エアコン壊れたら彼氏ができた

箱月 透

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 あつい。あつすぎる。土屋は微かにうなり声を上げながら目を覚ました。額にじっとりと滲んだ汗を手のひらで拭う。朝の目覚めとしては最低の気分だ。
 ぼんやりとした覚醒しきらない頭のまま、薄暗い部屋を見回す。深い青色のカーテンの隙間からは、既に灼けるような日光が射し込んでいた。さすが、八月半ばの太陽は容赦がない。最近は朝といえども気温が高い日が続いていた。あまりに寝苦しくて夜中に目が覚めてしまうことが続いたので、今では夜の間もずっとエアコンを付けっ放しにしている。
 それなのに、なんだこの暑さは。土屋はイライラとしながら首筋に流れる汗をTシャツの襟ぐりで拭った。やかましく鳴く蝉の声とともに、まとわりつくような不快な暑さが部屋を満たしている。
 そこでふと、エアコンの稼働音が聞こえないことに気付いた。部屋の隅に取り付けられているエアコンを見遣ると、稼働中であることを示す緑のランプが消えている。もちろん、消した覚えなどない。土屋は怪訝そうに眉を寄せた。一抹の不安がちらりと胸をよぎる。まさか、と思いつつも、寝ている間にうっかり消してしまったのだろうと無理やり自分を納得させた。
 うっかり消してしまったのなら仕方ないし、もう一度エアコンをつければいい話だ。土屋は枕元に置いてあるリモコンに手を伸ばした。これで快適空間を取り戻せるのだし、あとはゆっくり二度寝を決め込んでやろう。
 そう思いつつ電源ボタンを押す。けれどもエアコンは何の反応も示さない。背中を冷たい汗が流れる。冗談よせよ、などと胸の内でごちながらボタンを連打してみても、やはりエアコンは重い沈黙を貫いている。タオルケットをはね飛ばながら慌ててベッドから飛び降りて、小さなローテーブルの上に立ってエアコン本体についている電源ボタンを押してみる。しかし、無情にも結果は変わらない。
「嘘だろ、おい」
 思わず独り言がこぼれていた。けれど当たり前のように嘘ではないし、エアコンは動かない。
 故障確定。つまり灼熱地獄の継続の確定である。
 土屋はくらりと目眩を覚えた。心なしか、さらに部屋の中の熱が上がった気がする。
 よろよろとベッドまで引き返し、枕元に置いてあったスマホで時刻を確認する。まだまだ朝も早い時間である。今日はバイトもなければ遊びの予定もなく、なんだかんだと忙しい大学生の夏休みにおける貴重な休日であった。自堕落だとは自覚しているが、昼前くらいまで寝ているつもりであったのに、こんな部屋ではおちおち寝てもいられない。下手をすると、次に目覚めることすらなくなってしまいそうだ。
 何にせよ、早く修理をしてもらわなければならない。土屋はスマホを開いた。賃貸だから取り敢えず大家に電話しなければ、いやでもこんな朝早くにかけるのは申し訳ない。それに夏真っ只中のこの時期だ、電器屋だってすでに修理の予約はいっぱいに埋まっているかもしれない。どうしたものかと悩みながら、検索アプリに「エアコン 修理」と打ち込む。
 と、そのときスマホがけたたましい音をたてた。目覚ましのアラームではなく、妙に陽気なリズムの着信音。驚いて思わず取り落としそうになったスマホをなんとか握りなおし、画面に表示された名前を確認する。そこに示されている「坂口智樹」という名前を見て、土屋は眉を寄せた。
 この男が電話をかけてくるのは特に珍しいことではない。むしろくだらないことでもしょっちゅう電話をかけてくるような相手だ。だからこそ、今はそんなくだらない電話に付き合ってやる暇などないというのに。
 こんなときに、一体何の用だ。
 うんざりと溜め息をつきつつ、「応答」のボタンをタップする。
「……朝っぱらから何の用だよ」
 不機嫌を隠しもしない低い声で尋ねる。どうせこの男には暖簾に腕押しなのだと理解しながら。
「あ、寝てた? メンゴメンゴ~」
