DIYと異世界建築生活〜ギャル娘たちとパパの腰袋チート

みーくん

文字の大きさ
13 / 279
第一章

第十三話

しおりを挟む
薄暗くなるまで夢中で遊んでいたトゥエラだが、
おっさんが夕飯の準備を始め、
肉を焼く匂いが立ちこめるや否や、
それまで空を飛んでいた彼女は、
見事な着地で帰還してきた。

特に語るまでもない焼肉定食ではあったが、
トゥエラはモリモリと嬉しそうに頬張り、
その食いっぷりに、
おっさんの焼酎も、つい進んでしまう。

そんな中、トゥエラが突然、
「おーきーき、あったよー!」
と、手をバタバタさせながら報告してきた。

どうやらブランコが枝高を超え、
ほぼ垂直まで上がった瞬間、
何かでかいものが遠くに見えたらしい。

「どれくらいでっけーんだ?」

と聞いても、
手振りと謎の擬音で、さっぱり分からん。

だが、方角だけははっきり覚えているらしいので、
おっさんは笑って、

「んじゃ、明日見にいっぺか」

とだけ答えた。

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

翌日も、これでもかってくらいの快晴だった。
雨の日のじめじめした気配はどこへやら、
まさにピクニック日和ってやつだ。

おっさんは朝から食パンを焼き、
せっせとサンドイッチを仕込む。
だが、相変わらず芋やら野菜やらが
ロクに見つかっていないため、
必然的に中身は、
昨日の蜘蛛ジャムオンリーという偏ったラインナップになった。

まぁ、ジャムの種類だけはやたら豪華なので──
トゥエラ的には、これでも大満足らしい。

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

いちおう甘くないものも作った。
サーモンのバター焼きサンドだ。
脂がじゅわっと滲み、
パンの端まで香ばしい香りが染みる。
唯一、おっさんが安心して食えるメニューである。

トゥエラが前を行き、おっさんは後ろをついていく。
幼女は誇らしげにマチェットを振り回し、
藪をかき分け、ぐいぐいと道を拓く。

森は、どうやらおっさんにだけ優しいらしい。

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

張り切る幼女を微笑ましく想いながら、
ゆっくり後を追うおっさんは、
それにしても…
と、思う。
この娘は一体何処から来たのか?
何処で産まれたのか?
何故独りなのか?

異世界の非常識さにも大分順応してきた訳で。
例えば、精霊だとか妖精だとか、
はたまた、実はドラゴンでした。
とか言われても、
まぁそうなのか。と理解できるかも知れない。

だが彼女は、ただ目の前の、
嬉しい、楽しい、美味しい、眠い、といった
瞬間的な感情しかない様に見える。
まるで…動物、猫と生活しているようだ。

そんな、
答えも出ないことを妄想しながら歩いていると、

もっと猫っぽいヤツが現れた。

豹のような柄の怪物だが…

あれは、ジャガーであろう。
模様が少し違う。
南米の現場でよく見かけた。

ワニも蛇も危険だったが、
こいつは特に獰猛だった。

絶滅危惧種なので、攻撃する事もできずに
チュールを投げつけ、逃げながら仕事をしたもんだ。

だがまぁ…

こんな、
脚が十本以上あるような化け物ではなかったが…

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

体高もデカい。
おっさんの道具満載の愛車ハイエース
くらいに見える。

トゥエラがいきなり斬りかかったが、
剣ごと弾き飛ばされた様だ。

くるくるとこっちへ飛んできたので、
キャッチしてやる。

怪我はないか?と心配すると…

口元にベッタリと……


ジャムがついている。

「パン食いながら戦ったんけ」

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

モグモグと口を開けない娘を後ろに下がらせ、
おっさんは猛獣と対峙する。

蓋を開けた猫缶舌平目を投げつけると…
空中で缶ごと食いちぎりやがった。

だが、こちらに飛び込まれたら終わりだ。

おっさんにはとても仕留める事はできない。

なので……缶詰を投げつける。

カツオ…!
ツナマグロ…!
カニしらす…!
チキンビーフ…!

猛獣に飛び込まれぬよう、
距離をとり、円を描く様に…


現場に集まる野良猫どもへの賄賂として、
おっさんが懐に忍ばせていたとっておきを、

惜しげもなく叩きつける。

「止めだっぺ!」

放たれた、
混濁の槍チュールタワーが、顔面に突き刺さる。


猛獣は沈黙した。


洗面器に山盛りのカリカリを与えると、
ようやく敵意を失ったらしい。
丸呑みされそうなジャガーもどきは、
ゴロンとヘソを見せ、
巨大な舌でゴシゴシと毛繕いを始めた。

緊張の糸がぷっつり切れたおっさんは、
思わず腰を抜かしそうになりながら、
深く深く溜息を吐いた。

「……猫なんか、殺せるわけあんめーよ」

自分でも呆れるほどの甘さだった。
普段なら容赦なく怪物を仕留めるくせに、
相手が猫だとダメなのだ。
そういう生き物なのだ、猫は。

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

一頻りカリカリを平らげたジャガーは、
ご満悦な顔で大欠伸をかまし、
五足の足をモゾモゾと動かしながら、
器用にも木立を優雅に歩いていく。

でっけえ体でゴリゴリ、バリバリと幹に爪を立て、
地響きを立てながら、
マーキング……というより、まぁ、爪研ぎだな。

「……猫だなぁ、やっぱ」

おっさんは苦笑し、少しだけ脱力して眺めていた。

が──。

突如、バスジャガーは頭を振り、
巨大な口からベロンと何かを吐き出した。

糸だ。
いや、よく見ると、
蜘蛛のような粘糸を吐き出している。

「……はぁぁぁぁぁ!?」

目の前で、
ジャガーが糸をぐるぐると吐きながら、
器用に繭を編みはじめた。

「ジャガーじゃねぇんかい!」

おっさん、心の底から突っ込むしかなかった。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
 40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。  しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。  おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。  漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。  この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。 この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。 ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。 少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。 更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。 そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。 少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。 どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。 少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。 冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。 すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く… 果たして、その可能性とは⁉ HOTランキングは、最高は2位でした。 皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°. でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )

異世界は流されるままに

椎井瑛弥
ファンタジー
 貴族の三男として生まれたレイは、成人を迎えた当日に意識を失い、目が覚めてみると剣と魔法のファンタジーの世界に生まれ変わっていたことに気づきます。ベタです。  日本で堅実な人生を送っていた彼は、無理をせずに一歩ずつ着実に歩みを進むつもりでしたが、なぜか思ってもみなかった方向に進むことばかり。ベタです。  しっかりと自分を持っているにも関わらず、なぜか思うようにならないレイの冒険譚、ここに開幕。  これを書いている人は縦書き派ですので、縦書きで読むことを推奨します。

転生したら王族だった

みみっく
ファンタジー
異世界に転生した若い男の子レイニーは、王族として生まれ変わり、強力なスキルや魔法を持つ。彼の最大の願望は、人間界で種族を問わずに平和に暮らすこと。前世では得られなかった魔法やスキル、さらに不思議な力が宿るアイテムに強い興味を抱き大喜びの日々を送っていた。 レイニーは異種族の友人たちと出会い、共に育つことで異種族との絆を深めていく。しかし……

処理中です...