DIYと異世界建築生活〜ギャル娘たちとパパの腰袋チート

みーくん

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第一章

第四話

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木漏れ日が、ちらちらと顔に落ちる。
まだ眠たい視界に、葉の隙間からの光が斑点模様を描いていた。

大きな欠伸ひとつ。
腰を伸ばせば、ボキボキと派手な音が鳴る。

おっさんである。

顔を洗い、歯を磨き、腰袋から取り出すは充電式《マキタ》コーヒーメーカー18V
今日は濃いめ。淹れたてを片手に、いつもの朝の一服。
煙草とコーヒー。この組み合わせに勝てるものなど、そうそうない。

歯の裏が汚くなるのが玉に瑕だが、それも仕方がない。

ふと地上を覗き込む。
あの三つ首の獣──ケルベロスの死骸は、まだそのままだ。
風に吹かれて毛並みがなびいている。

腹が減った。降りるとするか。

まずは解体だ。

おっさんはかつて、外国の山奥にてダム建設に従事していた。
工期の遅れた現場では、サバイバル技術は命綱。
水場を見つけ、罠を仕掛け、獲物を捌き、煮炊きをするのは、
一般的な大工の嗜みである。

ケルベロスの腹を割り、内臓を掘った穴に捨てる。
顔面は食わない。埋める。
毛皮は厚く、頑丈だ。丁寧に剥いで、干せば衣類や敷物になるかもしれない。

だが──

「ん?」

モモ肉を切り出していた手元から、コロリと何かが転がった。

ビー玉ほどの、まんまるい石。
ケルベロスの体内から出てきたとは思えないほど、艶があり、
色はまるで焔のような赤橙。光の加減で揺らめくように見える。

水でさっと洗ってみる。
不思議と濡れた部分から立ちのぼる香りが、どこかスパイシーだった。

舐めてみた。

「辛っ!」

舌の奥を突き刺すような刺激。
胡椒を濃縮したような、荒々しい味わい。

宝石か?調味料か?
おっさんは眉をひそめ、だがすぐにニヤリと笑った。

モモ肉とムネ肉を切り出す。
携帯鉄板に油を引き、焚き火台に火を入れる。
ジュウ、と音を立てて焼かれていく異世界ケルベロスの肉。

さて──どんな味か、楽しみだ。

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

脂が滴り落ち、焚き火の炭を怒らせては、赤い舌のような炎が跳ね返る。

焼けるのは、三つ首ケルベロスのモモ肉とムネ肉。
犬の肉など、食った記憶はない。
だがこいつはちがう。赤身には細やかなサシが入っており、まるで霜降りの牛肉だ。

焼けた表面に少し焦げがついたところで、我慢できずに一口。

……とろける。

外はパリっと、内はジューシィ。
例えるならば──そう、上等なカルビのような食感。
うまい。あまりにもうまい。

ふと、先ほどのビー玉──焔色の石を思い出す。
あれを削って、肉にかけてみたいが、調理道具など持ち合わせていない。

だが、おっさんの腰袋には“現場の知恵”が詰まっている。

取り出したのは、内装工事で使う石膏ボード用のやすり。
本来は壁を仕上げる道具だが、いまは**卸金(おろしがね)**代わりだ。

肉の上に直接、ガリガリと削る。
細かな粒がこぼれ、肉の表面でじわりと熱を受ける。

見た目は粗挽きの黒胡椒。
だが、ひとくち食えば──

口の中に広がるのは、**極上のスパイスブレンド赤ほりにし**の風味。
甘み、塩気、香ばしさ、刺激。すべてのバランスが絶妙で、肉の旨みをさらに引き出してくる。

「んめーな、これ……」

思わず漏れる、本音の一言。

ひとしきり食べて満足したあと、余った肉は丁寧に切り分けて保管する。
背後にそびえるシステムキッチンの引き出しを開け──

ビルトイン冷凍庫へ、ストック完了。

これにて朝飯、完了である。

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

食欲が満足すれば、次は好奇心が不平を言う。

