握るのはおにぎりだけじゃない

箱月 透

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エピローグ

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 あの日のことを、涼は今でもはっきりと憶えている。
 大学の入試日だったが、ほとんど緊張はしていなかった。滑り止めの大学はすでに合格通知が届いていたし、文学部に入学できるならどこの大学だって構わなかったから。母親も志望校について口を出してくることはなかった。それは涼の選択を尊重しているなんて理由ではなく、ただ世間体や彼女自身の見栄を損なわない大学ならどこでもよかったからなのだろう。まぁそれでも、進学させてもらえるだけでもありがたかった。
 保護者たちに見送られながら門をくぐる受験生たちを尻目にたった一人で受験会場の大講義室へと向かっているとき、階段を上っていると突然足元に参考書が滑り落ちてきた。
 あちこち付箋が貼られていてぼろぼろに使い込まれたそれを拾い上げて、落とし主であろう生徒に手渡した。ただそれだけのほんの些細なその行動に、けれど落とし主はわざわざお礼にと言っておにぎりをくれた。
 本当は受け取るつもりなんてなかった。それはきっと彼の昼食として準備されたものだろうし、それをもらえるほどのことをしたつもりはない。けれど、綺麗にラップに包まれた、つやつやしたご飯を見ているうちに思わず受け取ってしまっていた。「落ちたおにぎりなんて縁起悪いよね」と眉を下げて笑う彼を放っておけなかったのもあるが、単純にそのおにぎりがひどく美味しそうに見えたのだ。
 実際、昼休みに食べてみると、塩の加減が絶妙なうえに中に入っている梅の酸っぱさが集中力を高めてくれるようで、涼は夢中で頬張った。とても優しい味がした。冷めているはずなのに、なぜかあたたかいと思った。
 食事なんて腹さえ満たせられたら何でもよくて、手作りだろうがコンビニやスーパーで買ったものだろうが何も変わらないと思っていたのに。けれどそのおにぎりは、食べなれたスーパーのおにぎりよりもなぜかとても美味しく感じた。
だから、思わず叫び出してしまいそうなほど驚いた。
 帰りの電車を待つホームで、おにぎりをくれた彼の隣に松雲がいるのを見たときは。
 あ、と思ったその瞬間に二人を乗せた電車はたちまち遠ざかっていく。あっという間に小さくなっていく電車を、間抜けに口を開けたまま茫然と見送る。
 やがてやって来た電車に乗り込んでからも、彼らの姿が脳裏から消えることはなかった。
 ずっと謝りたいと思っていた、ずっと心から離れなかった人。忘れたことなんて一度もなかったから、十年の月日が経っていてさえ彼を見間違うはずなんてない。
 二人はどういう関係なのだろう。父親というには年齢が近すぎるし、兄というには離れすぎている。けれどとても親しそうだった。
 ふと昼間に食べたおにぎりの味が蘇った。美味しくて、ひどく優しい味。あのとき食べたカレーと同じだった。
 膝の上に抱えていたリュックを漁り、ゴミ袋の中から丸めたラップを取り出す。ただのゴミだとは分かっている。けれど、どうしても手に持って確かめたかった。自分は、随分と久しぶりに人の手作りの料理を食べたのだ、ということを。
 もう会えないかもしれない二人の面影を目蓋の裏に宿しながら、涼は手の中の透明なラップをじっと見つめていた。
 たとえ二人とも試験に受かっていたとしても彼の学部も名前も分からないし、再び会うことはできないだろうと思っていた。
 だから、引っ越したばかりのアパートで、インターホンに呼ばれてドアを開けた先にあの彼がいたときは心底驚いた。
 芝崎康介と名乗った彼は、あの日と変わらない笑顔でまっすぐに涼を見ていた。あまりに驚いて、その拍子に松雲に昔お世話になったことを伝えようとして──けれど、なんとか思いとどまった。
 松雲はもう自分のことなんか忘れているだろうし、もし覚えていたとしてもきっといい思い出ではないだろう。恩を仇で返すような真似をしたのだから。だから、何も言わない方がいいに決まっているのだ。
 そうして代わりに「もしよかったら仲良くしてくれる?」と告げた。
 松雲のこれまでを、二人がどんな関係でどんな日々を積み重ねてきたのかを、目の前に立つ彼を通して知ろうと思ったのだ。「うん、もちろん」と快諾して彼は屈託なく笑う。胸の内側が小さく痛んだのには気づかないふりをした。
 これまで友達と呼べる存在なんてほとんどいなかったから会話もチャットアプリでのやりとりも慣れていなくてぎこちない会話しかできなかったけれど、それでもチャットアプリでのやりとりの中で松雲は彼の養父なのだと知れた。そう打ち明けた彼の文面はあっけらかんとしていて、これまでの松雲との生活は明るいものだったのだろうと窺える。とは言え不用意に踏み入っていい話でもない。知りたい、と思いながらも、それ以上その話題を掘り下げることはできなかった。
