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第四章
第十八話
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初夏のような陽射しが照りつける中、
おっさん一行を乗せた竜車は、のっしのっしと順調に進んでいた。
鉱山の村を出発してから、もう、しばらく経つ。
窓から見える景色も、徐々に様変わりしてきている。
かつては鬱蒼と茂っていた木々は、すっかり数を減らし──
広がっていた草原も、いまではところどころ赤茶けた岩肌や、乾いた土が目立ち始めていた。
鉱山のほうはというと──
さすがに縄梯子だけじゃ不便だろうと思い、
縦穴の天井に滑車を取り付けてやった。
ベアリングの効いた、地球産の高性能品。
……ちょっと文明チート感は否めないが、
あの年寄りばかりの村が、少しでも活気を取り戻してくれるなら、それでいい。
あの滑車なら、軽い力で木箱を井戸のつるべみたいに引き上げられる。
きっと採掘作業も、前よりはずっとマシになるだろう。
村中から五体投地で見送られ、
こっぱずかしさに背中を押されるように、俺たちはそそくさと村を後にした。
──いや、マジで。
虹色のあのカードを持ってなくて本当に良かった。
名乗りもせず、報酬も求めず。
黙って立ち去った俺たちは、
この先きっと、伝説の“謎のおっさん”として語り継がれることだろう。
鉱山で手に入れた、スライムと蟻の魔石については──
正直、まだ大して調べていない。
ひとまず言えるのは、
「調味料ではない」ということだけだ。
どういう使い道があるのか、
それはまた、いずれ分かるだろう。
竜車は進む。
かつて見た西部劇のような景色──
赤茶けた大地に、藁のようなボールがコロコロと転がってくる。
……そうそう、あれだ。
最初に 盗賊拳法家 がいた…あの辺りの風景だ。
気がつけば、俺たちはそんな荒れ地に足を踏み入れていた。
平坦な道が続くかと思えば、突然、目の前に切り立った岩山が現れる。
まるで大地が急に機嫌を損ねたかのように、道がいきなりゴツゴツと荒れ始める。
そして、道ばたにあるのは、見たこともねぇトゲトゲのサボテンみたいなやつばっか。
葉っぱも花もつけず、ただひたすら耐えるだけ──そんな顔してやがる。
トカゲはといえば──
緑地にいた頃よりも、むしろ元気になっているように見えた。
乾いた岩地を蹴っては、砂埃を巻き上げて駆け回る様は、どこか生き生きとしている。
「……お前、この辺の方が性に合ってんのか?」
まるで故郷に戻ったかのような動きに、
おっさんは目を細めて呟いた。
娘たちはといえば、あいも変わらず元気いっぱい。
この暑さもまるで気にしていないのか、
拵えてやったトロピカルジュースを片手に──
「おとーさーん!見て見て!サボテンの上に乗れたー!」
「トゥエラ、それは乗るものじゃないのですー!」
大はしゃぎで岩を登ったり、
サボテンを囲んでキャッキャとはしゃいでいた。
(……こっちは汗だくだってのによ)
おっさんは、うっすら滲む汗をぬぐいながら、苦笑いで娘たちを見守っていた。
やがて──
照りつける陽射しの中、赤茶けた風景の果てに、
崖下を見下ろすような位置へとたどり着いた。
「……おい、見ろよ」
おっさんが手をかざし、遠くを指さす。
娘たちもその方向へ目を向け──
思わず、わぁっと小さく歓声をあげた。
崖の下には、街があった。
荒野にぽつりと浮かぶように、
石造りの建物が肩を寄せ合い、
その隙間を縫うように道が走っている。
中心には広場のような空間。
建物の屋根には布を張った日除けや、
煙突から立ちのぼる薄い煙も見える。
「……結構デカいな、あれ」
おっさんはぼそりと呟き、
腰袋の重みを感じながら、その街をじっと見下ろしていた。
おっさん一行を乗せた竜車は、のっしのっしと順調に進んでいた。
鉱山の村を出発してから、もう、しばらく経つ。
窓から見える景色も、徐々に様変わりしてきている。
かつては鬱蒼と茂っていた木々は、すっかり数を減らし──
広がっていた草原も、いまではところどころ赤茶けた岩肌や、乾いた土が目立ち始めていた。
鉱山のほうはというと──
さすがに縄梯子だけじゃ不便だろうと思い、
縦穴の天井に滑車を取り付けてやった。
ベアリングの効いた、地球産の高性能品。
……ちょっと文明チート感は否めないが、
あの年寄りばかりの村が、少しでも活気を取り戻してくれるなら、それでいい。
あの滑車なら、軽い力で木箱を井戸のつるべみたいに引き上げられる。
きっと採掘作業も、前よりはずっとマシになるだろう。
村中から五体投地で見送られ、
こっぱずかしさに背中を押されるように、俺たちはそそくさと村を後にした。
──いや、マジで。
虹色のあのカードを持ってなくて本当に良かった。
名乗りもせず、報酬も求めず。
黙って立ち去った俺たちは、
この先きっと、伝説の“謎のおっさん”として語り継がれることだろう。
鉱山で手に入れた、スライムと蟻の魔石については──
正直、まだ大して調べていない。
ひとまず言えるのは、
「調味料ではない」ということだけだ。
どういう使い道があるのか、
それはまた、いずれ分かるだろう。
竜車は進む。
かつて見た西部劇のような景色──
赤茶けた大地に、藁のようなボールがコロコロと転がってくる。
……そうそう、あれだ。
最初に 盗賊拳法家 がいた…あの辺りの風景だ。
気がつけば、俺たちはそんな荒れ地に足を踏み入れていた。
平坦な道が続くかと思えば、突然、目の前に切り立った岩山が現れる。
まるで大地が急に機嫌を損ねたかのように、道がいきなりゴツゴツと荒れ始める。
そして、道ばたにあるのは、見たこともねぇトゲトゲのサボテンみたいなやつばっか。
葉っぱも花もつけず、ただひたすら耐えるだけ──そんな顔してやがる。
トカゲはといえば──
緑地にいた頃よりも、むしろ元気になっているように見えた。
乾いた岩地を蹴っては、砂埃を巻き上げて駆け回る様は、どこか生き生きとしている。
「……お前、この辺の方が性に合ってんのか?」
まるで故郷に戻ったかのような動きに、
おっさんは目を細めて呟いた。
娘たちはといえば、あいも変わらず元気いっぱい。
この暑さもまるで気にしていないのか、
拵えてやったトロピカルジュースを片手に──
「おとーさーん!見て見て!サボテンの上に乗れたー!」
「トゥエラ、それは乗るものじゃないのですー!」
大はしゃぎで岩を登ったり、
サボテンを囲んでキャッキャとはしゃいでいた。
(……こっちは汗だくだってのによ)
おっさんは、うっすら滲む汗をぬぐいながら、苦笑いで娘たちを見守っていた。
やがて──
照りつける陽射しの中、赤茶けた風景の果てに、
崖下を見下ろすような位置へとたどり着いた。
「……おい、見ろよ」
おっさんが手をかざし、遠くを指さす。
娘たちもその方向へ目を向け──
思わず、わぁっと小さく歓声をあげた。
崖の下には、街があった。
荒野にぽつりと浮かぶように、
石造りの建物が肩を寄せ合い、
その隙間を縫うように道が走っている。
中心には広場のような空間。
建物の屋根には布を張った日除けや、
煙突から立ちのぼる薄い煙も見える。
「……結構デカいな、あれ」
おっさんはぼそりと呟き、
腰袋の重みを感じながら、その街をじっと見下ろしていた。
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