DIYと異世界建築生活〜ギャル娘たちとパパの腰袋チート

みーくん

文字の大きさ
76 / 279
第四章

第十八話

しおりを挟む
初夏のような陽射しが照りつける中、
おっさん一行を乗せた竜車トカゲハイエースは、のっしのっしと順調に進んでいた。

鉱山の村を出発してから、もう、しばらく経つ。
窓から見える景色も、徐々に様変わりしてきている。

かつては鬱蒼と茂っていた木々は、すっかり数を減らし──
広がっていた草原も、いまではところどころ赤茶けた岩肌や、乾いた土が目立ち始めていた。

鉱山のほうはというと──
さすがに縄梯子だけじゃ不便だろうと思い、
縦穴の天井に滑車を取り付けてやった。

ベアリングの効いた、地球産の高性能品。
……ちょっと文明チート感は否めないが、
あの年寄りばかりの村が、少しでも活気を取り戻してくれるなら、それでいい。

あの滑車なら、軽い力で木箱を井戸のつるべみたいに引き上げられる。
きっと採掘作業も、前よりはずっとマシになるだろう。

村中から五体投地で見送られ、
こっぱずかしさに背中を押されるように、俺たちはそそくさと村を後にした。

──いや、マジで。
虹色のあのカードを持ってなくて本当に良かった。

名乗りもせず、報酬も求めず。
黙って立ち去った俺たちは、
この先きっと、伝説の“謎のおっさん”として語り継がれることだろう。

鉱山で手に入れた、スライムと蟻の魔石については──
正直、まだ大して調べていない。

ひとまず言えるのは、
「調味料ではない」ということだけだ。

どういう使い道があるのか、
それはまた、いずれ分かるだろう。

竜車は進む。

かつて見た西部劇のような景色──
赤茶けた大地に、藁のようなボールがコロコロと転がってくる。

……そうそう、あれだ。
最初に 盗賊拳法家ヤムチャ がいた…あの辺りの風景だ。

気がつけば、俺たちはそんな荒れ地に足を踏み入れていた。

平坦な道が続くかと思えば、突然、目の前に切り立った岩山が現れる。
まるで大地が急に機嫌を損ねたかのように、道がいきなりゴツゴツと荒れ始める。

そして、道ばたにあるのは、見たこともねぇトゲトゲのサボテンみたいなやつばっか。
葉っぱも花もつけず、ただひたすら耐えるだけ──そんな顔してやがる。

トカゲはといえば──
緑地にいた頃よりも、むしろ元気になっているように見えた。
乾いた岩地を蹴っては、砂埃を巻き上げて駆け回る様は、どこか生き生きとしている。

「……お前、この辺の方が性に合ってんのか?」

まるで故郷に戻ったかのような動きに、
おっさんは目を細めて呟いた。

娘たちはといえば、あいも変わらず元気いっぱい。
この暑さもまるで気にしていないのか、
拵えてやったトロピカルジュースを片手に──

「おとーさーん!見て見て!サボテンの上に乗れたー!」
「トゥエラ、それは乗るものじゃないのですー!」

大はしゃぎで岩を登ったり、
サボテンを囲んでキャッキャとはしゃいでいた。

(……こっちは汗だくだってのによ)

おっさんは、うっすら滲む汗をぬぐいながら、苦笑いで娘たちを見守っていた。

やがて──
照りつける陽射しの中、赤茶けた風景の果てに、
崖下を見下ろすような位置へとたどり着いた。

「……おい、見ろよ」

おっさんが手をかざし、遠くを指さす。

娘たちもその方向へ目を向け──
思わず、わぁっと小さく歓声をあげた。

崖の下には、街があった。
荒野にぽつりと浮かぶように、
石造りの建物が肩を寄せ合い、
その隙間を縫うように道が走っている。

中心には広場のような空間。
建物の屋根には布を張った日除けや、
煙突から立ちのぼる薄い煙も見える。

「……結構デカいな、あれ」

おっさんはぼそりと呟き、
腰袋の重みを感じながら、その街をじっと見下ろしていた。

しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
 40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。  しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。  おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。  漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。  この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。 この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。 ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。 少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。 更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。 そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。 少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。 どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。 少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。 冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。 すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く… 果たして、その可能性とは⁉ HOTランキングは、最高は2位でした。 皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°. でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )

異世界は流されるままに

椎井瑛弥
ファンタジー
 貴族の三男として生まれたレイは、成人を迎えた当日に意識を失い、目が覚めてみると剣と魔法のファンタジーの世界に生まれ変わっていたことに気づきます。ベタです。  日本で堅実な人生を送っていた彼は、無理をせずに一歩ずつ着実に歩みを進むつもりでしたが、なぜか思ってもみなかった方向に進むことばかり。ベタです。  しっかりと自分を持っているにも関わらず、なぜか思うようにならないレイの冒険譚、ここに開幕。  これを書いている人は縦書き派ですので、縦書きで読むことを推奨します。

転生したら王族だった

みみっく
ファンタジー
異世界に転生した若い男の子レイニーは、王族として生まれ変わり、強力なスキルや魔法を持つ。彼の最大の願望は、人間界で種族を問わずに平和に暮らすこと。前世では得られなかった魔法やスキル、さらに不思議な力が宿るアイテムに強い興味を抱き大喜びの日々を送っていた。 レイニーは異種族の友人たちと出会い、共に育つことで異種族との絆を深めていく。しかし……

処理中です...