 だから、康介に作りすぎたカレーを食べに来ないかと誘われたとき、これはまたとないチャンスだと思った。もう一度彼の手料理を食べれば、あのおにぎりを食べたときに感じたものをまた感じられるかもしれない。それに、今回は昔松雲が作ってくれたのと同じ料理を食べることができるのだ。高鳴る胸を押さえながら、涼はうん、と頷いた。
 けれど、振る舞われたカレーを食べて、そして思い知った。
 ウィンナーが入っているところや、なにより優しくてあたたかい味がするところは、確かに二つのカレーはよく似ている。けれど、ちょうどいい塩梅で野菜がルーに溶け込んでいる彼の作ったものと、ところどころ焦げついていて少し苦かった松雲のつくったものは、たとえ似ていたとしても全くの別物であり決して比べることなどできないのだ、と。
 そう理解してさえ、それでも嬉しかった。また誰かの手作りの料理を食べられたことが。またこの優しい料理を食べられたことが。胸が詰まって、少しでも気を抜くと涙がこぼれそうで、夢中でスプーンを動かした。
 それからも康介はたくさんのものをくれた。毎週水曜日に晩ご飯を一緒に食べようと約束してくれて、慣れない魚料理に躊躇しているとさりげなく助けてくれて、一般的な家庭料理を知らないゆえにリクエストができずにいるとわざわざレシピ本を買ってくれて、他人から言われた言葉に反論してくれて、そしてずっとそばにいてくれた。
 ずっと一緒にいる。
 言葉にするのは簡単だが、それがどれだけ難しいことかなんてよく分かっている。ずっと一緒にいるからねと言ってくれた祖母は死んでしまったし、初めてできた友達も自分から距離を置いてしまったし、松雲だってお礼の一言も言えないままに離れてしまった。
 けれど康介は、一緒にいたいというわがままを受け入れたうえに同じ言葉を返してくれた。隠し事をされていたと気づいてさえ、それでも離れるのは嫌だと言ってくれた。
 いつだって康介は、なんてことないように、まるで当たり前だとでもいうように欲しかったものをそっと手渡してくれる。気がつけば、空っぽだった両手のなかにはたくさんのものが溢れていた。それらはぜんぶ、まるで陽光をうけてきらめく宝石のようにきらきらと涼の胸を照らしてくれる。
 そんな彼だから、ずっと一緒にいたいと思う。そしてこれからは自分も彼になにかをあげられるようになりたいと、心から願ってしまう。
 ごとん、と身体が揺れた。
 涼はゆっくりと目を開ける。いつのまにか眠ってしまっていたらしい。窓から射す陽が眩しくて、ぱちぱちと瞬きを繰り返す。
 隣を見れば、康介も眠っていた。すうすうと穏やかな寝息をたてる頬と少しだけ茶色がかった髪を、金色の陽光が淡くやわらかに縁どっている。思わずふっと口元が緩んだ。胸にじんわりと満ちるあたたかさを感じながら、座席の上に投げ出されている康介の左手をそっと握りしめた。




 真上から容赦なく降り注ぐ日射しが、むき出しの腕にじりじりと照り付ける。そんな太陽の苛烈さとは裏腹に住宅街にはのんびりとした空気が漂っていた。
 駅から康介の実家までは徒歩十五分くらいらしい。もう十分以上歩いているから、もうそろそろ着く頃だろうか。涼は額に薄く滲んだ汗を指で拭った。そばを走り抜けていく自動車がアスファルトの上に停滞した熱気をかき混ぜていく。どこかで鳴いている蝉たちの声が重なり合って耳の中でこだまする。
「ほら、見えてきたよ。あの紅葉の木があるところ」
 真夏の昼のぎらぎらとした日射しに目を細めながら、康介が前方を指さす。手のひらでひさしを作りながら彼の指の先へと目をやる。行儀よく立ち並ぶ家々のなかに、紅葉かどうかは分からないが青々とした木が庭に植わっている家が見えた。
 思わずごくりと唾を飲みこむ。覚悟は決めたつもりだけれど、それでも胃のあたりがそわそわして落ち着かない。
「松雲、たぶん待ちきれなくて玄関でスタンバってると思う。玄関開けたら即松雲になると思うけど驚かないでね」
 康介がいたずらっ子のようにニヤリと笑った。「なんだそれ」とつられるように涼も笑みをこぼす。
 石でできた立派な門を抜けるといっそう蝉の声が大きくなったから、きっとこの紅葉の木で鳴いているのだろう。けれど、すぐそばの蝉の合唱よりもはるかに大きな音で自分の心臓の音が体中に響く。
「大丈夫だよ」
 康介がささやく。振り向くと、彼はにっこりと微笑んだ。
「うん」
 涼もこくりと頷いた。
 康介の手が玄関の引き戸へとかけられる。
「ただいまー」
「お邪魔します」
「おかえり。待ちくたびれちゃいましたよ」