 相変わらずの軽薄な声音に、土屋は思わずこめかみにピシリと青筋を立てる。もともと短気な気質であるし、そのうえこの蒸し器の中のような暑さでは彼のへらへらとした言葉を受け流す余裕など溶けてなくなってしまっている。
「切るぞ」
「あっ待って待ってゴメンって! つーか切ってもいいんだけど、その前にドアだけ開けてくんない?」
「ドア? まさかお前……」
「うん、もう来ちゃってるんだよね」
 思いがけない台詞にまたもや大きな溜め息が溢れた。こんな朝早くに、連絡もせずに何をしに来たのだろう。呆れつつも、けれど何か事情があるのかもしれないと考え直す。この、いつも人を食ったような態度をしていて何でものらりくらりと躱してしまう男に限ってまさか、とは思うものの、よほど切迫つまった状況なのかもしれない。とにかく、このまま捨て置くのはなんだかしのびない。
 土屋はベッドから重い腰を上げると、のろのろとドアの前まで行きガチャリと鍵を開けた。
「オハヨ、土屋くん」
 ドアを開けると、目を刺すようなまばゆい日光とともに、見慣れたふわふわの天パ頭と死んだ目をした締まりのない顔がひょっこりと覗いた。顔や首筋にはいくつも玉のような汗がぽろぽろと浮かんでいる。着ている白いTシャツもところどころ汗で色が変わっていた。
「……何の用だよ、坂口」
 こんなクソ暑い中をわざわざやってきた理由を尋ねるも、彼は「その前に部屋に入れろ、めちゃくちゃ暑いんだよ」などと言いながら勝手に玄関に滑り込む。そのままぽいっとサンダルを脱ぎ捨てると、簡素な造りのキッチンを通り抜け、その先のワンルームへと行ってしまった。相変わらず身のこなしと逃げ足だけは速い男である。何度目かの溜め息をつきながら土屋は彼の後へと続く。
「やっほーいオアシスへ突撃ー」
 頭の悪さを思う存分に露呈させた掛け声とともにワンルームのドアを勢いよく開けた坂口は、それからピシリと固まった。もちろん彼の望んだ涼しいオアシスなんてものはなく、あるのはただの地獄のような灼熱である。
「なにこれ、何でこんな暑いの」
「エアコン壊れたんだよ」
 振り返った坂口のさもうんざりといった顔に向けて、ぴしゃりと言い放つ。
「はぁ~~? せっかく来たのにここもエアコン壊れてるとかほんと意味分かんねーんだけど」
 眉をぎゅっと寄せてしかめっ面になった彼は、理解不能といった表情で頭を振った。そんな顔をしてみせたところで、部屋が暑いことは変わらない。土屋はプイとそっぽを向いた。
 「マジ最悪なんですけどォ」とか「どこまで行っても南国気分かよ」とかわけの分からない叫び声を上げる後頭部を「うるせェ」と叩く。喚かれると余計に暑くなるのだ。とは言え、叩いたところで坂口が静かになるわけもなく、「いてーよばか」だの「暴力はんたーい!」だのと余計に騒ぎたてだしてしまった。土屋はこれ見よがしに両耳を手のひらで塞いだ。
「ていうかもしかしてお前の家もエアコン壊れてんのか」
 さっき、坂口は「ここもエアコン壊れてる」と言っていた。土屋が勝手にフローリングに寝転んでいる坂口に尋ねると、彼は「んんー」と不鮮明な返事を寄越してきた。
「明け方頃に暑くて目ぇ覚めて、ふとエアコン見たらなんか水が滴ってんの。すっごくびっくりした」
「それは災難だったな」
「お前もな」
 坂口がニヤッと笑う。土屋は目を逸らしながらポリポリと頭の後ろを掻いた。
「……どこもかしこも壊れやがって、どうしたんだ最近のエアコンは」
 土屋はぼやきながら麻のラグの上に座り込んだ。隣で寝そべっていた坂口がゴロンと寝返りをうち、土屋のほうを向く。
「ストライキじゃね? こんな朝夕問わず休む暇なく稼働させられたんじゃ堪ったもんじゃない、地球環境のためにも、ここらで一斉に休暇をとってやれ! って」
「エアコンが地球温暖化を憂うか? 悪化させてる張本人だろ」
「ばっか、張本人は人間だろ? 人間どもに無理やり使役させられてるだけだぜ、アイツらは」
「お前はエアコンか人間かどっちの味方なんだよ」