もっと旨い物、もっと居心地のいい場所を探せ、と。

おっさんはそれに従い、森を歩き始める。

枝上に展開した風呂、トイレ、キッチン、ベッドは、
腰袋にスッと収まった。

なんでもあり…ではないようだが、便利なものである。

ガサガサと、胸丈ほどもある草をかき分け、
獣や蛇などに遅れを取らぬ様、先の尖ったスコップを構え進む。

大工勇者の初期装備、鉄のつるぎ剣スコップである。

強めに払えば、草も薙ぎ倒せる。

方位磁針は、最初から狂っている。
どちらが北で、どちらが南かも、もうわからない。
「さっきの木」とか、「あっちの大きな幹」とか──
それらも、当てにならない。

同じ場所をぐるぐる回っているのかもしれない。
けれど、おっさんに焦りはなかった。

樹海やジャングルは、慣れた現場だ。

かつてアマゾンの奥地、民族の集落へと赴き、
崩れた橋を修理し、護岸を石で補強したこともある。

またあるときは、日本の富士の樹海にて、
間伐材や伐採木を調達する仕事に就いていた。

どちらも、大工の仕事である。

道がないなら作る。
道具がなければ、工夫する。
どこだって現場、やることは変わらない。

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

道路工事の現場でよく使っていたラッカースプレー。
破損箇所や境界線に印をつけるのに重宝する。
おっさんは腰袋からその一本を取り出し、
巨木の根元に向かって、シューッとひと吹き。

……ブゥン。

幹がモコモコと盛り上がり、
まるで肉のようなうねりを見せる。

そして現れたのは──
悪魔じみた顔を思わせる、巨大な“うろ”。

節穴に見えたそれは、じつは閉じた瞼だったのか。
木の表皮がめくれ、ギョロリとした眼のようなものが、おっさんを睨みつけている。

……オコらしい。

「悪ぃ悪ぃ、現場癖でついな」
おっさんは一言、素直に謝った。

代わりに、ポケットからピンク色のマーキングテープを取り出し、
幹にぐるりと巻きつける。

しばらく間があったが、
木の顔らしき“うろ”は、そのまま静かに引っ込んだ。

……どうやら、これならやぶさかではないらしい。

だが、最後にひと悶着。
木の“口”のような節穴が「ガバァッ!」と大きく開き、
あわやおっさんが食われるかというところでピタリと止まる。

「脅かすなって……心臓に悪いわ」

木は何も返さない。
ただ、どこか満足げに葉を揺らしたような気がした。

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

とりあえず、マーキングしたピンクリボンの巨木を見ない様に歩けば…
何処かしらへは移動してるということだ。

まぁあの紐、本来は伐採する樹木に巻く目印なんだがな…

しばらく歩いて疲れたら、木に登る。
快適で清潔な夜営を行い。

しばし休んだらまた探検する。

犬肉の残りを少し心配したが、
大蛇も獲れた。

電柱くらい太くて長いヤツだ。

おっさんの野営地巨木の枝にニョロニョロと登ってきたので…

ワンパターンではあるが、梯子で挟んだ。

切断はしなかったが、骨が折れたのか、そもうち動かなくなった。

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

頭に絵を浮かべながら腰袋に手を入れると…

重いが、やはり出た。電動ウインチだ。

現場で重量物を上階などに荷揚げする際に使うヤツだ。
それを二連梯子の頂点のステップに取り付け、鎖を地上まで降ろす。

電源はないが動くらしい。
そもそも電源コードすらない。

地上に降り、蛇の尻尾付近にワイヤーでフックを固定し、

首をチェーンソーで切り落とし…

巻き上げる…血が滴りぷらぷらと揺れる。

今度はどんな旨い肉なのだろう?
と、おっさんは満足そうな顔で枝上に登り、
今日を終えるのであった。
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