 敷居を跨ぐと同時に声がかけられる。見れば、康介が言っていた通り、上がり框に立った松雲が出迎えてくれた。
 藍色の浴衣を纏った彼は、穏やかな笑顔を浮かべていた。十年前と何も変わらない、その姿。
 ぶわりと懐かしさが込み上げる。たくさんの言いようのない想いが胸に渦巻いて、息が止まる。
「久しぶりですね、涼。随分と大きくなりましたね」
 眩しいものを見るかのように、松雲が優しく目を細める。
「はい、あの……」
 言いたいこと、言わなければならないことはたくさんある。けれど、言葉は喉奥に詰まって出てこない。思わず半歩後ずさる。ざり、とスニーカーが乾いた音を立てた。
 そのとき、固く握りしめていた右手を、康介の手のひらがそっと包みこんだ。繋いだ手から伝わるぬくもりに少しずつ心が落ち着いていく。深呼吸をして、思い切って口を開く。
「十年前、たくさんお世話になったのにちゃんとお礼も言えないまま、むしろ失礼なことをしたままになってしまって、ごめんなさい」
 そう告げて、頭を下げる。
 ぎゅ、と繋いだ手に力がこめられた。応えるように握り返して、顔を上げる。
 松雲の目を見つめる。少し茶色っぽくて、優しくてまっすぐな光を宿した瞳は康介のそれとよく似ていた。
「それから、本当にありがとうございます。十年前のこともですけど、俺、あれからずっと『清水松雲』さんの小説を読んでて。ひとりのときもその本たちがそばにあったから、俺は今ここにいられるんだと思ってます。ありがとうございます」
「そんな、お詫びもお礼も私の方こそ言わなくちゃいけません。まず、十年前、私の軽はずみな行動であなたに心苦しい思いをさせてしまって、心から申し訳なかったと思います。なのにあなたが今ありがとうと言ってくれたこと、とても嬉しいです」
 落ち着いた声で告げられる言葉が、胸の中に沁みていく。涼は小さく頷いた。
「それに、康介はいつも電話であなたのことをよく話してくれるんです。作った料理を美味しいって食べてくれただとか、一緒に出かけただとか、とっても嬉しそうに。だから、この子と仲良くしてくれて──この子のそばにいてくれて、ありがとう」
「そんな、俺は……」
 思いがけない言葉に戸惑う。どれも自分がしたいからしたことで、何もお礼を言われるようなことではない。それでも、頬がこそばゆくなるような気恥ずかしさと喜びがこみ上げてくる。
「じゃあ俺も混ざろっかな!」
「え?」
 康介が突然声を上げた。パッと振り返って隣を見ると、目が合った彼はニコッと楽しそうに笑う。
「松雲、昔も今も涼のそばにいてくれてありがとう。松雲が涼に声をかけて、たくさん話をして、本を通してそばにいてくれたおかげで、俺は涼と出会えたんだと思う。それで涼は、俺のそばにいてくれてありがとう。これからも、一緒にいてほしい」
 そう淀みなく告げる康介の眼差しはどこまでもまっすぐだった。
 もうずっと喉奥に凝固していたしこりが、胸に広がるぬくもりによって溶かされていく。肩から力が抜けて、体が風船になったみたいにふわふわと軽くなる。
 ああ、そばにいることをゆるされるのは、こんな気持ちなのか。噛みしめながら、涼はそっと目を閉じる。
 そばにいられる今だけじゃない。康介は、出会ってすらいなかった過去も、不確かで頼りない未来も、そのすべてを明るい言葉で照らしてくれた。
 今ならきっと運命だって信じられる。
 今にも溢れだしそうな熱さを堪えながら、目を開ける。まっすぐな眼差しに応えるために、同じように康介を見つめた。
「うん。ずっと一緒にいる」
 告げると、康介はとっておきの宝物を貰った子どものように嬉しそうに笑ってくれた。
「はい、みなさん、言いたいことは全部言えましたか?」
 ぱちんと手を鳴らした松雲が、まるで遠足の引率をする教師のように問いかける。涼と康介は顔を見合わせてくすくす笑いながら「はーい」と頷いた。
「じゃ、お昼ご飯にしましょう。私もうお腹ぺこぺこになっちゃいましたよ。康介、何を作ってくれるんです?」
「とりあえずうどんかな。あとは冷蔵庫の中見て決めるけど、まぁ野菜炒めとか」
 靴を脱ぎながら康介が答える。涼も脱いだ靴を揃えながら「俺も手伝いたい」と申し出た。
「おや、それは嬉しいですね。大切な二人の作った料理を食べられるなんて、私は幸せものです」
 大げさなほどに顔を輝かせながら松雲が振り返る。
「うん、とびきり美味しいの作るから。な、涼」
「うん。楽しみにしててください」
 笑う二人に、涼もまばゆいばかりの笑顔を返す。三人で食べる料理は、どんなものでもきっと美味しくなるはずだ。
 あたたかな光の満ちる台所へと、涼は足を踏み入れる。
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