 呆れて目を細める。坂口はへへっと軽い笑い声を上げた。開いた口から白い八重歯がちらりと覗く。
 こうした、特に意味のない会話は二人のルーティーンみたいなものであった。頭で考えるより先に口から突いてでる言葉を交わし合う。中身がない、と言われれば否定できないが、けれどポンポンと飛び出る軽口の応酬はけっこう楽しいものである。
 くだらない会話を繰り広げている最中も、進行形で室温は上がり続けている。閉めきったカーテンの微かな隙間から射し込む光も、だんだんと強さと激しさを増していく。電気をつけていない部屋のなかでは、その金色の光だけがひどく鮮烈だ。
「なんで電気つけてねーの」
 坂口が天井にぶら下がる丸い電球を指差した。
「ちょうど起きたところだったんだよ」
「おー、グッドタイミングだったってわけだ」
「なにがグッドタイミングだよ」
 土屋は隣に転がっている坂口の丸出しになったおでこをぺしりと叩いてやった。痛え、と喚く声が上がる。
「カーテン閉めてんのになんでこんな日射しつえーの」
 坂口が眩しげに目を細めながら、寝転んだまま窓を見上げた。つられるように窓に視線をやった土屋も、坂口と同じような顔になった。ギラギラと差し込む光は、残像すら残しそうなほどに強烈だ。薄暗い部屋の中ではその強烈な光が目に痛い。土屋は慌てて目を背けた。
「夏なんだから仕方ないだろ」
「夏だからって太陽が頑張りすぎてるだろ、いい加減お休みしてろバカヤロー」
「去年も同じこと言ってたぞお前」
「まじか……進歩がねぇな」
「同感だ」
 いつの間にやら鳴き出していた蝉の声がいくつか重なり合いながら聞こえてくる。おそらく窓のすぐそばに生えている木にとまっているのだろう。随分と近くから聞こえてきている。
「あー、すっげェ夏って感じ」
 大の字になった坂口が呟く。
「そりゃ夏だからな」
「ちょっと麦茶ついできて」
「自分でいけよ」
 短パンの裾から伸びる剥き出しの脚を蹴ってやる。汗ですこしベタついていた。
「ケチくせーなぁ。俺は客人だぞ、ちゃんともてなせ」
 ぶつぶつと文句を言いながらも坂口は素直に立ち上がった。ペタペタとキッチンのほうへ歩いていく背中に向かって言い返す。
「なんで朝っぱらから急に押しかけてくる迷惑な奴をもてなさなきゃならねーんだよ」
「いいじゃん。暑い中わざわざ来てやったんだぜ」
 ワンルームとキッチンを隔てるドアの向こうから、思いのほか真剣な声音が届いた。思わず土屋はキッチンへと目をやる。ドアの向こうにいるから、そう言った坂口の表情は分からなかった。
 バタン、と冷蔵庫の扉を開ける音がする。勝手知ったる、といった様子で麦茶のポットを取り出してトポトポとコップに注いでいる様子が伝わってくる。
 坂口が家に押しかけてくるのは、そう珍しいことではない。二年と半年の付き合いの中で、お互いの家を行き来した回数は両手両足を使っても数えきれないだろう。我が家の勝手はもう充分に熟知されている。
 ペタペタと足音を立てながら部屋に戻ってきた坂口は、また床の上にどかりと座り込んだ。その手のなかにあるものを見て、土屋は小さく眉を寄せる。
「おい、それじゃなくて透明なやつがあっただろ、ガラスのやつ」
 土屋はキッチンの食器棚を指差した。指の先を振り返ったあと、坂口はへらりと笑った。
「ああ、目についたのがコレだったから」
 飄々と言い放ちながら、手の中にある、猫の絵が描かれた青いマグカップを小さく持ち上げる。そのマグカップは、冬になるとコタツ目当てでこの家に入り浸るようになる坂口が自分用にと置きっ放しにしていたものである。
「ガラスのコップのほうが前に置いてあっただろ」
「いいじゃん、これが俺のなんだし」
「けど、夏にマグカップってなんか気持ち悪くねぇか」
「変なとこでこだわるよな、お前」
「変じゃねーだろ。夏に麦茶いれるのは透明なコップって決まってるだろうよ」
「でもデカい方がいっぱい入るじゃん」
「人んちの麦茶をどんだけ飲むつもりでいるんだよ」
