…」
「勿論、押さえました」
「ということは記録があったと?」
「ええ。ミライズが供述した日時の面会証、それを押さえることに成功しました」
「その、ガーニーに贈った3000枚もの金貨、そのうちの半分の1500枚もの金貨が子分であるカッツとアンリ夫妻、とりわけ職務権限のあるアンリ夫人に流れることもミライズ…、と言うよりはガセミックは勿論、承知していたと?」
「その通りです。その結果、我々はガーニーの事務所…、議員会館に入居する事務所は地元事務所、さらに自宅に同時に捜索をかけました」
「それでガサ…、捜索の結果は?」
「ハマ県にある地元事務所の金庫から金貨200枚を押収することに成功しました」
「200枚…、3000枚の金貨のうち半分は子分のカッツとアンリ夫妻に贈ったから、ガーニーの手元に残っているのは同じく1500枚の金貨の筈…、やはり1300枚の金貨も選挙の…、ガーニー自身の選挙に使ったとか?」
「それもないとは言えないでしょうが、恐らくは他の子分の議員の選挙に使ったのではないかと…」
「成程ねぇ…、まぁ、ともあれタマリ…、金貨が出たのならもう逮捕状が取れるでしょうに…」
「それがそうはいかないんですよ」
ワセダ長官は難しい顔付きでそう否定した。
「どうして?」
「その200枚の金貨ですが、正規の政治資金だと…」
「正規の政治資金?」
「そうです。決して、ガセミックから贈られた金貨ではなく、他の企業からの政治献金だと…、勿論、政治資金収支報告書にもその旨、記載されていると…」
「つまり表の金だと、そう言ってるわけですね?」
「その通りです」
「で、検察としてはガーニーのその言い訳を覆せないと?」
「残念ながらその通りです」
ワセダ長官は如何にも無念そうにそう呟いたかと思うと、一転、力強い調子で、
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