DIYと異世界建築生活〜ギャル娘たちとパパの腰袋チート

みーくん

文字の大きさ
20 / 279
第一章

第二十話

しおりを挟む
翌朝、おっさんは思い付いた。

「二連梯子で行けるんであんめーかじゃないだろうか?」

腰袋からズルズルと引っ張りだした梯子の、
頂点の滑車にワイヤーを通し、
端部を地面に固定してから、
伸縮用ロープを引き…

山頂目掛けて一気に伸ばす。

「ガラララララララララララララララララ!」

と、ロケットの様な勢いで伸びてゆく梯子。

一体、何千メートル伸びるのか…

風もそこそこ吹いているが、
不思議と倒れる気配もない。
まるで意思があるかの様に、山頂でピタリと止まった。

勝手に伸縮が止まった。

なぜ梯子にワイヤーを通したのかというと…

根元にウインチを取り付け、
荷上げ台車もセットし、そこに取り付ける為だ。

これは、おっさんが以前、
新築住宅の屋根瓦やねがわら施工葺いたした時に用意した道具で、
ウインチを巻き取る事により、
荷台を梯子の頂上まで昇降させてくれる。

大工にはなくてはならない道具だ。

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

本来は、伸びて10メートル程度。
火山を登頂する為の道具ではないのだが…

伸びてしまったものは仕方がない。

荷台に娘を座らせ、
みーちゃんを見れば…

「フンッ」と不機嫌そうに、
舐めるなとでも言いたいのか…

打ち上げ花火のような速度で、
岩肌を駆けて行ってしまった。

まぁいいかとおっさんも座り、申し訳程度にゴム紐で
お互いの体を束縛し…リモコンの「↑」を押せば…


ギュイィィィィィィィィィィィィ!!!

圧迫される内臓。霞む目…止まりそうな心臓。

それはまるで逆バンジー。
景色を置き去りに射出される荷台。

隣で両手を上げ、「きゃーー」と喜ぶ娘。


おっさんは…意識を手放した。

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

──生臭く温かい布で顔を拭かれる──

夢かと思えば現実だった。

猛獣がおっさんの顔を舐め回して起こしていた。

「くせぇ…」

どの位失神したのか?
おそらく数秒だと思うが、

視界に映る景色は全く違っていた。

いや…その前に呼吸がし辛い…
慌てて防毒マスクを装着し、
携帯酸素ボンベを、
マスクのアタッチメントに取り付ける。

深く深呼吸をすれば、意識がスッキリと戻って来る。

トゥエラは…一応心配するが、
やはりなんの異常もなく…
いや、異常しかなく…はしゃいでいる。

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

どうやら…山頂…
どでかい火山の噴火口まで到着したらしい。

おっさんは、荷揚げリフトでゆっくりと上昇しつつ
人史の有無を探そうと思っていたのに、
一瞬でこの標高…
雲の中にいるのか、モヤがかかって視界が悪い。

とりあえず安全ベルトゴム紐を解き、
山頂と思われる大地に立ってみる。

下の方から、みーちゃんが駆け上がって来た。
どうやらあの猛獣のスピードすらも追い越したようだ。

抜かれたことが悔しいのか、不機嫌そうに
転がり、尾で地面を叩いていた。

トゥエラを見れば…

なにやら目を大きくし、すり鉢状の噴火口、
カルデラというのか?を見つめている。

おっさんが視線を追えば、
なんと…無数の建築物……の残骸が見て取れる。

だが、この登頂してきた山肌よりも、
噴火口の斜面は勾配がキツく、まるで崖である。

その岩肌を削ったりくり抜いたりして、
道を、家を建てて住んでいたのだろうか?


降りてみないと判らないが──
少なくとも、今のところ生きた人間の気配はない。
見えるのは、滅びた街の亡骸だけ。

おっさんは、慎重にアンカーを打ち込みながら、
娘を背におぶって火口の底を目指して降りていく。
途中、岩肌に穿たれた何かの通路跡を見つけた。
削り出された平坦な道だ。
かつて、ここが街への正規ルートだったのだろう。

そこへ足を踏み入れた途端、
背中のトゥエラが、突然ブツブツと呟き始めた。

「嘗て栄えた…ドワーフの…帝国…」

その声は妙に冷たく、感情の抜けた、
まるで古い石碑に刻まれた歌のようだった。

「竜の力を…我が物に…繁栄を極め…」

歩くたび、倒壊した石造りの建物の影が現れる。
その瓦礫の隙間から、腐ったような、
嗅いだことのない臭いが漂ってきた。
どこか甘ったるく、鼻に刺さる、腐敗の臭い。

「そして逆鱗に触れ…腐敗の呪いで…滅びた…」

歌い終わると、トゥエラは無言になった。

おっさんは立ち止まる。
足元に、かすれた石畳の模様が目に入る。
それは──
ドワーフ帝国の紋章らしき、
ハンマーと火山を象ったエンブレムだった。

「……鼻歌かと思ったら、ガチ民族ソングじゃねぇか……」

思わず呟いた。

だが、背中のトゥエラは、どこか上の空のまま。
おっさんが知らない何かを、この娘は知っている。
それだけは間違いないようだった。

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

歌い終えたトゥエラは、
元に戻ったのか、「だれもいないねー」と、

幼女声いつも通り

街の中央に大きな石造りの階段が現れ、
下へ…噴火口のほうまで伸びている。

そして奇妙な物も。

おっさん二人くらい入れそうな、太く黒い管…
地中埋設管エフレックスが地を張っていた。

街の頂上には城のような廃墟も見え、
奇妙な黒い筒は、
そっちの方から火山の噴火口へと伸びているようだ。

火口のまで降り、覗き込むが…

下は当然真っ暗な穴。
懐中電灯くらいでは何も発見できない。

「なんかあんのか?この下に」


長年建築に携わって来たおっさんでも、
全く見たことのない建物の様式、

地中や海中ケーブルの埋設などは、
大工の得意分野なのだが、
触っても材質もわからない謎の管。

興味が出てしまった。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
 40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。  しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。  おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。  漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。  この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。 この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。 ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。 少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。 更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。 そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。 少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。 どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。 少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。 冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。 すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く… 果たして、その可能性とは⁉ HOTランキングは、最高は2位でした。 皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°. でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )

異世界は流されるままに

椎井瑛弥
ファンタジー
 貴族の三男として生まれたレイは、成人を迎えた当日に意識を失い、目が覚めてみると剣と魔法のファンタジーの世界に生まれ変わっていたことに気づきます。ベタです。  日本で堅実な人生を送っていた彼は、無理をせずに一歩ずつ着実に歩みを進むつもりでしたが、なぜか思ってもみなかった方向に進むことばかり。ベタです。  しっかりと自分を持っているにも関わらず、なぜか思うようにならないレイの冒険譚、ここに開幕。  これを書いている人は縦書き派ですので、縦書きで読むことを推奨します。

転生したら王族だった

みみっく
ファンタジー
異世界に転生した若い男の子レイニーは、王族として生まれ変わり、強力なスキルや魔法を持つ。彼の最大の願望は、人間界で種族を問わずに平和に暮らすこと。前世では得られなかった魔法やスキル、さらに不思議な力が宿るアイテムに強い興味を抱き大喜びの日々を送っていた。 レイニーは異種族の友人たちと出会い、共に育つことで異種族との絆を深めていく。しかし……

処理中です...