「うーわ、せっかくお前にも分けてやろうと思ってたのにもう分けてやんねー」
「ガキかよ」
 土屋は思わずふっと吹き出した。図々しく茶を催促するのに、そのわりに人に分けてやろうとするなんて。相変わらずどこか読めない男である。
 拗ねたように頬を膨らませながら、坂口はマグカップに口をつけた。ゴクゴクと喉が鳴り、小気味よい音が聞こえてくる。大きく上下する少し尖った喉仏の横を、透明な汗がゆっくりと流れる。白いTシャツに吸い込まれたそれは、途端に小さなシミをつくった。ぼんやりとその様子を眺めていると、ふいに坂口と目が合った。
「ああー生き返るわー」
 大げさな溜め息をついた坂口は、それからずいとマグカップを土屋へと差し出す。
「やっぱお前も飲みたいんだろ」
 ずっと見てたもんな、と坂口が屈託なく笑う。土屋は慌てて頭を振った。
「いや、べつにそんなんじゃ……」
 お前の汗を見てました、なんてことを言えるはずもない。いや、べつに汗を見てたくらいどうってことなかっただろう。慌ててしまった自分にじわじわと気恥ずかしさが込み上げてくる。くそ、素直に受け取っておけばよかった。土屋は内心で歯噛みした。
 そんな様子に「そう?」と首を傾げた坂口は、またマグカップに口をつける。再び鳴り出した喉の音に、なんだか居た堪れないような気分になる。その音をかき消すように、土屋はリモコンを手繰り寄せてテレビの電源をつけた。ぱっと溢れだした賑やかな音に、なぜか少しだけ救われたような気になる。
「茶ぁ飲んだらちょっと涼しくなるな」
 嬉しそうに声を弾ませた坂口は、またごろんと床に寝そべる。今度はうつ伏せの姿勢で、頬までぴったりと床につけている。
「やっぱフローリングは冷たくていいわ」
 すりすりと手のひらで床を撫でながら、坂口は満足そうにそう言った。
「お前んちは畳だろ? 畳のほうが涼しいんじゃねーの」
 ソファー代わりにもなる敷きっぱなしの布団と古びた押し入れが印象的な坂口の部屋を思い浮かべながら尋ねる。初めて訪ねたときに、押し入れの襖に浮かび上がるシミが猫の顔に見える、と自慢げに話していた坂口の声が脳裏に蘇った。もう二年も前の話だ。
「まあ涼しいっちゃ涼しいけど、寝転がったら体のあちこちに跡ができるしで大変なんだよ」
「あー、それもそうだな」
「それに汗かいてるときは肌にくっついて鬱陶しいし」
「それはフローリングも同じだろ」
「まあそうだけどさ」
 どっ、とひときわ大きなバカ笑いの声が響いた。さっきつけたばかりのテレビが発した音だ。半分バラエティーのような朝の情報番組では、司会の中年男がゲストの若手芸人をいじって遊んでいる。なんとなく冷めた気持ちでそれを眺めていると、突然そのやかましい笑い声がプツリと途切れた。
 驚いて坂口の方へと顔を向ける。するといつの間にやらリモコンを引き寄せていた彼は小さく首を傾げた。
「あれ、テレビ見てた?」
「……いや」
「だったら静かなほうがいいじゃん、せっかくだし」
 そう言って坂口は笑った。けれど、しんと静まりかえった空気は、なんだか心許なさを感じてしまう。じーわじーわとどこか焦燥感を掻き立てるような蝉の声と、いつもより荒いふたりぶんの呼吸の音。狭くて薄暗い部屋の中を満たすものはたったそれだけだ。
 額から流れた汗の滴が、こめかみを通って顎の先からぽつりと落ちた。グレーの短パンに丸く滲む。
「お前も寝れば?」
 床の上から坂口が見上げてくる。ぽんぽんと自分の隣を叩く姿に小さく溜め息をこぼしながら「ここは俺の家だぞ」と今更な文句をぶつける。
 素直に横になるのも癪だとは思ったものの、頬杖をつきながらじっと見つめてくる視線に毒気を抜かれてしまう。土屋は大人しく隣に寝転んだ。
「おー、珍しく素直じゃん」
「うるせぇ」
 にやにや笑う顔を軽く睨みつける。
 寝間着のままの、半袖のTシャツに短パンというラフな格好だから、素肌の手足に感じる床の冷たさが気持ちいい。
「こんなの、マメに掃除してある部屋だからこそできることだよな」
 人差し指で床の上をつつ、となぞった坂口が感心したように言う。まるで嫁をいびる姑のような仕草に、思わず笑ってしまう。
「感謝しろよ」
「ありがてぇありがてぇ、ついでに俺の部屋も掃除してくれるともっとありがてぇ」
「自分でしろ」
「ばか、俺が掃除しようとしたって綺麗になるはずがないだろ? 途中で面倒くさくなって投げ出すのが目に見えてる」
 確かにそうだろう、と思った。彼は好きなことにはとことん集中できるが、興味のないものには一切頓着しない。彼の部屋の、乱雑に積まれた本の山を思い出す。本棚にすら入れられていないのになぜか傷んだり汚れたりしている様子のないそれは、彼の性質をよく表しているようだった。
「威張って言うことかよ」
「お前みたいな気真面目さと神経質さが無けりゃ掃除なんてやってられないね」
「じゃあそのモップみてーな頭を有効活用しながら掃除しろ」
 からかうように、坂口のくるくると跳ね回る癖っ毛を少しだけ引っ張った。細い髪の毛がミョンッと伸びる。
「誰の頭がモップだって? ちょっとストレートヘアーだからって調子に乗るなよ」
 隣からにゅっと二本の腕が伸びてきた。そのまま、ぐしゃぐしゃと頭をかき回される。手のひらの熱さが直に伝わってくる。
「わっ、何しやがる!」
「生意気なこと言う子にはお仕置きですー」
 髪についていた小さな汗の滴がフローリングの上に散らばった。近くに寄ったぶんだけ、ふたりの汗の匂いが入り混じる。
「やめろやこのくるくるパーマ!」
「いーじゃん、お前もいつもやってるじゃん」
 さらりと告げられた言葉に、土屋はうっと言葉を詰まらせた。たしかに、ふわふわの感触が新鮮で、事あるごとに坂口の髪を触っている自覚はある。
「……こんなぐしゃぐしゃにはしてねーし」
 なんだか負けを認めるようでひどく癪である。消え入りそうな小さな声で反駁すると、坂口はハハッと笑った。
「お前、なんだかんだ言って俺の髪好きだもんな」
「黙れ、お前こそ調子乗ってんじゃねーよ」
 土屋はガツンと強めに坂口の脛を蹴った。ぐおお、と唸り声を上げてごろんごろんと転げ回る姿を眺め、ふんと鼻を鳴らす。
 坂口との遠慮のいらないやりとりはひどく楽しいし、心地よい。
 坂口と知り合ったのは大学の入学式であったから、それから現在まで約二年半。そう考えると、いつの間にやら結構長い付き合いになっている。
 性格はまるで正反対なのに、なぜか妙に息が合ってしまうのだ。反りも馬も合わないはずなのに、である。
おかげでこんなにも遠慮のないやりとりができるまでになってしまった。土屋にはもともと人見知りするところがあったのだが、なぜか坂口に対しては初めからその性質が発揮されることはなかった。
 知らぬ間にするりと人の間合いに入るのが得意な男だから、警戒心を抱かせないのかもしれない。いや、むしろある程度の距離を保つことができる男だからだろうか。
 どちらにせよ、今の距離感はとても居心地がいいのだ。
「なあ、蝉の鳴き声のなかで一番好きなのってどれ?」
「あ?」
 考え事をしていたせいで土屋は一瞬なにを言われたのか分からなかった。蝉の鳴き声のなかでどれが一番好きか。一拍おいてから脳に伝達してきた言葉について、暑さで溶けそうな思考のなかでなんとか考えてみる。坂口はときどき、こういった突拍子もない質問をすることがあったが、その掴み所のなさは嫌いではなかった。
「あー……、ミンミン蝉かな。いかにも夏って感じで」
 現に今もミンミンとうるさい声が聞こえている。さっきよりも声が近いから、窓の桟にでもへばりついて鳴いているのだろう。
「あー、たしかに。あの声聞くと夏が来たって思うよな」
「お前はどれが好きなんだ?」
「俺はツクツクボウシ。普通にツクツクボーシって鳴いてたのが途中でウィヨースウィヨースにテンポを変えて、最後にジーーッでフィニッシュ。パフェにも似た構成美だろ」
「はあ、全然分からん」
 土屋はぴしゃりと切り捨てた。
 甘党である坂口の大好物はパフェであり、三食すべてパフェでも構わないと豪語するほどである。甘いものがそれほど得意ではない土屋にとって、その感覚は逆立ちしても理解しがたいものであった。
 それにしても、彼の言う好きな理由とやらは分かりにくい。蝉の声とパフェにどんな共通点があるというのだ。暑さで頭がやられたのだろうか、と半分本気で心配になる。しかしそんな心配をよそに、坂口はのんきに「パフェの話をしたらパフェが食べたくなるな」などとのたまっている。本当に読めない男である。土屋は小さく溜め息をついた。
「あっ、そうだ今日はアイスある日?」
 声を弾ませた坂口から期待のこもった眼差しを向けられて、思わず苦笑がこぼれる。パフェからアイスを連想したのだろう。坂口はいつだって変なところで分かりやすく、変なところで分かりにくい。
 基本的に甘いものを好まない土屋ではあるが、夏になるとときどき思い出したようにアイスを買い溜めする習性があった。何度もその恩恵に預かってきた坂口だから、土屋のその習性については熟知しているのだ。
「残念ながら今日は無い日だ」
「えーなんでだよ。ちゃんと買っとけよ俺が来るんだから」
「連絡もしないで急に来たやつが何言ってんだよ。つーか来るときにお前が買ってきたらよかったじゃねーか」
「そこまで頭回んなかったんだよ、暑かったし」
「さすが頭パーだな」
「頭パーとか言うんじゃねーよ悲しくなるだろ」
「どうせ昼飯買いに外に出なきゃなんねーんだから、そんときに買えばいいだろ」
「りょーかい。昼飯何にする?」
「涼しいところで食えりゃ何でもいい」
「……それもそうだな」
 げんなりとした表情で頷いた坂口は、突然はっとしたように顔を上げる。
「そう言えば、もう大家さんに電話できる時間じゃね?」
「え?」
「あれ、もう電話してた?」
 ごそごそと短パンのポケットからスマホを取り出していた坂口が首を傾げる。
 そうだ、エアコンの故障について大家に連絡しなければならなかった。すっかり忘れていた土屋は、「いや」と言葉を濁す。
 テレビボードの上に置いてある時計を見れば、針はちょうど朝と昼の真ん中あたりの時刻を示している。たしかにもう電話をしてもいい頃合いだろう。土屋もベッドの上に置きっ放しにしていたスマホに手を伸ばした。
「じゃあ俺はベランダでかけようかな」
 そう言って肘をつきのろのろと体を起こす坂口に、土屋は軽く頭を振ってみせた。
「いや、煙草吸いてぇから俺が外行くわ」
「そう?」
 土屋は重い腰を上げて立ち上がった。キッチンに置いてある煙草を取ってから、閉め切っていたカーテンを開ける。まばゆいばかりの日射しが容赦なく目を焼く。
「すげ、暑そう」
 その暑さの中をわざわざここまでやって来たくせに、坂口は眩しそうに目を細めている。
「どうせ外も中も変わんねーよ」
「それもそうだな」
 黙ったままのエアコンを睨みながらそう言うと、坂口はけらけらと笑った。
 ガラリと窓を開けて外に出る。暑い空気に晒され続けていたサンダルはまるで焼け石のようになっている。きちんと足裏をくっつけて履くことなんてできそうもない。仕方なく、土屋はつま先立ちのまま電話をかけることにした。
 数コール後に出た大家のおじさんは、エアコンが故障したことを告げるとしきりに恐縮しつつ謝り倒していた。彼が悪いわけでもないし、そんなに謝られても困ってしまう。ちらりと部屋の中を見ると、坂口も同じように困ったような顔をしながらぺこぺこと小さく頭を下げていた。思わず口元が緩んでしまった。
 修理まで数日はかかるだろうから、それまでは友達の家に避難するなりして暑さを凌いでくれ、と。そんなことを大家は言っていたが、その友達とやらも同じ不幸に見舞われている。さてどうしたものだろう。何かの奇跡で、坂口の家はすぐにエアコンが修理されたりしないだろうか。そうなれば、今度は逆に坂口の家に転がり込んでやろう。そんなことを考えながら、土屋は電話を切ってスマホをポケットへと仕舞いこんだ。
 さっきは外も中も変わらないだろうと言ったけれど、日射しがあるぶんやはり外の方が暑い。太陽も近ければ蝉の声も近い。より一層、夏が鮮明になったようだ。こんなところでは到底煙草なんか吸う気分になれやしない。
 土屋は忌々しそうな視線を真っ青な空へと投げかける。遠くの方に、もくもくと大きな入道雲が浮かんでいた。三階のベランダからではあまり見通せない、地面と空が接するあたりのその場所は、坂口の家がある辺りだ。
 よくよく考えると、土屋の家から彼の家までの距離は結構遠い。電車とバスを乗り継いで、約一時間かけてようやく辿り着ける距離。こんな暑い中、よくここまでやって来られたものだ。感心半分、呆れ半分で土屋は坂口が通ったであろう道を目で辿った。
 部屋に戻ろうとして踵を返したとき、ガラリと窓を開ける音がした。
「うおー、すげえなこれ。溶けそう」
 窓から上半身を突き出した坂口が、うげぇと顔をしかめている。
「たった五分ここにいただけで汗だくだよ。お前、よく溶けずにここまで来たな」
「いや、来る途中で若干溶けた」
「じゃあどこかにお前の雫が落ちてんのか。気化したらやべーぞ、吸い込んだ人に天パがうつる」
「人をウイルス扱いしてんじゃねェよ」
 ふてくされた顔の坂口が天パ頭をかき回す。
「そんで、エアコンはどうだって?」
 尋ねる坂口に、土屋は首を横に振ってみせた。
「修理までは数日かかるって言われた」
「やっぱりそっちも同じか」
 がっくりと肩を落とした坂口に苦笑をもらす。相手の家に一縷の望みかけていたのは彼も同じだったようだ。
「彼女の家にでも行っててくれって言われちゃってさあ。まったく、デリカシーのないオッちゃんだよな」
 坂口がさもうんざりといったふうにガシガシと頭を掻く。土屋はそっと足元に視線を落とした。サンダルの擦れたような汚れがやけに際立って見えた。
「とりあえず中に入れろ、あちぃ」
「へいへい」
「あと茶ぁついできてくれ」
「お前さっき自分で言ったこと覚えてる?」
 坂口が呆れたように目を細めた。
「いいだろ、部屋の中にいる分お前の方が近いし」
「どんな理屈だよ。横暴にもほどがあんだろ、ジャイアンかお前は」
 ぶつぶつと言いながらも、坂口はマグカップを片手に台所へと歩いていった。サンダルを脱ぎつつその背中を見送る。
 さっきまで寝転がっていた場所に腰を下ろすも、日射しが当たっていたせいで生ぬるくなってしまっていた。カーテンを開けっ放しにしていたことが悔やまれる。土屋は立ち上がり、もう一度ぴっちりとカーテンを閉めた。部屋の中は途端に薄暗さを取り戻す。
 キッチンから麦茶を注ぐ音が微かに聞こえてくる。ガラガラと重い音も聞こえるので、冷凍庫も開けたのだろう。氷を入れてくれるとは、なかなか気が利いている。
 ぱたぱたと戻ってきた坂口の手にはマグカップと、それから小さな保冷剤がひとつ。
「ほい」
 胡座をかいた膝の上にポトンと落とされた保冷剤を手に取る。きん、とした冷たさが、火照る体にはひどく気持ちいい。
「うちに保冷剤なんてあったんだな」
「あるよ。俺の誕生日ケーキ買ってきたときについてたやつ、入れてたから」
「そういえばそんなことあったな」
 自分の誕生日を祝わってもらうためにわざわざケーキを持参してやって来た坂口の姿を思い出す。彼の誕生日は九月だから、もう一年近くも前の話だ。
 一年近く前からあったものに気付かずにいたなんて。土屋は少し信じられない気持ちだった。よほど冷凍庫の奥の方に入れてあったのだろうか。やはり、見えていないものは元から無いものとして認識されてしまうようだ。
「つーか急にこんなもん持ってきて、どうしたんだよ」
 たくさんの滴をまとった保冷剤を手の中で弄びながら、土屋は坂口のほうを見た。
「お前、顔赤くなってるから」
「えっ」
 坂口の言葉に、土屋は思わず頬に手をやった。たしかにさっきから顔のあたりに熱が集まっているような感じはしていたが、この薄暗い部屋でも分かるほどに色が変わっていたとは思わなかった。
「首のあたりに保冷剤当てて、そんで早く茶ぁ飲め」
 だらだらと汗をかいているマグカップが、ずいっと差し出される。
「……おう。悪いな」
 あまりに横暴であった自分の言葉に素直に従ったのは、そのためだったのか。土屋はなんとなく恥ずかしいような、尻の座りが悪いような、むずむずとした気持ちになった。
 なんとなく坂口の顔が見られないまま、マグカップを受け取る。口をつけると、氷がカランと涼やかな音をたてた。喉を通りすぎた冷たさがすっと体中に染みわたっていく。
「いっぱい飲んどけよ。お前、暑いの得意じゃないんだから」
 じっと土屋を見ていた坂口が言う。本当にこの男は、自分のことをよく見ている。土屋はまざまざとそれを感じた。
「そんで、エアコン直るまでどうする?」
 ふう、と土屋が一息ついたタイミングを見計らって坂口が問う。
「んー、……扇風機でも買おうかな」
「おっ、いいねえ。やっぱり何だかんだ言っても夏は扇風機だよな」
 うんうんと頷く坂口に、土屋は小さく頬を緩めた。細かいことなど気にしなさそうな豪快な男だが、存外に情緒や風情といったものを重んじるところがあるのだ。実際、彼の部屋のベランダには、夏になると洗濯物と一緒に風鈴がぶら下げられたりする。おそらく今も彼の部屋のベランダでは、風鈴がじっと風を待っているのだろう。そこに描かれた、涼しげに泳ぐ赤と黒の金魚がひらりと脳裏をよぎった。
「割り勘して、中古の安いやつでも買おうぜ」
 あからさまにわくわくした様子で坂口が提案してくる。割り勘、ということは。土屋は軽く坂口を睨みつけた。
「もしかしてお前、ここに泊まり込むつもりじゃねーだろうな」
「あれ、バレた?」
 呆れた視線を向けると、坂口は少し首を竦めてみせた。
「まったくテメーは」
 ぶつぶつ言いながらも、どこかこの状況を楽しんでいる自分がいることに、土屋は気づいていた。日常の中の非日常は、いつだって心を浮き立たせるものだ。その非日常が、気心の知れた友人と一緒なら尚更だ。
「いいじゃん。たった数日のために金出すんだからちょっとは浮かせられた方が嬉しいだろ」
「それはそうだけど」
「あんまり考えすぎんなよ。こういうときはノリが重要だぜ」
「お前はもっと深く考えろよ」
 まとわりつく暑さに耐えきれず、汗の染みたTシャツの裾をパタパタと扇ぐ。
「でもさ、もしお前が暑さで倒れたりしたら、ひとりだと危ないだろ」
 その言葉に、土屋は坂口を振り返った。
 それまでの軽口とは違う、真面目な口調。急にどうしたんだ。そう聞き返す前に、机の上に置いたままにしていた保冷剤をひょい、と投げて寄越された。受け取りながら、坂口の顔を見る。
 その目が、思いのほか真剣な光を宿しているような気がして。
「お前、ほんと俺のこと──」
 するりと軽口を叩きかけて。
 その瞬間、ピリ、と空気が張り詰めた。
 はっ、と口を噤む。
 思わずこぼしてしまった言葉。それは、言うべきじゃないとわかっていた言葉だった。
 どうしよう。
 取り繕うこともできずに、土屋はうろうろと視線を彷徨わせる。こぼれた言葉はどうしたって取り戻せない。なにか言って誤魔化そうとしても、上手く誤魔化せるような言葉は出てこなくて、金魚みたいに口をぱくぱくとするだけだ。
 そんな土屋の様子に、坂口がふっと小さく笑うのが分かった。
「……そーだよ。ずっと、お前のことが好き」
 あのときと同じ言葉を、坂口はあっけらかんとしたその様子で言ってのける。
 土屋はそっと息を吐き出した。
 息が苦しい。張り詰めた空気が、ぎゅうっと喉をしめるようだ。土屋はわずかに目を伏せる。手の中のマグカップが揺れて、微かに波を立てた。
 麦茶の中に浮かんだ氷が溶けて、カラン、と場違いなほどに軽い音が響いた。保冷剤から滴った水滴がぽつりと脚を濡らす。肌を刺すほどに冷たく、痛かった。

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